正社員61.9%、パート・アルバイト27.1%…日本の雇用形態の現状をさぐる(2024年公開版)
人は色々な雇用形態のもとで働いている。その現状を把握することで、社会全体の現状を知る手がかりを得られるかもしれない。今回は総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(※)の結果を用い、雇用者の実情を多方面から確認していく。
まずは雇用形態別の人口と比率。直近年となる2021年時点では正規職員・従業員(正社員)は3560.5万人、雇用されている人全体に占める比率は61.9%。
今件のようなグラフを示した時に必ず生じる誤解が、男性正社員・非正規社員のみをイメージした上で「正社員比率が低すぎる」というもの。今グラフは主婦層のパート・アルバイトまでをも合算したものだ。さらに昨今では高齢者による定年退職後の契約社員などの立場での再雇用例も増えており、これもまた正社員比率を押し下げる一因となっている。
それぞれの労働形態における、平均的な労働時間は次の通り。正社員は7時間近く、契約社員は5時間半ほど、パートは4時間近くとなる。
今件は土日も含めた上での平均なので、例えば正社員の場合は平均で1週間あたり6時間43分×7=47時間1分働いている。今件には法定労働時間(週40時間)に残業や副業も含まれているため、仮に週休2日制として概算すると、勤務日では毎日1時間ほどの残業・副業をこなしていることになる。かなりハードな状況、かもしれない(一部では「それでもまだ短い」とする意見もあるだろうが)。またパートやアルバイトの就業時間の短さや、派遣社員・契約社員の時間の長さに、それら職種への認識を改める人もいるだろう。
世間一般には「正社員の数が減り、その分、非正規社員が増えた」と言われている。それを今回の「社会生活基本調査」で確認するため、今世紀以降の調査分も合わせ、雇用形態別労働人口の変移をグラフ化する。なお2001年から2006年の調査結果は雇用形態の区切りが簡略化されている(その他非正規社員に契約社員と嘱託が含まれている)のに注意が必要。
雇用されている人全体の数は漸増。正社員は減少傾向だったが2016年以降は増加に転じている。パートとアルバイトを合わせた数は漸増だったが2021年では大きく減っている。「派遣バッシング」とそれに伴う法改正など社会情勢の変化を受け、派遣社員は2011年に大幅減となったが、2016年以降は漸増している。
2021年に限れば景況感の改善や新型コロナウイルスの流行を受け、正社員は大きく増加した一方で、非正規社員は減っている。ただし派遣社員は増えている。
雇用形態別人口の比率変化、つまり労働市場における正社員・非正社員の配分の変化に伴い、市場全体の総労働時間(≒全体の労働力)や、個々の労働形態の立場にある人たちの労働時間はどのような変化をしているのだろうか。併せて直近調査分における前回調査分からの、雇用形態別の一人・一日あたりの仕事時間の変化を確認する。
労働者の数は漸増しているが、中身としては多分に短時間労働の非正規社員の増加であるため、仕事時間総量の伸び方は穏やか。2011年と2021年では前回調査比で減少までしている。もっとも2021年における減少は、正社員の労働時間の減少によるところが大きいのだが。
そして5年前と比較した、直近年の一人あたりの一日平均労働時間だが、すべての雇用形態で減少している。雇用されている人全体の数の増加ぶりと比べ、仕事時間総量の増え方が穏やかな一因は、それぞれの雇用形態における残業が減ったことによるものだろう。
数字の上でも正社員の比率が減り、非正規社員が増えていたことは事実である。一方で、2021年では逆転の動きが生じていること、そして世間一般に言われているような状況とは雰囲気を異にする現状であることも、今件データからは見えてくる。毎年更新される「労働力調査」の結果と合わせ、正しい現状を認識したいものだ。
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※令和3年社会生活基本調査
国勢調査の調査区のうち、総務大臣の指定する約7600調査区に対して行われたもので、指定調査区から選定した約9万1000世帯に居住する10歳以上の世帯員約19万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2021年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2021年10月16日から10月24日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と、調査員への提出あるいはインターネットでの回答による回収方式。
調査は5年おきに実施されており、過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。