本塁打王を獲得したシーズンと同じ本数のホームランを打ちながら、球団に契約を解除される
80人近い選手が、球団に契約を解除され、ノンテンダーFAとなった。そのうちの一人、3年前にMVPを受賞したコディ・ベリンジャーについては、「3年前の輝きを失ったのは、ノンテンダーとなったMVPのベリンジャーだけでなく…」で書いた。
こちらは、2020年の本塁打王だ。2年前、ルーク・ボイトは、ニューヨーク・ヤンキースの一塁手として、22本のホームランを打った。短縮シーズンとはいえ、20本塁打に達した選手は、両リーグでボイトだけ。9.7打数に1本塁打は、二桁のホームランを打った71人のなかで、最もハイペースだった。ちなみに、昨シーズンの大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は11.7打数/本、今シーズンのアーロン・ジャッジ(現FA)は9.2打数/本だ。
だが、昨シーズンは、左膝の故障もあり、打数は2020年と同じ213、ホームランは半数の11本にとどまった。サンディエゴ・パドレスとワシントン・ナショナルズでプレーした今シーズンは、2020年と同じ22本塁打ながら、打数は2倍以上の500だ。8月には、パドレスがホアン・ソトとジョシュ・ベル(現FA)を獲得したトレードにおいて、交換要員の一人とされたエリック・ホズマー(現ボストン・レッドソックス)が拒否権を行使し、その「身代わり」となる形で放出された。
移籍前は22.9打数/本(13本)、移籍後は22.4打数/本(9本)。ナショナルズでも、ペースはほとんど上がらなかった。来年2月には、32歳となる。しかも、今オフに「スーパー2」として年俸調停の申請権を得たので、ナショナルズが保有していれば、来シーズンの年俸は、今シーズンの545万ドルよりも高くなる。ボイトをノンテンダーとした大きな理由は、それを避けるためだろう。
ここ2年のボイトは、持ち前のパワーを発揮することができていない。その上、出塁率は高くなく、一塁の守備もうまくない。最悪の場合、マイナーリーグ契約しか得られないかもしれない。
2010年以降に本塁打王を獲得したヤンキースの選手は、2017年に52本のジャッジ、2020年に22本のボイト、2022年に62本のジャッジだ。このまま、ボイトがメジャーリーグからフェイドアウトしていった場合――そうならないことを願うが――「ジャッジとジャッジの間に本塁打王となったヤンキースの選手は?」というトリビア・クイズになりかねない。