ダルビッシュらを手に入れた「プレラーGMの大補強」は、大失敗に終わった6年前の二の舞にならないのか
今オフ、サンディエゴ・パドレスは、3人のエースを獲得した。タンパベイ・レイズからブレイク・スネル、シカゴ・カブスからダルビッシュ有(と控え捕手のビクター・カラティニ)、ピッツバーグ・パイレーツからはジョー・マスグローブを手に入れた。韓国のキウム・ヒーローズにいた内野手のハソン・キムとは、4年2800万ドル(+ポスティング料525万ドル)の契約を交わした。
この一連の補強は、「プレラーパルーザ・パート2」あるいは「別のプレラーパルーザ」とも呼ばれている。プレラーはパドレスのA.J.プレラーGM、パルーザはパーティやフェスティバル、それも、派手なものを指す。
プレラーパルーザのパート1は、2014年のシーズン終了後に繰り広げられた。外野手のマット・ケンプ、ジャスティン・アップトン(現ロサンゼルス・エンジェルス)、ウィル・マイヤーズらを獲得したのに続き、先発投手のジェームズ・シールズを4年7500万ドルで迎え入れ、2015年の開幕直前にはクローザーのクレイグ・キンブレル(現カブス)を手に入れた。キンブレルが動いたトレードでは、ジャスティンの兄、弟と同じ外野手のメルビン・アップトンJr.も、アトランタ・ブレーブスからパドレスへ移った。
ただ、2015年のパドレスは、勝ち越すことすらできず、前年よりも白星を3つ減らした。そのオフ、パドレスはキンブレルをボストン・レッドソックスへ放出。FAになったジャスティンは、デトロイト・タイガースへ去った。マイヤーズは今もパドレスにいるが、シールズとケンプも、2016年のシーズン途中に放出された。
プレラーパルーザのパート2も、パート1と同じような結果になるかもしれない。もっとも、これは、どの球団のどの補強にも言えることだ。今シーズンのパドレスは、6年前とは大きく違う。
プレラーがテキサス・レンジャーズのGM補佐からパドレスのGMとなったのは、2014年の夏だ。プレラーパルーザのパート1は、プレラーGMにとっては最初のオフ、就任の数ヵ月後に幕を開けた。そのせいなのか、事を急ぎすぎた感もある。この時点で、パドレスは4年続けて負け越し、ポストシーズンからは8年遠ざかっていた。
一方、プレラーパルーザのパート2には、そこに至るまでの「序章」がある。昨夏の動き(「パドレスの大補強。3日間に6件のトレードを成立させ、10人を獲得。捕手は2人を入れ替え」)は別にしても、近年のパドレスは、FAに大枚を投じてきた。2018年2月に一塁手のエリック・ホズマーと8年1億4400万ドルの契約を交わし、その1年後には10年3億ドルでマニー・マチャドを迎えて三塁に据えた。2020年のパドレスには、クローザーのドルー・ポメランツや外野手のトミー・ファムも加わっている。
プレラーパルーザのパート1も、パドレスはただの失敗に終わらせていない。2019年にデビューした遊撃手のフェルナンド・タティースJr.は、シールズの交換要員の一人として、2016年6月にシカゴ・ホワイトソックスからパドレスへやってきた。タティースJr.はすでに、パドレスの顔どころか、メジャーリーグの顔になりつつある。
2020年のパドレスは、10年ぶりに勝ち越し、ワイルドカードの1番手として――勝率.617はナ・リーグ15チームのなかで2番目に高かった――14年ぶりにポストシーズンへ進んだ。今オフの大補強がなくても、2年連続ポストシーズン進出は狙えただろう。
プレラーパルーザのパート2により、パドレスがめざしているのは、さらにその上だ。パドレスのいるナ・リーグ西地区では、2013年からロサンゼルス・ドジャースが地区優勝を続けている。パドレスは昨年のワイルドカード・シリーズでセントルイス・カーディナルスを下したが、続くディビジョン・シリーズはドジャースにスウィープされた。また、パドレスは1984年と1998年にワールドシリーズへ進出しているが、1969年の創設以来、ワールドシリーズ優勝はまだ一度もない。
なお、パドレスは今シーズンだけでなく、来シーズン以降も見据えている。それについては、こちらで書いた。