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中国で流行の「ヒトメタニューモウイルス感染症」とは。過度に注意する必要はないが感染症対策には留意を #専門家のまとめ

石田雅彦科学ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 中国で感染者が増えているヒトメタニューモウイルス感染症が話題ですが、この病気と留意点などについて考えてみます。ヒトメタニューモウイルス感染症は、咳や発熱などの風邪の症状が特徴で、乳幼児や高齢者、基礎疾患がある人などがかかると重症化することがある感染症の一種です。耳なじみのない病気ですが、ウイルス自体は以前からあった風邪を引き起こす病原体であり、中国から新たに出現した感染症でもなければ現時点で特に大流行しているわけでもなさそうです。

ココがポイント

かぜやインフルエンザと区別が付きにくく、高齢者や基礎疾患を持つ人は重症化の恐れもある
出典:時事ドットコム 2025/1/8(水)

軽症ですむ人が多いはずなので過度に心配する必要はありません
出典:NHK 2025/1/8(水)

気がかりではあるが、増加している有病率は、冬に見られる通常の季節的な増加である可能性が高い
出典:BBCニュース 2025/1/9(木)

エキスパートの補足・見解

 ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は2001年に呼吸器感染症を引き起こすウイルスとして発見されましたが、それ以前もずっとヒトに風邪症状を引き起こす病原体として存在していたものです。

 ヒトメタニューモウイルス感染症は、成人や健康な人などが感染しても風邪症状ですみ、数日から一週間程度、栄養を摂って安静にしていれば自然に治る病気です。

 ただ、乳幼児や小児、高齢者、基礎疾患のある人が感染すると、気管支炎や肺炎などの重篤な呼吸器感染症につながることがあり、高齢者施設で集団感染の事例もあるので、そうした人へ感染させないように注意が必要です。

 ヒトメタニューモウイルス感染症は欧米で冬季に患者の増加が示され、中国における流行の規模も今のところ例年と同じ程度とされ、過度に注意する必要はなさそうです。

 ヒトメタニューモウイルスはエンベロープという膜を持っているため、アルコールによる減菌や石鹸による手洗いなどが有効です。

 こまめな手洗いとうがい、公共交通機関や人混みの中でのマスクの着用、定期的な換気など、ヒトメタニューモウイルス感染症に対しても同じような感染拡大防止対策が効果的とされています。

科学ジャーナリスト

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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