東日本から東北地方を襲った114年前の「壬寅(みずのえとら)年暴風雨」
平年並みの発生数と2倍の上陸数
今年は、台風第1号の発生が記録的に遅かったものの、8月、9月で台風の発生が相次ぎ、現時点では平年並みの発生数となっています(表)。また、上陸数は6個と平年の2倍上陸しています。
非常に強い台風17号が北西進し、沖縄県の先島諸島を暴風域に巻き込んで通過して台湾に上陸、中国大陸で熱帯低気圧に変わる見込みです。
しかし、日本のはるか南海上にある熱帯低気圧が、発達して台風18号になりました(図1)。今のところ、台風17号の後を追うように西に進みながら発達中です。
まだまだ台風シーズンが続きますので、台風情報に引き続き注意が必要です。
今から114年前には2つの台風により、相模湾に大きな高潮被害と関東~東北地方に「壬寅(みずのえとら:じんいん)年暴風雨」と呼ばれた記録的な風水害が発生しています。
壬寅年暴風雨
明治35年9月28日8時頃、台風の中心が 房総半島南端付近を通過し、北北西に進んで神奈川県に上陸、9時には東京を通過しています(図2)。東京では8時55分から約10分間、風雨が止んでいますので、台風の目に入った可能性があります。最低気圧は、千葉県館山で955.8ヘクトパスカル、最大風速(当時は20分間の平均風速)は千葉県銚子で毎秒44.8メートル、茨城県筑波山で72.1メートルを観測しています。
この台風は、暴風域などの規模が小さい豆台風でしたが、その割には中心気圧は低く、特に猛烈な風による風害と、相模湾を中心とした高潮、栃木県足尾なとでの水害が著しいという特徴があります。相模湾では11時頃が満潮でしたが、このとき、海岸より大波が約2時間にわたり堤防を越えて市街地に侵入しました。
また、別の台風が、9月28日15時頃、和歌山県潮岬の東方に上陸し、神奈川県に上陸した台風の後を追うように北上しています。
(注)「海嘯(かいしょう)」は、現在の津波や高潮をさしますが、ここでは「高潮」の意味です。
気象庁が編纂した「気象百年史(1975)」によれば、このときの被害は、「東海・関東・東北に台風、被害じん大、宮城・山形は300年来の暴風雨…」となっています。