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自由に遊べない現代の子どもたち~世界子どもの日に願う:子どもの声~

平岩国泰新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事
(写真:アフロ)

「小学生のころ、放課後に週何日くらい友達と遊びましたか?」

皆様はこのように聞かれて、何日と答えますでしょうか?

正確に言うと「学童保育や習い事の中で遊んだ日は数えずに、自由に友達と遊んだ日数」を数えます。何日くらいありましたか?

私は昭和の時代に小学生を過ごした世代ですが、「5日でしょ!」と答える方が少なからずいると思います。つまり平日は毎日友達と遊んでいた記憶があります。土日もそうだったので「7日!」かもしれません。少なくとも小学校低学年は、おおむねそんな感じでした。

私たちは、現代の小学生に対して、同じ質問をアンケートでとってみました。

(インターネット調査:有効回答件数302)

そうしたところ、驚くべき結果となりました。

このグラフの通り、最も多いのは「ほとんどない(43.7%)」、次が「週1日(27.2%)」。両者をあわせて7割を超える小学生が「放課後に友達と遊ぶのは週1日以下」ということになります。少ないことは想像していましたが、これは想像を上回る状況でした。

なぜこのようなことになったのでしょうか?原因も聞いてみると、以下の結果となりました。

「友達と予定が合わない(48.7%)」を筆頭に「自分と友達どちらかが忙しい」という理由が並び、次いで「友達と遊べる場所がないから(25.2%)」が出てきます。

友達と遊べない最大の理由は「忙しい」です。

確かに今の子どもたちは、小学校低学年の間は学童保育に行く子が増えました。2000年には学童保育の利用者は39万人でしたが、2022年には139万人になり、およそ20年間で100万人の利用者が増えました。他にも子どもの遊びだったものの多くが習い事化されていき、低学年の時代から塾などに行く子も増えました。結果として、子どもたちは予め決まったスケジュールの毎日を過ごしていて、とにかく予定があわずに「友達と遊ばない」という社会に変わったわけです。

では、子どもたちはどう思っているのでしょうか?それが次の結果です。

上記の通り、子どもたちは76.2%が「もっと友達と遊びたい」と答える結果になりました。

フリーのコメントには以下のようなものがありました。

習い事や宿題で時間がないから遊べない。宿題が多い。宿題が少なくなったらいいなと思う。(京都府4年生)

学童に友達がいるといいなと思う。元々はいたけど、やめちゃったから寂しい。(神奈川県4年生)

4年生になって友達が受験や宿題で忙しくて遊べなくなった。3年生の時は友達と約束して遊べていた。(神奈川県4年生)

公園はあるけど、子どもが遊べるように整備されていなくて、危なくて遊べない。(宮城県4年生保護者)

以前、近隣からクレームがあり、学童の子たちが公園や外に出ることを控えている。(神奈川県2年生保護者)

学童がもうちょっと広かったらいいと思う。人数が多いとぎゅうぎゅうでうるさい。(大阪府1年生)

学童は楽しくない。先生にダメって言われる。あばれたらダメ、しゃべったらダメ、外にも行けない。先生がやさしい人になってほしい。(兵庫県3年生)

共働きが多く、親同士の遠慮もあってお互いの家で遊ぶのは減っている。(北海道1・3・5年生保護者)

校庭開放はあるが、一度家に帰ってから遊びに行くルール。家と学校が遠いから遊びに行かない。(兵庫県5年生保護者、長野県2年生保護者)

このようにスケジュールに加えて、場所の問題、ルールの問題、大人の問題、色々と制約があって「自由に遊べない」状況が生まれています。

この課題を一気に解決するのはなかなか難しいですが、私たちは有効な施策として、『放課後の学校施設の活用』『放課後スタッフの充実』を挙げており、国や地方自治体に提案をしています。

学校施設が活用できれば、子どもたちは、移動の時間もなく、安全な場所で友達と自由に遊ぶことができます。もちろん学校外の子どもの居場所も増えていくべきですが、整備には時間もお金も相当かかるので、まずは既に全国にある学校施設を有効活用することが合理的です。

一方で、これ以上先生たちの負担が増えることがあってはいけませんので、子どもの居場所を見守る人材が必要です。それを地域のボランティアの方に求め続けていくのは難しく、実際にいま多くの居場所で高齢化したスタッフが十分に運営しきれない状況が起きています。ですので、一定のスキルのある現役世代のスタッフが増えていくようにしていかねばなりません。

私も日頃の放課後に子どもたちの声を聞いていて、最もよく聞く彼らの願いは『自由』です。非常に余白のない生活をしている子どもが多く、息苦しそうに見える時があります。なんとか真っ白な時間を持てるようになることを願います。

11月20日は「世界子どもの日」です。この日が制定された背景には国連の『子どもの権利条約』があります。この権利の4原則のうちの1つが「子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)」です。

子どもの意見は『友達ともっと自由に遊びたい』です。

それをどうしたら叶えられるのか?時代のせいだと諦めずに、これからも社会全体で取り組めるよう、願っています。もちろん私たちも全力で頑張り続けます。

〇小学生の放課後の過ごし方に関する独自調査結果(放課後NPOアフタースクールにて2023年8-9月に実施)

https://npoafterschool.org/wp-content/uploads/2023/11/231114_Houkago_Report.pdf

新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、人事、経営企画、海外事業など担当。2004年長女の誕生をきっかけに、“放課後NPOアフタースクール”の活動開始。グッドデザイン賞4回、他各種受賞。2011年会社を退職、教育の道に専念。子どもたちの「自己肯定感」を育み、保護者の「小1の壁」の解決を目指す。2013年~文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年~渋谷区教育委員、2023年~教育長職務代理。2019年~新渡戸文化学園理事長。著書:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(2019年発刊)

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