上位は米中日の順…主要国のGDPの実情を確認する(2021年版)
2021年の名目GDPで比較すると上位国は
国の経済力の物差しにはいくつかの指標があるが、よく使われるのがGDP(国内総生産)。その実情をIMF(国際通貨基金)の公開データベースから確認していく。
まずは用語の定義や注意事項をまとめておく。
・GDP…国内総生産:Gross Domestic Product。国内で生み出された付加価値総額。自国の外に住む自国民は対象に含まれない。今件では国単位の単純比較の際に用いられることが多い、名目GDPを用いる。
・単位…今件では基本は兆米ドル(現在水準価値で換算済み。記事中では米ドルはドルとして表記する場合もある)。単純比較をするために米ドルですべて統一されているが、厳密には各国の対米ドル為替レートも考慮する必要がある。
・順位…IMFのデータベースで取得できる最新実値は2019年分(国によってはそれ以前)。値そのものは2025年分まで取得可能だが、実値より新しい分は予想値となっている。今回は原則として2021年分の値を基に順位立てしているが、当然予想値を用いたものとなる。
・精査対象国……収録されているのは全部で194か国。ただし国民一人あたりの値では193か国。
以上の条件を基に、2021年分の名目GDP上位国、そして世界全体に占める各国の名目GDPの比率を算出したのが次のグラフ。
名目ではあるがGDPの上での最大の国家はアメリカ合衆国、次いで中国が示している。この2国だけで世界全体の4割強。次いで日本、ドイツ、フランス、イギリス、インドが続く。シェアを示すグラフでは上位10か国を具体的な名前で挙げているが、これらの国のみで世界全体の7割近くのGDPを有していることになる。
経年変化を確認する
続いて各国の経年推移を確認していく。約190か国の動向をすべてチェックするのは不毛なため、2021年時点の上位10か国に的を絞る。その上位国の動向を示したのが次のグラフ。
アメリカ合衆国が非常に大きな成長を示していること、他国が束になってもかないそうに無いことがあらためて実感できる(今件は名目GDPのため、インフレの影響を受けていることは留意すべき)。
また2008年の時点である程度金融不況の影響は出ていたものの、2009年のリーマンショックにより、それ以上の大きな減少が確認できる。もっとも金融不況からリーマンショックに至る減少は、ドイツやフランス、イタリアなど他国でも大した違いはない(日本のGDPがこの時期に落ちていないのは、円高が影響している)。
アメリカ合衆国の値が大きすぎて他国の状況がつかみづらいので、同国を除いてグラフを再構築してみたが、今度は中国の値が大きすぎて全体像の把握がしにくくなるため、さらに中国も除いた版も併記しておく。
2000年前後の景気後退期に各国とも一時期低迷しているが、それ以外は順調に成長している。しかし上記にある通り、2007年以降の金融不況、そして2008年のリーマンショックの影響は大きく、円高で値を多分に修正された日本や、金融危機の影響を押しのける程に成長を続ける新興国以外は、押しなべてGDPを落としているのが分かる。逆に日本は2012年以降の為替レートの適正化に伴い、名目GDPが落ちている。
また、中国のGDPの伸びの著しさも目立つ。特に2006年以降の伸びは異様で、2007年はドイツを、そして2010年には日本を抜き、名目GDPでは世界で2番目の大きさを持つ国となった。IMF予想では中国のその後の成長度合いはアメリカ合衆国のそれと同等、あるいはそれ以上のもので、このままの勢いが続けば(予想値の2025年以降において)あと10年足らずで米中の順位が入れ替わるのではないかとすら予見できる勢いではある。他方、インドの伸びも驚異的。
余興になるが、国全体としてではなく、各国の国民一人あたりの名目GDPを算出すると、意外な結果が出る。
トップはルクセンブルク、そしてアイルランド、スイス、ノルウェーが続く。アメリカ合衆国は5位、日本は25位、4.07万ドルほど。これは人口の大小と、その国のGDPが何によって構築されているか、さらには年齢階層別人口構成比の違いが多分に出ている。上位陣はアメリカ合衆国などのようにオールマイティな強さを持つ国もあるが、おおよそ金融立国や資源が豊富な国が占めており、人口と比べて得られる生産価値の大きさが多分に影響している。
これらIMFのデータは、当然実測値が確認されればその分正確度が増す形となる。逐次最新の値を確認し、精査が必要になることは言うまでも無い。
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