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弾道ミサイル発射車両のタイヤの数について

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より2023年8月30日発射の火星11ナ(装輪4軸8輪TEL型)

 車載移動式の弾道ミサイルの発射車両はTEL(輸送起立発射機、transporter erector launcher)と呼びます。TELにはトレーラー牽引型や野外機動トラック型などがあります。トレーラー牽引型は安く作れますが悪路走破性が低く舗装路での運用しか出来ません。野外機動トラック型は大きなタイヤを履いて全輪が駆動し高い悪路走破性を持ちます。

 トレーラー牽引型のTELはイランが好んで採用しています。イランの場合は安く作れることと民間車両に偽装することを狙っています。他の国のTELは野外機動トラック型が多いのですが、新しくアメリカ軍が開発中の新型中距離ミサイル「LRHWダークイーグル」や日本自衛隊が開発中の「島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)」はトレーラー牽引型のTELとなる予定です。

 当然のことですが大きなミサイルには大きなTELを用意する必要があります。大きなTELは多くの数のタイヤを履く必要があります。また悪路走破性を確保するには大きめのタイヤが要求されます。ここでは各国の野外機動トラック型のTELについてタイヤの数を比較してみます。

各国の弾道ミサイル(野外機動トラック型のTEL)

各国の野外機動トラック型のTELのタイヤの数(筆者作図)
各国の野外機動トラック型のTELのタイヤの数(筆者作図)
  • 3軸6輪:SRBM(短距離弾道ミサイル) ※CRBM(近距離弾道ミサイル)
  • 4軸8輪:SRBM(短距離弾道ミサイル)
  • 5軸10輪:MRBM(準中距離弾道ミサイル)、SRBM(短距離弾道ミサイル)
  • 6軸12輪:IRBM(中距離弾道ミサイル)
  • 7軸14輪:ICBM(大陸間弾道ミサイル)、IRBM(中距離弾道ミサイル)
  • 8軸16輪:ICBM(大陸間弾道ミサイル)
  • 9軸18輪:ICBM(大陸間弾道ミサイル) ※韓国の玄武5は例外的にSRBM
  • 11軸22輪:ICBM(大陸間弾道ミサイル)
  • 12軸24輪:ICBM(大陸間弾道ミサイル) ※北朝鮮、詳細不明

※火星シリーズ、ノドン、ムスダン、スカッドは北朝鮮。東風シリーズは中国。玄武シリーズは韓国(この表では特殊過ぎる玄武5のみ参考例として記載)。トーチカU、イスカンデルM、トーポリ、トーポリM、ヤルスはロシア(スカッドは引退済み)。

※履帯(クローラー)型やトレーラー牽引型の車両は除く。

 ロシアと中国の車載移動式ICBMは8軸16輪のものが主流です。しかし北朝鮮がこれを上回る9軸18輪の「火星15」を登場させて世界を驚かせ、更に11軸22輪の「火星17」を公開して世界最大の車載移動式ICBMの座を欲しいままにしています。ただし大き過ぎるTELは走行して移動するのも一苦労なので使い勝手が悪く、大きいことは実はあまり自慢になりません。

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 しかし北朝鮮は更に大型化した超巨大ICBM用のTELを開発している疑いがあります。ただしこれはまだミサイル自体は確認されていませんし、TELの全容もはっきりしておらず、謎に包まれた存在です。

 一方で韓国は大重量8トンの貫通弾頭を持つ特殊な「短距離弾道ミサイル」を完成させました。これは短距離弾道ミサイルの射程しかありませんが、大きさは中距離弾道ミサイルから大陸間弾道ミサイルに匹敵するサイズで、TELはなんと9軸18輪です。

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 ただしミサイルの仕様は1段式固体燃料の弾頭一体化型で太く短い形状という、短距離弾道ミサイルらしい設計です。ただし弾頭重量が8トンと異常なまでに重いことが特徴で、世界に類を見ない弾道ミサイルになります。

 なお今回の表には記載していませんが、アメリカ製のHIMARS多連装ロケット発射機は3軸6輪のトラックに搭載されており、短距離弾道ミサイルのATACMSやPrSMを発射可能です。韓国版HIMARSのK239天橆(チョンム)は4軸8輪のトラックで、ロケット弾の他にATACMS似の短距離弾道ミサイルのKTSSM(輸出名称:CTM-290、本国名称:ウレ)を発射可能です。また韓国の玄武2(A、B)は4軸8輪、玄武2Cは5軸10輪のTELです。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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