Yahoo!ニュース

[高校野球]センバツは低反発バットで投高打低。夏はどうなる?

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 健大高崎が群馬県勢として初めての優勝を飾った第96回選抜高校野球大会。終了から1カ月、自身の高校野球データベースを更新しながら、ふと考えた。低反発バットの導入で投高打低だったこのセンバツ、1試合に要する時間はどの程度だったのだろう。

「打低」が顕著だったのは、数字からも明らかだ。全31試合でホームランがわずか3本(うち1本はランニング本塁打)は、昨年の12本から大幅に減り、1976年に金属バットが導入されてから大会最少。二塁打、三塁打を加えた長打も81本で、これも76年以来最少だ。最多は17年の163本だから、半減以下ということになる。

 全体の打率は.233(2023年=.256、22年=.241)、得点は200で、大会記録の333(17年)の約6割にすぎない。1試合の最多得点は阿南光(徳島)が豊川(愛知)との1回戦で記録した11で、この試合の両者合計15得点も今大会最多だった。2試合以上戦ったチームの中で最高打率は中央学院(千葉)の.294で、長打数も同チームの11本。昨年は広陵(広島)の.316が最高だ。

 で、試合時間である。最長は第5日第1試合の神村学園(鹿児島)6—3作新学院(栃木)の2時間36分だ。これ、タイブレークで11回までもつれた開幕試合・八戸学院光星(青森)6—3関東一(東京)の、2時間35分をも上回る。最短は第6日第3試合、熊本国府3—0近江(滋賀)の1時間31分。2時間を下回ったのが、ほかに12試合あった。全31試合の平均では約2時間4分、タイブレークの4試合を除くと約2時間1分。昨年のセンバツと比較すると、全試合平均、タイブレークを除いた平均ともにおよそ1分短縮されている。

試合時間はやはり2時間が目安に

 昨年のセンバツでは、総得点が245。1試合平均は7で、それが今回は約6.45。1試合あたりのヒット数も、昨年の16.3に対して14.6と1本以上減っている。出塁数が減少すれば、所要時間も短縮する単純計算だ。さらにこの大会から、捕手などの野手がタイムを取る回数(ベンチからの伝令とは別)も1イニング1回に制限された。あるいは「打低」のおかげか、1試合あたりの両チームののべ投手数も、4.34から4.14に低下。投手交代の機会が減ったことも、試合時間の短縮につながっただろう。

 ただし夏の大会になると、打撃技術が向上し、新基準バットへの対応も進むはず。つまり、このまま投高打低が続くとは限らない。現に……01年秋に新基準バットが採用されたとき、翌02年のセンバツでは本塁打数が前年の14本から9本に減少したが、同年夏の甲子園では43本と、前年の29本から大きく増えている。

 いまたけなわの春季大会でも、2年連続で春の東京を制した帝京は、4回戦以降の4試合ですべてホームランが飛び出した。低反発バットの導入に対応するため、昨秋以降フィジカルの強化に取り組んだ成果だといえる。さて、この夏。投高打低傾向はまだ続くのか?

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

楊順行の最近の記事