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2畳部屋とキムチご飯から始まった 単身でK-POP界に挑んだケンタが見つけた「相棒」

桑畑優香ライター・翻訳家
ボーカル担当のケンタ(右)とラップ&ボーカル担当のサンギュン

「例えれば、磁石のS極とN極。真逆の性格だけど、引かれあいひとつになる」

そう語るのはケンタとサンギュン。TWICEやIZ*ONEなど日本人メンバーがいるK-POPグループが増えるK-POP界に、日本人と韓国人のふたりで挑むデュオ、JBJ95のメンバーだ。

K-POPにハマり韓国に渡った日本人ケンタと、幼い頃からアーティストを目指していたサンギュンが語る、「僕らが同じ夢を追う理由」。

(2019年3月にリリースしたセカンドミニアルバム「AWAKE」は日本のiTunes K-POP アルバム部門とPOPアルバム部門で1位、総合15位を記録)

「よろしくお願いします!」と明るく日本語であいさつするケンタとサンギュン。グループ名の“JBJ95”の数字が示すのは、1995年生まれの同級生であるということ。だが、日本人のケンタは群馬県出身、韓国人のサンギュンは光州広域市出身。二人は生まれた国だけでなく、性格も芸能人になる道のりもまったく異なると明かす。

――お互いの性格を何かに例えると?

ケンタ:真逆です。例えれば、磁石のS極とN極のような。お互いがいるから一つになり、よいエネルギーを出している。反対だけど、出会うとひとつになる。

サンギュン:うーん、種類が異なる犬かな。ケンタは柴犬、僕はシベリアンハスキー(笑)。違う種類だけど道で出会うと仲良く遊ぶ。そんな様子を目に浮かべました。

ケンタ:僕、柴犬に似てるってよく言われるんです(笑)

なりきりダンスからK-POPアイドルへ

――ケンタさんが、最初に韓国に関心を持つようになったきっかけは何ですか。

ケンタ:高校生の時、偶然YouTubeでK‐POPの動画を見たんです。KARAさんやTEENTOPさんの映像でした。カッコよさにハマり、その時から「歌手になりたい」と思うようになりました。

そして、ファンとして何度も韓国に行くようになりました。ひとりで音楽のテレビ番組を観に行ったり。そうするうちにだんだん夢になって、その夢が大きくなっていったんです。

――高校生の時に、一人で韓国に。

ケンタ:K‐POPが好きで韓国に行く男子は、当時周りにいなかったんです。友達に隠していたわけではありません。でも、親には秘密にしていました。アルバイトしたお金で、学校が休みの時に一週間ぐらい。「友達と遊びに行ってくる」と言って、ソウルに行っていました(笑)。本当に好きだったんです。そのうちに、自分もやってみたいと、K-POPのカバーダンスを始めたんです。

――K-POPカバーダンスコンテスト「DREAM ON!」(参考記事「BTSそっくり女子も! K-POPカバーダンスの甲子園「DREAM ON!」に潜入してみた」)に何度も出場していたそうですね。

ケンタ:はい。カバーダンスのグループでオリジナル曲を作って、地下アイドルのような活動をしていました。2年間活動していたのですが、20代になるときに、「このままではいけない。最後に何かに挑戦したい」と考えるようになったんです。

そんな中、韓国でイベントをする機会がありました。韓国で歌手デビューした日本人の方にお会いすることができたので、悩みを打ち明けたところ、「ソウルに住んでみたら」と。それを聞いて「韓国に行かなきゃ」と思い、お金と勇気だけ持って、単身韓国に渡りました。

2015年12月末、ソウルへ。語学学校に通いながら、芸能事務所のオーディションを受ける日々。結果、現在所属する芸能事務所STAR ROAD Entertainment.に合格。練習生としてレッスンを受ける日々が続いた。住んでいたのは、考試院という約2畳の簡易宿泊施設だった。

ケンタ:練習生の時期、一番つらかったのは、お金がなかったこと。本当に食べるものもなく、考試院で無料で提供されるご飯とキムチをずっと食べていたんです。一日中レッスンしなければならないのに、一週間ずっとご飯とキムチだけを食べていると、精神的にも体力的にも苦しくなる。

「ここでやっていくのが正解なのだろうか」って思うようになりました。「もうやめたほうがいい」という言葉が頭の中に何度も浮かび、一度日本に戻ったんです。でも、あきらめきれず、「最後に3か月だけ努力してダメだったらやめよう」と再びソウルに行きました。

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自ら進んで茨の道を歩んできたケンタ。一方、サンギュンはとんとん拍子で芸能事務所の練習生に。2013年、ToppDogg(現 XEON-T)というグループでデビューする。

サンギュン:親戚のおじさんや友達が歌が好きで、幼い頃から周りの子たちに比べてミュージックビデオや音楽に接する機会が多かったように思います。だから自然に芸能界に興味を持つようになりました。韓国最大規模のK-POPイベント「ドリームコンサート」に行く機会があり、東方神起さんやBIGBANGさんを目の前で見て、こんなに大きな歓声の中でパフォーマンスをするなんてすごいなと憧れるようになりました。

――芸能界に入ったきっかけは?

サンギュン:何度かスカウトされ、事務所のオーディションに合格しました。ToppDoggのメンバーとしてデビューしたのですが、しばらく活動の空白期が続いていたんです。その時には一人でラッパーのサバイバルオーディション番組「SHOW ME THE MONEY」にも挑戦したりしていました。

ラストチャンスを賭けたオーディション番組

現実の壁にぶち当たったふたり。そんな中、韓国Mnetがオーディション番組「PRODUCE 101 (Season 2)」の挑戦者を募集していることを知る。様々な事務所に所属する101人の練習生が歌やダンスのミッションをこなし、最終的に視聴者投票で11人が選ばれるサバイバル番組。「最後のチャンス。絶対に出なきゃと思った」(ケンタ)、「表舞台に出る機会を自ら作ろうと思った」(サンギュン)。それぞれの思いを胸に2017年4月、「PRODUCE 101 (Season 2)」に挑んだ。

――「PRODUCE 101」で出会ったときのお互いの印象について。

ケンタ:正直、特に印象はなかったんです。あまりにも参加者が多かったのと、常に自分のことに精いっぱいで、他の人に関心を持つ余裕や時間はありませんでした。だから、「アンニョン!」ってあいさつを交わすぐらいでした。

サンギュン: ケンタを初めて見たときは、「お、日本人だ!」と思いました(笑)。「きっと大変だろうな」と。でもそれ以上の関心は払っていませんでした。自分がこの番組に出た理由は上に登るためだから、前だけを見て目標に集中していました。ただ、印象も良く、明るい子だな、日本から来て外国で一人で大変だろうなと思っていました。

(「PRODUCE 101」のポジション評価でBTSの「Spring Day」を歌ったケンタ(上)とラップを披露したサンギュン)

最終的な結果は、ケンタが24位でサンギュンは26位。デビューまであと一歩のランキングで脱落となった。

ケンタ:後悔はなかったですね。後悔しないようにとやっていたから。会社で最初に目標を決めて、70位を目指そうと言っていたんです。でも、最初の順位発表の時に21位になって、事務所も僕も驚きました。その時から目標を大きく持とう、欲張っていこうと思ったんです。だから、24位で落ちたときも、すっきりした気分でしたね。できるだけのことはやった、と。全力を尽くして落ちたのだから、これが僕の結果だと受け止めました。

デビューできず、すべてが白紙に戻った――。そう思ったとき、朗報が舞い込む。「PRODUCE 101」で惜しくも落選した練習生を、ファンが架空のグループJBJ (Just Be Joyfulの略。本当に望ましい組み合わせ)と名付け、結成をSNSで熱望したのだ。そんなファンの思いを受け、練習生たちの所属事務所が話し合い、実際にデビューさせることに決定。2017年10月、ケンタとサンギュンは6人組グループJBJのメンバーとしてデビューした。

ゲームが決めた運命の出会い

――JBJ時代、ふたりはルームメイトだったんですよね。

ケンタ:偶然の運命です(笑)。部屋が3つあって、ルームメイトをゲームで決めたんです。ひとりが先に部屋に入り、同じ部屋を選んだもうひとりがルームメイトになるって。僕がドアを開けた瞬間、その部屋にいたのがサンギュンだったんです。

――一緒に住んでいかがでしたか。

サンギュン:とてもよかったです(笑)。

ケンタ:それはよかった(笑)。ちょっとこういう話をすると申し訳ないんですけど、僕はきれい好きなんです。でも、サンギュンはそうじゃない(笑)。ルームメイトだったら、相手に合わせないとダメだと思うんですよね。だから諦めました(笑)。僕の周りをきれいにしても……(笑)。今は同じマンション部屋でそれぞれ個室があるんですけど、最近は「片づけて」と言うようになりました。

サンギュン:(笑)

――所属事務所を超えたメンバーで結成されたJBJは、最初から7か月間の期限付きでした。その後2人で活動をするようになったきっかけは。

サンギュン:期限があるグループだと知っていたから、JBJの活動が終わりに近づいたとき、ふたりで一緒になにかできたらいいねと話していたんです。所属事務所からもOKをもらい、2018年10月にJBJ95を結成しました。

――2人で活動するグループは多くないですよね。さらに日韓での2人組はこれまでに例がないと言えます。

ケンタ:だからこそ特別で、うまくいくと思いました。最近は大人数のグループが多い中、僕らがふたりだけでデビューすれば、別の道を歩くことができるんじゃないかなって。そうすれば、成長や成功を得ることができるのでは、とプラスに考えたんです。

(つづく)

■JBJ95

2018年10月30日「HOME」でデビュー。2019年6月にJAPAN OFFICIAL FANCUB「JJAKKUNG」(チャックン)がオープン。「JBJ95 1st ASIA FAN MEETING TOUR IN JAPAN」をNHK大阪城ホール(2019.6.30 )と府中の森芸術劇場 どりーむホール(2019.7.2 )で開催。8月10日NEXTGENERATION LIVE(豊洲PIT)に出演。

ケンタ(KENTA)

誕生日:1995.01.10

身長:173cm

メインボーカル、ダンサー

国籍:日本

特技:振り付け、絵を描くこと、ラテアート

サンギュン(SANGGYUN)

誕生日:1995.05.23

身長:178cm

ラッパー、俳優

国籍:大韓民国

特技:ラップ、言葉遊び

■ファンクラブ情報

JBJ95 JAPAN OFFICIAL FANCLUB「JJAKKUNG」(チャックン)

<オフィシャルサイト>URL:https://jbj95fc.com/

<モバイルサイト>URL:https://jbj95mobilefc.com/

ライター・翻訳家

94年『101回目のプロポーズ』韓国版を見て似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画レビューやインタビューを「現代ビジネス」「AERA」「ユリイカ」「Rolling Stone Japan」などに寄稿。共著『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)、訳書『韓国映画100選』(クオン)『BTSを読む』(柏書房)『BTSとARMY』(イースト・プレス)『BEYOND THE STORY:10-YEAR RECORD OF BTS』(新潮社)他。yukuwahata@gmail.com

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