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「リアルおつり投資」で未来のお金の不安が解消できる?

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
おつり投資が「リアルおつり投資」に進化した?(画像はトラノコHP)

「おつり投資」が「リアルおつり投資」にバージョンアップ

金融とITの融合による、新次元のサービス提供があいついでいます。いわゆるフィンテックです。アメリカのフィンテックベンチャーを語るとき必ずと言ってもいいほど登場するのは「おつり投資」です。

日々のお会計の端数、95円のお会計なら「5円」を積み重ねて、投資資金にしようというのがおつり投資のコンセプトです。投資と言えばまとまったお金を出さなければいけないという心理的ハードルがありますが、おつり投資ならそれを解消することができます。ことわざに「塵も積もれば山となる」といいますが、まさにそれです。

日本でもフィンテック企業のひとつとして「おつり投資」にチャレンジする企業がいくつかあります。トラノコやマメタスといったサービスです。

このうちトラノコが金融庁と連携して、ユニークな実証実験をスタートすることが話題となっています。

それは「リアルおつり投資」です。

お会計のたび、チャリンとお釣りを投入する「リアルおつり投資」

おつり投資、というと「本当にお会計のたび5円とか8円を投資する」というイメージがありますが、実際には困難であるため、家計簿データや電子マネー、クレカの利用履歴から「1カ月のおつり累計額」を推定、まとめて引き落とすのが標準的です。

ところが「1日10回お会計があり、毎回平均35円のおつり(100円未満のおつりで投資すると設定した場合)」があった場合、1カ月のおつり投資は10500円にもなります。まとめて引き落とすには心理的にデカい金額です。

今回の実証実験というのは、トラノコがコンビニ(セブンイレブンの特定店舗が対象)に「おつり投入端末」を設置、お会計のあと小銭をじゃらじゃらと投入して、その場でリアルにおつり投資をしてしまおうというものです。

なるほどこれなら、その場でおつりを手放すことができますから、負担感は薄まります。財布も軽くなるし、むしろおつり投資によって気持ちよくなる要素もありそうです。

→ トラノコのプレスリリース 

一方で「リアルおつり投資」の課題もある

一方で、今回の実証実験のスタイルには課題もいくつかあります。

まず、「おつり投入端末」を全国の全店舗に設置していくのは非現実的ということです。設置コスト、回収コストなどを考えれば、割が合うはずがないでしょう。

次に「おつり投入端末」に投入する手間があれば、結局のところ面倒になるということです。自分のIDを認証させ、確認をし、おつりを投入、金額を確認して終了、というのでは(手順は筆者が推定したもの)、コンビニ利用者の「さっと買い物して出ていく」という消費スタイルに合いません。

第3の課題は「電子マネー未対応」ということです。プレスリリースを見る限り、現金投入端末のようですから、コンビニで電子マネー決済をする場合、この「リアルおつり投資」の対象外ということになります。フィンテックの成果のひとつともいえる電子マネーの利用率が向上していく時代に、ちゃりんと現金投入するのは体験としてはユニークながらもったいない気もします。

この3つの課題については、実証実験を踏まえ「真・リアルおつり投資」とでもいうべきスタイルに進化する必要があります。要するに「コンビニで100円払ったら、おつりはコンビニが預かっておつり投資会社に回してくれる」ようなスタイルが理想的です。

もちろん、今回の実証実験を否定しているわけではありません。現在行いうる選択肢の中からトライアルをしているのだと考えて、今行うチャレンジは、あたたかく見守るべきだと思います。

「真・リアルおつり投資」にグレードアップするためには関係各所との連携が必要になります。手数料の問題もありますし難しい交渉も予想されます。

しかし、電子マネーにせよ、オンライントレードにせよ、試行錯誤とステップアップを積み重ねながら利便性の高いサービスとして進化してきました。「おつり投資」もぜひもっと便利なサービスに進化してほしいと思います。

→ トラノコ 

(おまけ)実践テクニックとしては、可能な限り自動化することがコツ

ここまでではただのニュースで終わってしまうので、最後におつり投資を検討している読者にFPとしての実践的なアドバイスをしておきましょう。

1.おつりデータの補足について

トラノコの場合、おつりの計算は、直接トラノコに電子マネーやクレカのIDを登録する方法と、家計簿アプリ(Zaim、MoneyForward、MoneyTree)に紐つける方法があります。家計簿アプリに連携する場合、家計簿アプリのほうで電子マネーやクレカ、オンラインバンキングなどを登録しておきます。できれば家計簿アプリの連携をオススメします。現金決済以外の家計簿データも作成できるようになりますので何かと便利です。

2.おつり投資の計算単位について

おつりの計算単位は、100円、500円、1000円がありますが、100円にするといいでしょう。たとえば1000円に設定して、250円の買い物をすると750円のおつり投資と設定されてしまい、1カ月の累計が高額になってしまいます。計算単位は変更することもできます。

3.おつり投資の認証の自動化について

アプリで毎日、おつり投資の金額について通知がありますが、自分でYES/NOを押す設定にすると面倒でサボったり、投資したくないと思うようになりますから、自動的に投資をする選択をしておくことをオススメします。

4.口座管理について

1カ月のおつり相当額を原則毎月6日に引き落とします。この場合の銀行口座は給与振込口座にして、残高不足にならないよう注意してください。残高不足になると、せっかくのおつり投資もゼロ円ということになってしまいます。

5.口座管理手数料について

トラノコは月300円の手数料を引きます。これが割高と感じる人もあろうかと思います。しかし定額の手数料体系は資産が貯まってきたときには有利です。10万円でも100万円でも月300円ということになるからです。

5.投資選択肢について

トラノコでは独自のバランス型ファンドを3本設定していて、小トラ、中トラ、大トラと分類しています。基本的には株式投資比率が高いほど「大」になり、価格変動の幅が高まると同時に中長期的なリターンも高くないます。少額からスタートすること、手元に定期預金等も保有していることなどを前提に、「大」でチャレンジしてみてはどうでしょうか。

6.とりあえず続けること

長期積立投資は理屈としても負担が少なく効率的な投資方法です。短期的な株価の上下動におびえることなく、続けていくことをオススメします。もしかしたら別の買い物で消費していたかもしれない「おつり」の積み重ねです。短期的な売り買いは考えず、長い目で見て増やしてみてください。

   →(参考) ほったらかし積立投資の勝率は99% 簡単で確実に勝てる秘訣は何か

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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