Yahoo!ニュース

CMの宮沢りえの娘から『アンチヒーロー』で鍵を握る死刑囚の娘役「壮絶な人生の苦しみに近づけるように」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『アンチヒーロー』に出演中の近藤華(TBS提供)

春クールのドラマでひときわ注目を集める『アンチヒーロー』。長谷川博己が演じる弁護士の明墨たちが、一家殺人事件の死刑囚の無実の証明に乗り出し、クライマックスに入っていく。その死刑囚の娘の紗耶を演じているのが近藤華。「三井のリハウス」CMでの宮沢りえの娘役などで知られた、聡明さを感じる16歳。その素顔と物語の鍵を握る役への取り組みを聞いた。

学校の成績は上の下か中の上です

――『アンチヒーロー』で明墨先生が紗耶について「とてもやさしくて賢い子です」と言う台詞がありました。近藤さん自身も過去のインタビューや動画を観ると、すごく賢い印象がありますが、学校の成績も優秀なんですか?

近藤 上の下か、中の上、みたいな感じかもしれません。この前のテストでは、生物が一番点数が良かったです。

――ちょうど『アンチヒーロー』の撮影の最中のテストだったわけですか?

近藤 そうですね。昼休みとかちょっとした時間に、ちょこちょこ勉強していました。

――クラスでは活発なタイプですか?

近藤 初めての人と話すのは緊張してしまって、あまり自分から声を掛けたりはしないです。

――部活や委員会は?

近藤 小学校と中学校では放送委員で、お昼に好きな曲を掛けたりしていました。今は書道部に入っています。展示されて賞をもらったこともありました。

トップコート提供
トップコート提供

いろいろ興味があってピアノを練習中です

――バレエも小さい頃からやっていたそうですね。

近藤 5歳の頃から中学2年まで習っていました。最初は親に「やってみたら?」と言われて始めたんですけど、楽しかったので。そのせいか、今でも『くるみ割り人形』とかクラシック音楽を聴くと、踊りたくなります(笑)。

――菅田将暉さんの『ギターウサギ』のMVでは、出演と共にアニメーション制作も担当したり、クリエイティブな趣味が多いようですね。

近藤 絵を描いたり、小説を書いたりもします。ちょっと飽き性なんですけど(笑)、いろいろなことに興味があって。最近はピアノを弾けるようになりたくて、練習中です。

――今までやったことはなくて?

近藤 小さい頃に半年くらい習って、あまり合わなくてやめちゃいました。楽器が苦手で、ギターもやってみたんですけど、音を出すのが難しくて。ピアノは鍵盤を押したら音は鳴るので(笑)、他の楽器より弾いた達成感はあるかなと思ってます。

小学生の頃から会話劇のドラマが好きでした

――女優を目指したきっかけは『ごちそうさん』の杏さんだったとか。あの朝ドラが放送されていたのは、近藤さんが6歳の頃ですよね。どんなことを感じたんですか?

近藤 小さかったので記憶はあいまいですけど、食べることが好きで料理が出てくるところから興味を持って(笑)、杏さんがすごくキラキラして見えたんです。演技に憧れを抱いて、その頃からずっと、将来の夢は女優さんと書き続けていました。

――その後、好きになったドラマや映画はありますか?

近藤 いっぱいあります。『カルテット』とか『大豆田とわ子と三人の元夫』とか……。

――小学生の頃から、胸キュンの恋愛ものとかより、大人のドラマが好きだったんですか?

近藤 会話劇というんですか? そういうのが好きです。映画だと『十二人の死にたい子どもたち』とか。コメディでも、人が話しているシーンが多い映画が好きかもしれません。

トップコート提供
トップコート提供

CMが流れて「私がいるな」と

――杏さんと同じ事務所に入ったのは、自分で応募したんですか?

近藤 そうです。中1のとき、随時募集していたのを見て、受けてみようかなと。

――面接があって?

近藤 はい。「踊れます」「歌えます」とか言いましたけど、終わったあとにあまり記憶がなくて。たぶんすごく緊張していて「失敗したかも」と思って、めっちゃ泣きました。

――でも合格して、いろいろ仕事をされてきましたが、宮沢りえさんの娘を演じた「三井のリハウス」のCMは反響が大きかったのでは?

近藤 クラスであまり話してなかった人にも「観たよ」と言われて、会話が広がりました。先生も「昔、宮沢りえさんのファンだった」と言って応援してくれました。

――CMは自分でも不意に観たりしますよね?

近藤 撮影していたときは実感がなかったんですけど、実際に流れると「あっ、私がいるな」と思います(笑)。でも、ちょっと反省してしまいます。「ここはもっと明るく言えば良かった」とか考えちゃいますね。

オーディションでは楽しいシーンを

――『アンチヒーロー』の紗耶役はオーディションで決まったんですか?

近藤 そうです。その場で台詞を渡されて、ちょっと時間をもらって頭を巡らせて考えて、演じる形でした。ワンちゃんと遊ぶ楽しいシーンで、そのときは重い過去を抱えているという話はなかったです。

――手応えはありました?

近藤 私1人で受けたので、自分が良かったのか悪かったのかも、わかりませんでした。

――先ほど好きだったドラマをうかがいましたが、日曜劇場も何か観てました?

近藤 『VIVANT』は面白かったです。考察しながら観てました(笑)。

――『アンチヒーロー』でも紗耶のことも含め、ネットで考察が盛り上がっていました。近藤さんは最初から、紗耶の背景は全部聞いていたんですよね?

近藤 いちおう知っていました。まだいろいろあります(笑)。

台本に書かれてないことも想像しました

――死刑囚の娘で施設で育って……という紗耶の心情は、いろいろ想像しました?

近藤 きっと辛いことがいっぱいあって、台本に書かれている以外にも、もしかしたら学校でいじめられていたかもしれない。養護施設にいるということは、おじいちゃん、おばあちゃんにも冷たくされていたのかなとか、想像していると暗くなってしまいますけど、そういうことも考えました。

――なかなか実感しにくいところではあったでしょうけど。

近藤 紗耶ちゃんは壮絶な人生を送っているので、私には想像できない苦しみを抱えているだろうと思いました。そこに近づけるように、実際の死刑囚の娘さん、息子さんのインタビューやニュース記事も読んで、どういう心情なのか調べたりもしました。

――8話では、緒方直人さんが演じるお父さんと、拘置所で12年ぶりに再会するシーンがありました。

近藤 ああいうシリアスなシーンはやったことがなかったので、すごく緊張しました。長谷川さんや監督さんが「ストレッチをしたら緊張がほぐれる」とか「深呼吸をして」とか、いろいろ教えてくださったので、ありがたかったです。

TBS提供
TBS提供

心情を深掘りして現場の自分に任せる感じで

――「ずっとずっと寂しかった」という台詞でも、12年分の想いというのは簡単に表せるものではないですよね。

近藤 心情はいろいろ考えて準備してきました。だから、緊張さえしなければ、たぶんできる気はしていました。自信というより、あとはその場の自分に任せる感じだったので。撮影の直前は、緊張をほぐすことだけを頑張りました。

――家では台詞を何回も言って練習するというより、紗耶の心情を考えることに費やした感じですか?

近藤 設定をどんどん深掘りしました。周りの人に何て言われていたのか。さっきお話ししたように、いじめもあったのかもとか、紗耶ちゃんの過去をたくさん想像して。長谷川さんのこの台詞が来たら、何を思い出すだろう、とも考えました。泣くシーンだったので感情を湧かして、本番は自然にできるように準備しました。

――台本を拝見すると、ト書きには「子どもに戻ったように声を上げて泣く」とありました。

近藤 幼さを出すのは自分的にちょっと難しかったんですけど、できていたと思います。

泣こうとしなくても泣いていました

――単純に涙が出ないということもなく?

近藤 紗耶ちゃんとして泣くのはそのシーンが初めてで、泣けるかすごく心配で、最初は涙を流すことだけを考えてしまっていたんです。そしたら、監督が「相手の言葉に集中して」と言ってくださいました。本当に皆さんの演技が素晴らしいので、それに感化されて、泣こうとしてなくても気づいたら泣いていました。

――本番前にドライとかでも毎回泣いていたり?

近藤 ドライでは泣かないように言われて、堪えていました。本番も1回ですごく疲れてしまうので、あまり何度もやらずに撮りました。

――撮り終わったら、エネルギーを使い果たしてぐったり、とか?

近藤 でも、近藤華としては、その演技をするのがすごく楽しかったです。役の感情になれていたというか。

――カットが掛かっても、その感情を引きずったりもしました?

近藤 そういうことはなかったです。無事に終わって良かったと、安心感が強かったです。

TBS提供
TBS提供

普段は真顔が多いので感情を出せるように

――普段は泣くことはありますか?

近藤 映画を観ると、たくさん泣いちゃいます。最近だと『ゴジラ-1.0』。主人公が死ぬ覚悟でゴジラと戦いに行ったとき、子どもが近所のおばさんに「パパはどこ?」と言うところで泣いていました。あとは、友だちが泣いていると、もらい泣きをします(笑)。

――先ほど「幼さを出すのは難しい」とのお話でしたが、小さい頃から普段は泣かない子だったとか?

近藤 確かに、あまり泣いていなかったと思います。

――近藤さんは冷静そうだから、感情の起伏も少ないほうですか?

近藤 心の中ではいろいろ起伏はありますけど、感情を表情に出すことは普段はあまりないかもしれません。真顔が多い気がします。

――そこを演技では解放していて?

近藤 そうですね。表情が固まっていることが多いので、本番前に顔をすごく動かしてみたり、表情筋を使うことは意識しています。

元気なワンちゃんが撫でさせてくれて

――紗耶は保護犬の世話をしていて、マメというゴールデンレトリーバーとのシーンもあります。犬に馴染みはあったんですか?

近藤 家で飼ってはいませんけど、おばあちゃんや友だちの家にワンちゃんがいて、触れ合ってはいるので慣れていました。

――現場でマメになつかれてもいて?

近藤 慣れるために近くに行くと、撫でさせてくれます。でも、めっちゃ元気なワンちゃんで、本当の飼い主さんのほうに目が行っちゃったりするんですね。私がお菓子を隠し持って「こっちだよ」とか、いろいろしていました(笑)。

――猫もお好きだそうですね。

近藤 好きです。フォルムがかわいくて、目がクリクリしていて。

TBS提供
TBS提供

養護施設のシーンでは同世代と話せて

――他に『アンチヒーロー』の撮影で印象的なことはありますか?

近藤 養護施設のシーンでは、子ども役のエキストラの方もたくさんいらっしゃいました。現場で同世代の方と話せることはなかなかないので、嬉しかったです。

――そういう施設のシーンや明墨先生と犬の散歩をするシーンでは、紗耶を等身大な感じで演じていました?

近藤 でも、私は紗耶ちゃんは大人っぽい子なのかなと思っていたら、幼さが大事だったので。普段の私より明るくしています。

――近藤さん自身、たぶん同級生より大人っぽいですよね?

近藤 そうですかね。みんなより、ちょっと静かなほうです。

深く考えてこそ演技に活きると実感しました

――今までの作品ではなかった経験もありましたか?

近藤 人って結構なことが起こらないと泣かないので、泣く演技をするには深く深く考えることが大事だと思いました。それがあってこそ演技に活きると、すごく実感したので、今後も続けていきたいです。

――これだけのものを背負った役だと、頭が痛くなるほど考えたのでは?

近藤 私は撮影の間隔が結構空いていたので、考える時間はいっぱいありました。暇があれば、紗耶ちゃんのことを想像していました。

――放送は日曜9時にリアルタイムで観ているんですか?

近藤 はい。毎週、家族と観ています。CMと同じように「もっとこうすれば良かった」とか、反省が頭をよぎってしまいますね。

――ご家族は何かおっしゃっていますか?

近藤 私の演技については、特に何も。普通に「(検事正役の)野村萬斎さんはすごい迫力だね」とか楽しんでいます(笑)。

トップコート提供
トップコート提供

友だちとラーメンを食べに行きます

――一方で高校2年生として、青春的なこともしていますか?

近藤 友だちと遊んだりしているときは、高校生だなと感じます。

――原宿に行ったり?

近藤 原宿には行きません(笑)。ラーメンを食べに行ったり、カラオケや食べ放題に行ったり、ですね。おしゃべりはいっぱいします。

――でも、JKっぽくアサイーボウルを食べながらとかでなく、ラーメン屋さんで(笑)。

近藤 いい感じの喫茶店に行ったりもします。レトロな感じのところが好きです。

――ラーメンはどんなお店で食べるんですか?

近藤 普通に醤油ラーメンが好きです(笑)。あと、辛いラーメンも食べに行きます。辛ラーメンも大好きです。

――食べ放題では量も結構いくんですか?

近藤 私はあまり食べません。ダイエットはしてませんけど、そんなに量は食べられないので。でも、食べ放題だと値段は気にせず、頼めるものはどんどん食べられて、楽しいですね。

トップコート提供
トップコート提供

ジャケ買いでいろいろな本を読んでいて

――家にいるときは何をしていることが多いですか?

近藤 本をよく読んでいます。この前は『猫を抱いて象と泳ぐ』というチェスの小説を読みました。あとは『明け方の若者たち』、『カラフル』、『雲を紡ぐ』とか。

――いろいろ読んでますね。好きな傾向はありますか?

近藤 基本、ジャケ買いです。たとえば『明け方の若者たち』は、クジラの遊具の表紙で良さそうだなと思って。だから、ジャンルとかは気にしません。今のところ、ジャケ買いでみんな正解だったと思います。

――ちょっと先ですが、夏休みに楽しみなことはありますか?

近藤 外国に留学していた友だちが帰ってくるので、久々に遊べるのが楽しみです。

――自分も留学してみたいとか?

近藤 それはあまりないです。英語が苦手なので、ちょっと怖くて。まだそこまで辿り着けない感じです。

常にものごとを楽しめるようになれたら

――これから身に付けていきたいことはありますか?

近藤 時間を効率的に使える人になりたいです。待ち時間にただ携帯をいじっているのでなく、本を読んだりアニメや映画を観たり、有効活用したくて。無駄な時間が必要なときもありますけど、無駄だったと後悔はしたくないんです。

――本当に考え方が大人っぽいですね。女優としての将来像はイメージしていますか?

近藤 常にものごとを楽しめるようになりたいです。悩むことがあっても、すべてが楽しかったと言えるように。楽しんだ者勝ち、というのはあるじゃないですか(笑)。ネガティブよりポジティブなほうが、演技の力も湧くと思うので、そこを大切にできたら。

――最初に出たように、演技以外にやりたいこともあるんですよね?

近藤 絵を活かした仕事もしたいです。長編のアニメーションを描いたり、ピアノで1曲弾いたり。叶えられるかどうかは別にして、やりたいことはいっぱいあります。

トップコート提供
トップコート提供

Profile

近藤華(こんどう・はな)

2007年8月6日生まれ、東京都出身。2021年にCMでデビュー。主な出演作はドラマ『ばらかもん』、『PICU~小児集中治療室~スピンオフ』、『生きとし生けるもの』、舞台『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』、三井のリハウス、ナブテスコCMなど。ドラマ『アンチヒーロー』に出演中。夏公開の映画『サユリ』に出演。

日曜劇場『アンチヒーロー』

TBS系・日曜21:00~

公式HP

TBS提供
TBS提供

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事