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ブラジル流子育てから日本を見る

平岩国泰新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事
ブラジルのサッカー少年、ストリートから世界を臨む(Tony J Burns/SIME)

リオオリンピックが連日盛り上がっています。

現地ではオリンピックに対して、賛否両論があったようですが、こうして世界に向かってブラジルの魅力や影も含めて伝わっていることは良いことだと思います。

そんなブラジルではどんな子育て・教育が行われているのでしょうか。

私たちの団体に現地ブラジルと日本で育った青年がいますので、

彼および現地の方々にブラジルでの子育てを聞いてみました。

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ブラジルの子育て12の特徴(魅力と影)

<魅力>

1、小さい頃からの夢を持ち、熱心に勉強する'''

小さい頃からの夢を明確に持ち、ブレずに目指す姿があるそうです。

また「自分を認めてもらいたい」「お金持ちになって家族を幸せにしたい」というのが子どもの勉強のモチベーションだそうです。

2、家族が仲良く、親戚一同で子どもを育てる

母親だけでなく父親も、またおじいちゃん・おばあちゃんも親同様に子育て・教育に当たるそうです。

また親戚がそばに住んでいることも多く、甥や姪なども我が子同様に育てるそうです。

3、小さい頃からお店や家を手伝う

家のために子どもでも物を売ったりして家族に貢献をします。

4、子どもの話を大人がしっかりと聞く

子どもでもしっかりと自分の意見を表現することが大切とされ、大人もそれに耳を傾けます。

5、カウンセリングを積極的に使う

勉強がうまくいかない時、クラスにうまく馴染めない時など些細なことでもすぐにカウンセリングを使い相談し、早めに対処するそうです。

6、小さい頃から様々な言語や文化に触れる

多民族であり、積極的に色々な文化に触れ、言語だけでなく文化を知ることを大切にします。

7、よく遊ぶ

よく学ぶ一方で、遊ぶ時は大人も子どももなく本気で遊ぶそうです。

ここまでが、ブラジルの子育ての正の部分の特徴です。

一方、負の部分もあります。

<影>

8、貧富の差で教育が決まる

貧富の差は、生まれた家庭や地域で決まります。上記の正の特徴は概ね恵まれた子の話なのです。

貧しい家庭では「その日を生きればいい」と考えがちで、その考えが連鎖して下の世代に引き継がれます。

9、自分さえよければいいという考え

子どもの自由を尊重しすぎるあまり、身勝手になることがあります。また時間などもルーズな傾向。

また家族愛が強いことで、「自分や自分の家族さえよければいい」という考えにもなる懸念があります。

10、公立の学校が頼りない

教員の給料が低く、払われないことなどもありストライキ等で学校が止まることがあるそうです。

お金のある家庭は私立校を目指しがちです。また、国内の大学の地位はまだまだ低く、裕福な家庭の子は海外を目指すケースも多いそうです。

11、政治不信が根強い

公立の学校で教科書などが揃わないことがあり、それは政治家が横領しているなどと思われているそうです。政治不信はオリンピック開会式での大きなブーイングからも感じられました。

12、どんな時も遊びを優先する

思い切り遊ぶため、遊びのためならどんなに忙しくても休んでしまうことなどがあるそうです。

日本と比べると?

以上がブラジルと日本で育った青年とそのご家族などにお聞きした特徴です。

日本と比べてみて、日本の6つの特徴が浮かび上がってきます。

1、均質的な教育レベルの高さ

ブラジルと比べると日本の公教育のレベルの高さ、またそれが日本全国に行き届いている強さを感じます。

一方で、個性を大事にする人間は育ちにくい土壌を作っているのもまた事実かと思います。

2、子どもを幼い存在として育てる

子どもに対してあまり発言をさせずに大人の言うことを聞かせて育てるのも日本の特徴です。

規範意識などの高まりは良いものの、やはり子どもの表現力や個性の発揮の面ではマイナス面も考えられます。

また日本の子どものお手伝いなどの減少も大人の仲間入りの機会を減らしていると言えると思います。

3、個より全

これは教育に限らず、日本国全体の大きな特徴ですが、個より組織や仲間とのルールが大事にされます。

これが日本の安全性の高さやマナーの良さを生んでいますが、やはり個性は消される方向に作用します。

4、私より公

日本では、職場で遊びの話をすることなどはあまりありません。

子どもの頃から教育でも部活などでも、無駄口を許さないストイックさがあります。

良い点もありますが、「ワークライフバランス」が叫ばれる昨今では、もう少し日本人も「遊び上手」になっても良いのでしょう。

5、核家族および母親に負担の大きい子育て

過去には日本も三世代が同居したり、ご近所や親戚と協力して子育てにあたっておりましたが、昨今なくなってきたのは残念です。

また父親が子育て・教育にあたる重要性はブラジルはじめ世界からも学べます。

「社会で子どもを育てる」のは日本の素晴らしい特徴でしたので、失いたくありません。

6、狭い教育環境

この点はやはり世界と比べるといつも気になる点です。

同じような髪や目の色の人しかいない教室で学び、また何かあってもカウンセリングなど外部への相談をしにくい環境。

やはりこの点は今後のグローバルな世界を考えるとデメリットを多く感じます。ぜひもっと幅広い視野を持てる教育環境を作っていく必要がありますね。

ということで、リオで盛り上がるブラジルの子育て・教育およびそこから見える日本の特徴を見てみました。

4年後には、いよいよ日本にオリンピックがやってきます。

日本にも光と影の面がありますので、ぜひ世界の人々に見てもらって評価することで、より良い日本の教育を作っていきたいと思います!

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新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、人事、経営企画、海外事業など担当。2004年長女の誕生をきっかけに、“放課後NPOアフタースクール”の活動開始。グッドデザイン賞4回、他各種受賞。2011年会社を退職、教育の道に専念。子どもたちの「自己肯定感」を育み、保護者の「小1の壁」の解決を目指す。2013年~文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年~渋谷区教育委員、2023年~教育長職務代理。2019年~新渡戸文化学園理事長。著書:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(2019年発刊)

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