政府支出総額比率で主要国軍事費の動向をながめ見る(2023年公開版)
国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費を政府支出の総額比率の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。
そのSIPRIの発表によると直近となる2022年における各国軍事費(米ドル換算)で、トップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてロシアの順となっている。
これは単純に米ドル換算して比較したもの。国によって内情が異なることから、単純な額面比較だけでは問題ではないかとの指摘もある。そこでそれぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出する。
次に示すのは2022年時点における米ドル換算による軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合。例えば日本は2.5%とあるので、国家予算全体の2.5%が軍事費にあてられていることになる。また過去値を用い、精査可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。
なおアメリカ合衆国の値は今回発表のレポートでは、次の人口比率も含め、全年分が未掲載となっている。これについてSIPRI側では「同国の数字は暦年ではなく会計年度(前年10月1日~当年9月30日)だから」と説明しているが、正直なところ意味不明ではある。よって今回は現時点で最新の公開年(2020年分)の値をそのまま適用させる。
それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値はない。経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。
一方、同じ軍事費でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。
中東諸国は概して比率が高い傾向がある。そのため額面そのものも大きく、トップテン入りしたサウジアラビアのために、グラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じている。それでもかつて示していたピーク時の4割超えと比べ、直近では27.8%にまで落ち着いている。
ロシアはいくぶん増加傾向にあったが、ここ数年では前年比で減少。その他のおおよその国では減少傾向にある。中国も総額比率では減少しているが、これは他国とは少々事情が異なり、経済成長による総支出額に軍事費の増加が追い付いていないため。また今件で公開されている軍事費に関して中国の値は内情が推し量りにくいため、推定値となっているのも要因だろう。
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