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IBFライト級タイトル空位決定戦

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 ここ数年、何度も話題となっていたワシル・ロマチェンコ(35)とジョージ・カンボソス・ジュニア(30)との戦いが、ついに決まった。両者は、IBFライト級タイトル空位決定戦として5月12日にオーストラリア、パースで対戦する。

 カンボソスがテオフィモ・ロペス・ジュニアを下して統一王者となった後の2022年、ロマチェンコ戦が実現する筈だった。しかし、ロマチェンコがタイトル戦のためにオーストラリアに渡航する準備をしていた矢先、ロシアがウクライナへの侵攻を開始。元チャンピオンは祖国を守ろうと、故郷に留まった。

写真:ロイター/アフロ

 代わりにカンボソスは4冠統一ライト級タイトルマッチとして、WBCチャンピオンのデヴィン・ヘイニー戦を迎える。カンボソスの母国、オーストラリアでの2連戦で、共に判定負けを喫した。

 しかし、今回は並々ならぬ自信を覗かせる。先日、カンボソスは次のように話した。

 「私には、ロシア代表オリンピックチームのコーチである、アントンという非常に優れたトレーナーがついている。まさしく、殺人者だ。旧ソ連の殺人者たちが私を鍛え、適切な仕事を与えにきている。

 ヨーロッパ、ロシア、ソ連、そしてウクライナと、どんなスタイルの相手に対しても完璧に適応しなければ。パンにバターが必要なように、私には優秀なトレーナーの存在がある。彼はロマチェンコを熟知し、そのうえでスパーリングパートナーを選んでくれた」

 言葉通り、カンボソスはロシア式のキャンプを張っているようである。

写真:ロイター/アフロ

 カンボソスは記者会見で言った。

 「私は常にベストファイターを目指している。その気持ちを失ったことは無い。ロマチェンコのことは神の様な存在として、ずっと尊敬してきた。ガキの頃からだ。彼は伝説のファイターであり、自分にとって新たなメガ・ファイトだ。関係者に感謝したい。

 今回のファイトはカネの問題じゃない。ロマチェンコもそうだろう。彼も私も、既に財は成している。2人のファイターがレガシーを築くんだ」

写真:ロイター/アフロ

 同記者会見にバーチャルで出席したロマチェンコも語った。

 「この試合が決まってとても幸せだ。まだ、訪れたことの無いオーストラリアで、チャンピオンに返り咲くチャンスを得たんだ。ベルトを獲得するよ。今の自分の目標は、世界王座を奪還すること。そしてゆくゆくは、再び統一チャンピオンになることだ。

 私もジョージをリスペクトしている。彼はけっして折れないハートを持っている。2人の異なったタイプのファイターがぶつかることによって、いい試合になるだろう」

 さて、どんなファイトとなるか。ライト級といえば、現WBAライト級レギュラー王者、ジャーボンテイ・デービスが図抜けている。勝者はデービス戦に辿り着くのか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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