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熱性けいれんのときに、解熱薬をつかってもいいですか?

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:イメージマート)

新型コロナの流行も影響し、発熱して受診される方が増えています。そして子どもの感染も広がり、『熱性けいれん』で受診される方も増えてきました。

熱性けいれんは、生後6ヶ月から5歳までの小さいお子さんに起こりやすい、38度以上の発熱に伴って発作が起こってくるという病気です。

日本人には7から11%、すなわち10人にひとり程度はあると報告されています[1]。

受診された方に、熱性けいれんとはこのような病気ですよと説明する際に、かかりつけの先生から『解熱薬は熱性けいれんがある子どもに使ってはいけません』と指導されている方が少なからずいらっしゃいます。

そこで今回は、『熱性けいれんのときの解熱薬』に関して、簡単にお話させていただきたいと思います。

昔、熱性けいれんのある、もしくは過去にあった方に対する解熱薬を使う事に対し意見の相違があった

写真AC
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実はこのテーマは、昔からよく議論になっていました。

『解熱薬で熱をさげると、薬の効果がきれたときに発熱してけいれんを起こしやすいから使わないほうがいい』

『熱があるときにけいれんをするから解熱薬をつかったほうがいい』

などです。

そこで複数の研究が行われており、2015年に改定された熱性けいれん診療ガイドラインでは、このテーマに対しする公式の考え方が提示されています[1]。

そして、熱性けいれんを起こした、もしくは過去に熱性けいれんを起こしたしたことがある子どもに対し、解熱薬を使用してもけいれんの予防には効果がなく、一方で熱性けいれんを起こしやすくすることもないだろうとまとめられています。

すなわち、解熱薬を使ってけいれんを起こしやすくすることはなく、熱性けいれんを持っていようといまいと、解熱薬を同じように使っていただいていいですよということになります。

発熱のために寝付けないとか水分が取りにくいとか、そういった場合には、解熱薬を使ってよいということです。

日本で行われた研究で、『解熱薬を使用しておいたほうが再度けいれんを起こす可能性が低くなる』という結果になっているが…

イラストAC
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最近日本で行われた大規模な研究で、熱性けいれんを起こして受診された生後6ヶ月から5歳の子ども423人に対する研究があります。

解熱薬として子どもによく使われるアセトアミノフェンを、使う人と使わない人にランダムにわかれていただき、熱性けいれんが再度起こる率に差があるかどうかをみたものです。

そうすると大方の予想に反し、熱性けいれんの再燃に関し、解熱薬を使った方のほうが少なかったという研究結果になっています[2]。

もしかすると解熱薬を使ったらけいれんが減る可能性があるということです。

ただし、この論文の中では、熱性けいれんは良性の病気であるため、毎日解熱薬を使うのは慎重になったほうがいいだろうと述べられています。毎日6時間おきに使ったほうが良いという意味ではないということです。

やはり本人の様子を見ながら解熱薬を使うのが良いということですね。少なくとも、解熱薬を使った後に、けいれんが再度あったとしても、解熱薬を使ったから起こったわけではないと考えてよいでしょう。

まだコロナの患者さんは少なくなく、小児の感染も広がっています。この記事が、すくなからずいらっしゃる熱性けいれんのお子さんを持つ保護者さんの参考になればと願っています。

[1]熱性けいれん診療ガイドライン2015

[2]Murata S, et al. Acetaminophen and Febrile Seizure Recurrences During the Same Fever Episode. Pediatrics 2018; 142(5).

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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