アップル、生成AIに年10億ドル アプリやOSに導入へ
米アップルが基本ソフト(OS)やアプリへの生成AI(人工知能)導入に向けて、年間10億ドル(約1500億円)を費やす計画だと、米ブルームバーグが報じている。
台頭するライバルに追いつく狙い
この分野で先行する、米グーグルや米マイクロソフト、米アマゾン・ドット・コムに追いつく狙いだという。アップルは自社製品にAIを導入しているものの、アプリやOSの機能改善に用いるにとどめており、米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」やグーグルの「Bard(バード)」のようなサービスは提供していない。
これに先立つ2023年7月、ブルームバーグはアップルが自社の大規模言語モデル(LLM)開発に向け、「Ajax(エイジャックス)」と呼ぶ独自フレームワークを構築したと報じていた。同社はこの基盤を用い、社内で「Apple GPT」と呼ぶ対話型AIサービスを開発した。だが、これらはまだ製品として提供されていない。
3人の上級副社長、生成AIを先導
ブルームバーグによると、今回の取り組みの指揮を執るのは、(1)機械学習およびAI戦略担当上級副社長のジョン・ジャナンドレア氏、(2)ソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長のクレイグ・フェデリギ氏、(3)サービス担当上級副社長のエディー・キュー氏、の3人だ。
ジャナンドレア氏はAIシステムの基盤技術開発を統括しており、同氏のチームは開発技術を実装して、音声アシスタント「Siri(シリ)」を刷新する計画だ。フェデリギ氏のソフトウエア技術チームは、iPhone向けOS「iOS」の次期版にAIを導入する。これにより、Siriや対話アプリ「Messages」などで質問にAIが回答する機能が加わるほか、文章の自動修正機能も提供される。同チームは「Xcode」などの開発ツールに生成AIを統合することも検討している。
音楽・文書作成・プレゼンに生成AI
一方、キュー氏のチームは、可能な限り多くのアプリにAIを導入しようとしている。例えば、音楽アプリ「Apple Music」では、プレイリストの自動生成機能が追加されるようだ。これはスウェーデンのスポティファイ・テクノロジーがオープンAIとの提携で提供しているものに似ているという。
同チームはプロダクティビティーアプリにもAIを導入する計画だ。文書作成アプリ「Pages」やプレゼンテーションアプリ「Keynote」での文章・スライドの自動作成に、生成AIをどのように生かせるかを検討している。こちらもマイクロソフトがすでに「Word」や「PowerPoint」で提供している機能に似ているとブルームバーグは報じている。
現在アップルの社内で議論されているのは生成AIの展開方法だ。これらAI機能をデバイス内で処理するのか、それともクラウド経由で提供するのか、あるいは両方のアプローチを取るのか。すべてをデバイス内で行う場合、処理速度が速くなり、プライバシー保護が確実になる。クラウド経由の場合、より高度なサービスを提供できるというメリットがある。
- (本コラム記事は「JBpress」2023年10月26日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)