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台風の日の学童保育

平岩国泰新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事
(提供:イメージマート)

昨日、関東地方に大型の台風が接近しました。
台風のニュースが継続して流れ続け、交通の乱れなどを大きく報じていました。

このような日に学童保育はどのようになっているのでしょうか?

まず今は夏休みで、学童保育は毎日朝から開室しています。昨日は金曜日であり、開室日ですのでスタッフは出勤する必要があります。ちなみに多くの学童保育はお盆休みがありません。そのような時期にも仕事をされている方がいるからです。

こうした大きな台風が来ると、学童保育のスタッフは前日から宿泊するかを検討します。なぜかと言えば、当日の朝に交通が止まってしまった場合でも開室をする必要があるからです。多くのスタッフは学童保育の徒歩圏内に住んでいるわけではないので、交通が止まりそうな時には宿泊して対応しています。ちなみに、公設の学童保育で、こうした宿泊の経費を自治体が負担してくれるかと言えば、そうでもないところが多いと思います。

「そこまでしなくても、、」
と思ってくださる方もいるかもしれませんが、病院、消防、警察、自治体、メディアなど、台風や災害の時にこそ出勤しなければいけない仕事もあります。そうした親御さんにとって学童保育があいているかは非常に重要で、安心して子どもが過ごせる場があってこそ、大切な仕事に集中できます。

コロナウイルス対応の時も同様でした。その頃はよく「私たちは準最前線」という言い方をしていました。最前線で頑張る人たちを支えるための存在が学童保育であり、保育園です。

昨日も多くの学童保育のスタッフがそのような気概で開室をし、親子の支えになっています。もちろん台風の時に出勤しても特別な手当が出ることもありません。自治体から設定されている賃金も残念ながら最低賃金にかなり近い水準がほとんどです。「エッセンシャルワーカー」と言ってもらえる職種ですが、その名前と実態はかけ離れたものがあります。

今日の土曜日も多くの学童保育が開室をしています。土曜日に働く保護者もいるので、年間を通じて土曜日開室をしている学童保育が多いのです。今回の台風は夜にかなり接近する形でしたので、今朝もいつもより早く施設に行き、窓ガラスが割れるなどの被害がないかを確認して、開室をしています。今日はいつも以上に暑さに注意が必要です。

台風は近年大型化するものが多く、交通など含めて色々と運休するケースも増えています。しかし、学童保育には今のところ「簡単に閉室しない」という気概があります。こうしたスタッフたちに拍手することもできますが、一方で行き過ぎも危険です。本当に厳しい時には学童保育や保育園も閉室する可能性も考えていきたいし、準最前線として開室することを求めるのであれば、そうした姿を報道くださったり、それに対する手当などをつけたりすることが提起されても良いのではないでしょうか。
あるいは、そもそも厳しすぎる学童保育スタッフの処遇を継続して見直していくことを、社会全体で合意していけないものかとも感じます。そうでないと本当にスタッフがいなくなってしまいます。

「夏休みに学童保育があって本当に良かった!」そう思ってくれている保護者は日本全国に数多くいると思います。

「雨ニモマケズ、風ニモマケズ、雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ」と頑張っている日本全国の学童保育のスタッフに心から拍手を送りたいと思います。

新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、人事、経営企画、海外事業など担当。2004年長女の誕生をきっかけに、“放課後NPOアフタースクール”の活動開始。グッドデザイン賞4回、他各種受賞。2011年会社を退職、教育の道に専念。子どもたちの「自己肯定感」を育み、保護者の「小1の壁」の解決を目指す。2013年~文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年~渋谷区教育委員、2023年~教育長職務代理。2019年~新渡戸文化学園理事長。著書:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(2019年発刊)

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