『はじめてのおつかい』:きびしくてやさしい「ウソ」と子どもの自立の心理学
■『はじめてのおつかい』25周年
日本テレビ系の人気長寿番組『はじめてのおつかい』が放送開始から25年目。1月5日には『はじめてのおつかい!爆笑!!25年記念スペシャル』の放送でした。
幼い子どもたちが、一生懸命「はじめてのおつかい」をする姿は、多くの視聴者の笑いと涙を誘っています。
■『はじめてのおつかい』は「うそ」から始まる。
ところで、番組で放送される各家庭の『はじめてのおつかい』の最初は、「ウソ」から始まります。そのご家庭に、危機的状況が訪れる!というウソです。
お父さんが忘れ物をしたり、お母さんの料理中に材料が足りなくなったり、そんな「ウソ」から、「はじめてのおつかい」物語がスタートです。
泣きべそをかいておつかいをいやがる子どもには、「このお守りがあれば大丈夫」なんてことを言うこともありますね。そもそも「一人で行ってきて」も、ウソですけれども。大勢のスタッフ、カメラマンがが周りを囲んでいますから。
でも、子どもたちの勇気も根性もがんばりも、真実です。親達の心配や感動の涙も真実です。
■子どもががんばれるとき
子どもがやるべきことをやらないと、親はよく嘆きます。でもたいていの場合、がんばる必要がないからがんばらないのです。私達の豊かで便利で安全な社会では、小さな子どもには社会的役割がありません。
子どもが薪(まき)を拾ってきたり、水汲みをしたりする必要はありません。もっと小さな子の面倒を見たり、売って現金を得るためにゴミの山からゴミを拾ってくる必要もありません。
豊かなことはとても良いことです。けれども、豊かさには副作用があります。子どもたちは、しばしば経験不足になり、有能感(自分にもできる)や、有用感(自分も役に立っている)、自己肯定感(自分はこれでいい)といった感覚が持ちにくくなります。
そこで、豊かな社会では、大人たちによる「演出」や「ウソ」が必要になってくるのかもしれません。
■子どもたちの力を伸ばすために
『はじめてのおつかい』では、実際は大人が買い物に行った方がずっと楽でしょう。それは、他のいろいろな場面でも同じかも知れません。学級会や生徒会で時間をかけて話し合ったり、体育祭や文化祭の実行委員会など、学校では子どもが苦労して何かを成し遂げるチャンスを与えています。
かつてアメリカで経済的な大恐慌が発生し、多くの中流階級が没落したとき。そのときに、多くの非行少年が現れたかというと、そんなことはありませんでした。むしろ、子どもたちは靴磨きを始めるなど、がんばりました。
現代の日本でも、お母さんが入院中は、子どもたちが進んで皿洗いをしたなんて話も聞きます。子どもは、必要性を感じ、使命感を感じたときには、親達の想像以上の力を発揮するのでしょう。
■それぞれの家庭の「はじめてのおつかい」ときびしくやさしい「ウソ」
「お父さん、肩がこったなあ」なんて言うと肩たたきをしてくれる子どももいます。本当は手伝ってもらう必要はないときにも、「手伝ってくれるかな」と言えば、お母さんの手伝いをする子どももいます。
不登校の子どもの親におすすめすることがあるのですが、たまには「親が忙しく」なったり、「具合が悪く」なったりしても良いと思います。親が困っているとき、意外と子どもはがんばります。
子どもに使命感を与え、役割りが持てるような、そんな「演出」を、あなたも考えてみませんか?