男女で寝ている時間はどちらが短いか? 睡眠時間の動向をさぐる(2024年公開版)
呼吸や食事同様、生命活動の維持には欠かせないのが睡眠。数日の徹夜もできると豪語する人もいるが、身体に大きな負荷が生じていることに変わりはなく、また眠らずに生活を維持することは不可能。人々は日々どの程度の時間を睡眠に費やしているのだろうか。今回は睡眠時間の実情を、総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(※)の結果から確認していく。
まずは一週間全体における平均的な睡眠時間(平日、土日も合わせて。平日5日分と土曜日、日曜日それぞれ1日分を合わせて平均値を計算)だが、全体では7時間54分、男性は7時間58分、女性は7時間49分。男女別では男性が9分長い。これは平日・休日を問わず、家事などで女性が早起きをするため、必然的に睡眠時間が短くなる結果。年齢階層別に見ると特に30代後半以上で女性の方が短くなり、家事による結果であることが推測できる。
そして睡眠時間そのものは年齢とともに短くなり、男性で50代後半、女性も50代後半が一番短く、それ以上では少しずつ長くなっていく。男性は70代前半、女性は70代後半となると、睡眠時間が10代前半以来の8時間を超えるようになる。お年寄りは早寝早起きとのイメージがあるが、少なくとも睡眠時間は長くなる。
前回調査の2016年分と比べると、50代までは長くなり、60代以上ではほとんど変わらないようすが確認できる。新型コロナウイルスの流行で、未成年から現役世代において睡眠時間に余裕ができるようになったのだろうか。
全体値は2016年では7時間40分、2021年では7時間54分だったため、未成年から現役世代の延びた分が全体にも大きな影響を与えたことになる。
過去からの睡眠時間推移を男女別に見ると、男女とも短くなっていたが、女性は2006年を底に延びる方向に転じているのが分かる。男女間の差異は2021年では9分だが、これは1986年分以降では最短となる。2021年で男女とも大きく延びているのは、上記でも触れている通り、新型コロナウイルスの流行で在宅勤務者が増え、外出機会そのものも減り、時間に余裕が持てるようになったからだろうか。
このままの動きが続けば、あと10年か20年で男女間の平均睡眠時間は変わらない結果が出るようになるかもしれない。元々男性よりも女性の方が長生きで、高齢者の数も多く、そして高齢者は睡眠時間が長いことから、女性全体としての平均睡眠時間が延びる傾向にあるのだろう。実際、例えば60代前半に限定して過去からの動向を確認すると、男女ともに確実に減少していた。
1日は24時間で固定のため、睡眠時間が減った分、別の行動に時間が配分されていることになる。それだけ時間の経過とともに忙しくなった、あるいは個々の人々において言葉通り「寝る間も惜しんでしたい」事柄が増えているのだろう。直近2021年でこれまでの傾向に反して延びたのは、新型コロナウイルスの流行によって、忙しさが和らぎ、その分睡眠時間に充てられたからかもしれない。
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※令和3年社会生活基本調査
国勢調査の調査区のうち、総務大臣の指定する約7600調査区に対して行われたもので、指定調査区から選定した約9万1000世帯に居住する10歳以上の世帯員約19万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2021年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2021年10月16日から10月24日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と、調査員への提出あるいはインターネットでの回答による回収方式。
調査は5年おきに実施されており、過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。
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