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日本国産の将来水陸両用車(装軌車両型)の研究

JSF軍事/生き物ライター
防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)

 12月24日、防衛装備庁は11月12日に実施した「防衛装備庁技術シンポジウム2024」の動画アーカイブの配信および資料の公開を開始しました。公式ページのオーラルセッションおよび展示の箇所にそれぞれリンクされています。公開されている新技術の研究は多岐にわたります。実にオーラルセッションは17項目、展示は44項目もあります。

 全てを一度に紹介するのはとても無理なので、ここでは「展示」の「資料」であるP-5「他機関と研究協力を活用した水陸両用車の機動力向上のための取り組み」の動画および資料を紹介します。これらには既存のアメリカ製水陸両用装甲車「AAV7」を用いた試験と、国産開発の「将来水陸両用技術」の試験が紹介されていますが、2分46秒の動画のうち2分13秒~2分40秒のシーンに日本国産開発(アメリカも研究に参加)の「将来水陸両用車」が映っています。

防衛装備庁技術シンポジウム2024

※2分13秒~2分40秒に将来水陸両用車の車両水槽試験

防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)
防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)

防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)
防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)

防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)
防衛装備庁資料より将来水陸両用技術の研究(水際機動試験)

※後部のウィングのように見えるものは水上航行時に下に降ろして使う後部フラップ。陸上走行時は邪魔になるので上に置く可動機構となっている。

 なお同試験と似ている内容のものは防衛装備庁技術シンポジウム2023の「島しょ環境を模擬した水陸両用車シミュレータによる研究開発のDX化」でも公開されています。

参考:防衛装備庁秘術シンポジウム2023

※2分10秒~2分47秒に将来水陸両用車の車両水槽試験

参考:防衛装備庁秘術シンポジウム2023(資料

防衛装備庁資料より「島しょ環境を模擬した水陸両用車シミュレータによる研究開発のDX化」から将来水陸両用車
防衛装備庁資料より「島しょ環境を模擬した水陸両用車シミュレータによる研究開発のDX化」から将来水陸両用車

※将来水陸両用車は水上航行時に波切用の前部フラップを展開する。また後部フラップも下に降ろす。EFVのように底部フラップ機構があるかどうかは写真の角度からは見えず不明。

 将来水陸両用技術の研究 (水際機動試験)はサンゴ礁の礁池・礁嶺を水陸両用車が乗り越えるための試験です。強力な3000馬力級エンジンによってウォータージェットでの前進用の推進力および履帯の駆動力で上向きに乗り越えることで踏破します。これは重要な点としてウォータージェットと履帯の両方を同時に使用します。そしてサンゴ礁に履帯が噛みやすいように起動輪がなるべく前方に配置されています。

参考:防衛装備庁技術シンポジウム2019

防衛装備庁の資料「我が国の装甲車開発を踏まえた次世代水陸両用技術の成果と今後の展望」より
防衛装備庁の資料「我が国の装甲車開発を踏まえた次世代水陸両用技術の成果と今後の展望」より

 南方の島嶼で使用するために将来水陸両用車はサンゴ礁を乗り越えられる高い踏破能力を必要とされています。そして3000馬力級エンジンは過去にアメリカ海兵隊が計画していながら中止した水陸両用装甲車「EFV(遠征戦闘車)」の2700馬力を上回っているので、水上航行速度も同等以上となるでしょう。なお現行型のAAV7は約500馬力程度です。

参考:陸上装備研究所パンフレット(令和6年版)

陸上装備研究所パンフレット(令和6年版)より「車両水槽」の紹介から将来水陸両用車
陸上装備研究所パンフレット(令和6年版)より「車両水槽」の紹介から将来水陸両用車

陸上装備研究所パンフレット(令和6年版)より「車両水槽」の紹介
陸上装備研究所パンフレット(令和6年版)より「車両水槽」の紹介

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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