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過去最大の難敵、フランス。進化したヤングなでしこの真価が問われる一戦に。(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
1対1の強化にも取り組んできた(C)松原渓

U-20女子ワールドカップは、今日、準決勝を迎える。U-20日本女子代表の相手はU-20フランス女子代表。キックオフは19:30(日本時間18:30※)。

この試合に勝てば、日本は、U-20女子ワールドカップ史上初の決勝進出となる。

過去最大の難敵、フランス。進化したヤングなでしこの真価が問われる一戦に。(1)

【注目のマッチアップ】

フランスの攻撃は、ほとんどのチャンスが両サイドから生まれている。特に注意したいのが、前線の3人だ。左サイドのClara MATEO (背番号10)は、スピードがあり、ドリブルしながら縦に大きくボールを蹴り出し、相手のサイドにスピード勝負を挑む。初速が早く、後方からのフィードに呼応して、相手ディフェンスラインの裏に抜け出すタイミングも良い。

この選手に対応するのは、日本の右サイドだ。右サイドハーフとサイドバックは試合ごとにメンバーが変わっているが、ここ2試合は、サイドバックで宮川麻都が先発している。クレバーで粘り強い守備で、スピードに乗らせないようにしたい。

また、右サイドに張るDelphine CASCARINO (背番号7)は、最も注意すべきプレイヤーだ。フランス代表で長く司令塔として活躍するLouisa NECIB(結婚後はLouisa CADAMURO)のような高いセンスと身体能力を兼ね備え、キャプテンも務めている。ドイツ戦では、左サイドのコーナーキックから、ドリブルで一人を抜き、逆サイドネットに強烈なスーパーゴールを突き刺した。守備も献身的で粘り強い。

高さのある選手も多いため、セットプレーは与えないことが一番だが、シュートレンジが広い7番のミドルシュートには特に気をつけたい。

この選手とマッチアップするのは、日本の左サイドだ。ここまで全ての試合に先発してきたサイドバックの北川ひかるは言う。

「相手のキーマンが自分の前にいるので、そこをまずは潰すことです。攻撃では、無駄走りになってもいいので積極的に攻撃に参加したいと思います。」(北川)

左サイドのコンビネーションは、日本の武器でもある。長谷川と北川のコンビネーションに、ボランチやFWが絡んで生まれる攻守の連携は、フランスを苦しめるだろう。この左サイドのマッチアップは楽しみだ。

3トップの中央に立つMaelle GARBINO(背番号15)は、ポジションを流動的に変えながら、左右の攻撃に絡む。フランスは左右のサイド攻撃がうまくいかない場合に、センターに陣取るこの選手にロングボールを入れてくる可能性もあるが、ここは日本が誇る、センターバックの乗松瑠華と市瀬菜々のコンビネーションの見せどころだ。

フランスはシュートの本数に対して、決定力はそれほど高くはない。これまでの4試合で62本のシュートを放っているが、そのうち枠内シュートは20本(32.2%)で、得点数は5(決定率は8.0%)。

ちなみに、日本は4試合で75本のシュートを打ち、枠内シュートは31本(41.3%)で、得点数は14(決定率は18.6%)である。相手に臆することなく、自信を持ってフランスとの準決勝に臨んでほしい。

【問われるチームの進化】

スピードと上手さを兼ね備えたフランスに対し、日本は技術と組織力と知性で対抗できる。

守備では、ディフェンスラインの裏のスペースに対するケアも含め、GKとDF4人の的確なラインコントロールがポイントとなる。また、準々決勝のブラジル戦のように、チーム全体でボールの奪いどころを共有し、しっかりと奪いきれれば、良い攻撃に移れる。

フランスはこれまで日本が対戦したスペインやブラジルと比べても、個の能力が高い。飛び込むとかわされる恐れがあるが、逆に間合いを気にして寄せが甘くなると、相手をスピードに乗らせてしまう。マッチアップする選手の間合いに、90分間の中でいかに早く対応するか、その能力が問われる。

高倉監督は、1対1でフィジカル重視の勝負をせず、複数の選手たちが関わる組織力で打開するための準備を重視しているが、一方で「組織力に逃げずに」1対1の勝負をすることも、選手たちに粘り強く伝えてきた。そして、今大会に入ってからも、1対1のトレーニングに多くの時間を割いてきた。いよいよ、その成果が試されることになる。

守備では両サイドのスピードへの対応が重要だが、攻撃は、中盤でボールを奪った後に、絶えず相手ゴールを目指す意識をいかに高く持てるかが鍵になるだろう。ピッチを広く使ったパスワークにおいて、最も多くのパスが経由するのがボランチだ。グループリーグ2試合目のスペイン戦の敗戦から得た教訓を活かし、相手のプレッシャーを恐れずにいなして、日本に流れをもたらしてほしい。ボランチから供給されるパスの質が、両チームの流れを左右する。

フランスのような相手は、日本にとっては初めての経験である。だが、それは相手にとっても同じ。どちらが試合を楽しみ、良さを発揮するのか。ハイレベルな駆け引きに期待したい。

※U-20フランス代表戦は本日(29日)、日本時間18:20~21:30 に、フジテレビNEXTで生中継。

(3)【監督・選手コメント(U-20フランス代表戦前)】

(4)【選手コメント(U-20フランス代表戦前)】

に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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