【珍事】ブラジル沖で熱帯低気圧「アカラ」発生
いまブラジル沖に、なかなかお目にかかれない珍しい嵐が発生しています。
ブラジル海軍が「アカラ(Akara)」と名付けた、中心気圧1000hPaのトロピカルストームです。トロピカルストームとは、台風と同じく、風速18m以上の熱帯の空気を持つ低気圧で、ハリケーンよりも一段階弱い嵐です。
ブラジル沿岸には大雨警報が出され、海が荒れるなどの影響が出ています。しかし幸いにして、アカラは海上を南に進むため、上陸の心配はないようです。
どれだけ珍しいのか
この嵐、どれだけ珍しいというのでしょう。
下図は過去150年間(2006年まで)のトロピカルストーム、および台風やハリケーン、サイクロンの経路図をまとめたものです。赤は猛烈な勢力を表します。
これを見るたびに、日本は恐ろしい立地にあるなと身震いするのですが、反対にブラジルの東の海域である南大西洋には嵐の痕跡がほとんどありません。
つまりこれほど発生が珍しい場所に、いまアカラがいるというわけなのです。珍事と言っても言い過ぎではないでしょう。
なぜ発生しにくいのか
前回、南大西洋でトロピカルストームが発生したのは、2019年のイバ、その前は2010年のアニータでした。
でもなぜ、南大西洋で熱帯低気圧が発生しづらいのでしょうか。
その理由は、海水温と風にあります。ブラジル沖はオーストラリア北部とほぼ同じような緯度にありますが、その温度はオーストラリア近海に比べだいぶ低くなっています。
今回アカラが発生した海域の海面水温は、例年よりも0.5度高い26度でした。これは一般的に、熱帯低気圧が発生するぎりぎりの水温と言われています。
さらに南大西洋には、ハリケーンを発達させにくい風が吹いています。風の向きや強さが高度ごとに大きく異なるため、雲が渦を巻きにくい環境なのです。
2004年の超レアハリケーン
2004年のことですが、この珍しい海域で常識を覆すハリケーンが発生したことがありました。カタリーナです。上図で南大西洋に一つだけある線が、カタリーナの経路図です。
カタリーナは”強い”台風に相当するハリケーンに発達し人々を驚かせたのち、意表をついてブラジルのサンタカタリーナ州に上陸しました。当然、寝耳に水のハリケーン上陸ですから大惨事となって、38,000軒が損壊、3人が死亡、200人弱がケガをしました。
この事例を受け、南大西洋のハリケーン研究が急ピッチで進められるようになったのです。
ここ40年の変化
南大西洋の熱帯低気圧に温暖化の影響はあるのでしょうか。
データが乏しいこともあって、一致した結論はないようですが、近年この海域で熱帯低気圧が増えているというデータもあります。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)が、1980年からの40年分のデータを分析したところ、南大西洋で微増ながら熱帯低気圧が増えていることが分かりました。増加の一因には、海水温の上昇があるようです。
海水温の上昇は大気を温め、陸上に住む我々に多大な影響を与えます。
過去最高水温に達した海洋
暫定データですが、今年2月2日、世界の海面水温が観測史上最高になったようです。
元はと言えば人為的な影響もあって海水温が上昇したのでしょうが、この異常な海水温の高さを見ると、海からの逆襲が始まった、そんな気持ちがしてくるのです。
少々の大気の温度なら、もしかすると下げる方法があるかもしれません。ただし、果てしない量の海水を冷やすことは可能なのでしょうか。
母なる海の激高に、恐ろしさを感じています。