独占インタビュー!国内無敵の井上岳志がアメリカで世界初挑戦【前編】
今週末の26日(日本時間27日)にアメリカのヒューストンで、WBO世界ウェルター級タイトルマッチが行われる。チャンピオンのハイメ・ムンギアに同級3位の井上岳志が挑戦する。
井上は、日本、東洋、WBOアジアパシフィックの3冠王者で、国内、東洋圏では敵なし。しかし、今回の相手のムンギアは無敗で、KO率も高く世界王者の中でも勢いのある選手だ。
私の大学の後輩でもある井上に、試合前にインタビューを行った(2018年12月21日)
相手にぶつかっていく
Q:どうですか。今のところ調整は。試合まであと1ヶ月くらいだね。
井上:調整はいい感じです。あと37日ですね。来週の火曜日に12ラウンド公開スパーリング。公開で行うのは前代未聞かもしれませんが、うちのジムの選手が揃い踏みで、3人から4人でやっていくと思います。今回、取材陣を集めての公開スパーは初ですね。
Q:なるほど、来週の火曜日というとクリスマススパーリングな訳だ。井上は身長って幾つ?
井上:173cmですね。ムンギアとは10センチ差。前回、4月26日に戦った野中さんも183センチで同じなんです。
ムンギアは力の連動が上手い選手だと思います。
力をうまくバネで返す感じで。本当に素晴らしい選手。けど、その力の連動を止めて戦えばいけるんじゃないかと思っています。
相手が連動を使い出したら、ぶつかっていって、相手の動きを止めて、そのリズムを崩していけば、相手がびっくりすると思います。
あれ、なんかいつもどおり動けないな、ってなるんじゃないかと。
Q:なるほど、結構力任せに振ってくるから、ああいうパンチを振ってくるタイプって後半に落ちてきたりとか、そういうところにチャンスは出てくるかな。
井上を変えたフィジカルトレーニング
Q:スタミナ強化で練習してるポイントとかある?
井上:フィジカルトレーニングで鍛えてます。しっかりとした基礎体力は、体の振れとか体のスタミナと、パワーマックス(自転車を漕ぐトレーニング)とか、スレッド(重りを押すことにより脚筋力と体幹を強化するトレーニング)をやってます。
Q:そのフィジカルトレーニングを取り入れ始めたのはいつ頃から?
井上:去年の2月ぐらい。日本の王者決定戦の2ヵ月半ぐらいですかね。
Q:効果は感じる?
井上:もちろん。特に自分は押していくタイプなので。本当に合ってます。あまりアウトボクサーだったり、押す事に重点を置いてないような選手は、逆にマイナスになる可能性もあると思いますが。
Q:俺もそうだったけど、プロボクシングって色々な事ができなきゃ駄目だからね。俺もアウトボクサー寄りだったけど、下半身をしっかり鍛えることで、押し負けず、前で戦えるようになった。だから、フィジカルトレーニングの効果はすごく大きいなって感じたね。下半身を鍛えると、減量も楽にならない?
井上:その通りですね。今は75キロなので、リミットまであと、5キロちょっとですね。もともとは78キロが普通だったんですけど、3キロちょっと節制して、ずっと絞ってやってます。
Q:なるほど。いつでも試合ができるような状態だね。
井上:状態はつくってます。村田諒太選手とか、亀海喜寛選手が、5キロくらいの体重をずっと維持してるみたいで。トレーナーからも、体重の幅ができると体重を落とすことが無駄だと言われ、自分もそうしています。
ムンギアと何回も戦いたい
Q:尊敬するボクサーとかいる?
井上:海外で活躍されてる選手はみんな尊敬してます。強いて挙げるなら、高校生の時からずっとロベルト・デュランが好きですね。
現代の選手ですと、ミゲール・コットとか、サウル・アルバレスも好きです。
コンビネーションを見たりして、ここでこう打つのか、体のずらし方はこうなのかとか参考にしています。
Q:なるほどね。最近の練習で一番重視するポイントとかある?
井上:重視するのは「軸」ですね。自分は、軸のない選手だったので。
最近は、少しずつ腰を回すようになりました。そうすると、ストレートが当たるようになってきて。
この前の試合とかまだ全然できなかったんですが、最近になって、腰の回転がしっかりできて安定感が出てきました。
Q:プロデビューしてから4年数ヶ月で世界戦、しかもこの階級でいけるってすごいね。スーパーウェルター級は、パッキャオ、メイウェザー、デラホーヤとかレジェンドばっかりだからね。
井上:いや、運がいいです、ほんとに。
Q:WOWOWとか見てた?
井上:はい。ちょくちょく。
Q:だって、WOWOWのMSG(マジソンスクエアガーデン)とかと、同じような舞台に立つのはどう?不安とかある?
井上:もちろん不安はありますが、今までの試合よりワクワクが大きいです。
ムンギアとは、何回も戦いたいなって思っています。一回しかないのが、もったいないと思うくらいですね。
Q:確かに。楽しみだよね!
井上:ありがとうございます!自分も楽しみですね。
インタビューしたのは、試合1ヶ月前だったが、試合に集中していて、いい練習ができているようだった。
世界戦のチャンスはなかなか訪れない。相手の対策も大事ではあるが、一番は自分のベストを尽くすことだ。だからこそ、悔いのないように全力で準備して、持ち味を活かしたボクシングを展開して欲しい。後半では、井上が変わるきっかけとなった試合、モチベーションのコントロール方法、今まで一番嬉しかった経験など、について語ってもらった。