無人水上艇で敵ヘリコプターを撃墜、ウクライナ軍が史上初の戦果
12月31日、ウクライナ国防省情報総局(GUR)の特殊部隊「グループ13」が無人水上艇「マグラV5」によってロシアのMi-8輸送ヘリコプター1機を撃墜して更にもう1機に損傷を負わせたと発表されました。世界史上初の無人水上艇による空中目標の撃墜戦果です。
場所はクリミア半島の西部にあるタルカンクート岬の付近とされています。使用ミサイルはR-73空対空ミサイル改造の無人水上艇発射型「シードラゴン」です。
※「Group 13」などの命名はウクライナ語ではなく英語で表記。
※ウクライナ国防省情報総局の発表文にある「SeeDragon」はおそらく誤字で「SeaDragon」が正しい。
Історичний удар ― воїни ГУР вперше у світі знищили повітряну ціль за допомогою морського дрона Magura V5
- 0分00秒:各国の言語で「グループ13」を紹介
- 0分14秒:敵戦闘機を視認
- 0分17秒:水柱が上がる(後述の敵ヘリコプターの射撃)
- 0分22秒:敵ヘリコプターを視認
- 0分28秒:敵ヘリコプターの射撃
- 0分34秒:敵ヘリコプターを視認
- 0分40秒:敵ヘリコプターを照準
- 0分45秒:R-73空対空ミサイル改造「シードラゴン」発射
- 0分48秒:命中(撃墜と判定) ※ただし遠距離で詳細不明
- 0分53秒:敵ヘリコプターを視認、フレア(囮熱源)を放出中
- 1分08秒:敵ヘリコプターを照準
- 1分17秒:R-73空対空ミサイル改造「シードラゴン」発射
- 1分20秒:命中(損傷と判定) ※命中したが飛び続けている
- 1分30秒:敵ヘリコプター避退中
- 1分33秒:挨拶「良い新年を」
- 1分40秒:ウクライナ国防省情報総局(GUR)
- 1分46秒:動画終了
※動画の流れの解説は筆者の推定。ロシア軍のMi-8輸送ヘリコプターはドアガン(側面ドアを開けて機関銃を装着して射撃)ないし機首機関銃(オプションで装着可能)でウクライナ軍の無人水上艇を警戒・掃討する任務に就いていたところ、対空ミサイル付きのマグラV5無人水上艇に逆襲された。
※2025年1月2日追記:ウクライナGURは今回の戦闘による戦果を修正報告し、マグラV5無人水上艇による戦果は「ヘリコプター2機撃墜・1機撃破」とした。少なくとも3発以上の対空ミサイルを発射したことになり、1隻あたり2発搭載なので、複数隻が作戦に投入されていたことになる。
過去に確認されているマグラV5に搭載されたR-73対空ミサイル
※2本の発射レールがあり、画像では片方の左側にミサイル1発が搭載されている。マグラV5無人水上艇はR-73空対空ミサイル改造「シードラゴン」を最大2発搭載可能。これは携行地対空ミサイルよりも大きなミサイルになる。
※「フランケンSAM」とは対空ミサイルを本来とは違う発射システムから撃つ改造型のこと。SAM(surface-to-air missile)とは表面発射対空ミサイル、つまり地対空ミサイルないし艦対空ミサイルの略語。フランケンはメアリー・シェリーの小説「フランケンシュタインの怪物」から。