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過去10年にチーム最多の93勝を挙げた先発投手が、ローテーションから外されてブルペンへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
カイル・ヘンドリクス(シカゴ・カブス)May 17, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 カイル・ヘンドリクス(シカゴ・カブス)は、ローテーションから外され、ブルペンで登板を待つ。ジ・アスレティックのパトリック・ムーニーやESPNのジェシー・ロジャースによると、クレイグ・カウンセル監督がそう発表したという。

 ヘンドリクスは、今シーズンがメジャーリーグ11年目。年齢は34歳だ。2012年の夏に、ライアン・デンプスターの交換要員として、クリスチャン・ビヤヌエバとともに、テキサス・レンジャーズからカブスへ移った。その後は、ずっとカブスに在籍している。

 2014~23年の10シーズンに記録した1449.2イニングは、このスパンで12番目に多く、防御率3.48も、1000イニング以上の60人中12位に位置する。93勝は、このスパンの14位タイ。1チームで投げ続けた投手に限ると、クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)の133勝とアダム・ウェインライトの101勝に次ぐ。ウェインライトは、昨シーズンの終了後に引退するまで、セントルイス・カーディナルスで投げた。

 カブスが108年ぶりにワールドシリーズを制した2016年に、ヘンドリクスは、両リーグ・ベストの防御率2.13を記録した。この年のポストシーズンは、防御率1.42。20002020~22年は、3シーズン続けて開幕投手を務めた。

 2021年以降は、2021年が181.0イニングで防御率4.77、2022年は84.1イニングで防御率4.80。昨シーズンは137.0イニングで防御率3.74を記録したものの、今シーズンは7登板の30.2イニングで自責点36。防御率は10.57となっている。

 今シーズンの与四球率3.23は、サンプル数が少ないだけでなく、数値としても一般的には悪くないが、これまで、ヘンドリクスのシーズン与四球率は2.60を超えたことがない。過去10シーズンのトータル与四球率は1.99だ。ヘンドリクスは、球威で勝負する投手ではない。スタットキャストによると、シンカーの平均球速は、どのシーズンも90マイルを下回っている。奪三振率8.40以上のシーズンは皆無だ。

 代わってローテーションに加わる投手は、まだ確定していない。ヘンドリクスが外れる前の時点では、5月22日~26日の5試合は、ジャスティン・スティール、ヘンドリクス、今永昇太ジェイムソン・タイオンハビア・アサッドの順に登板する予定だった。23日は、ブルペン・ゲームとするようだ。

 ヘンドリクスの通算254登板中、リリーフ登板は、2016年7月6日の1度きり。ポストシーズンを含めても、2度しかない。ここからは、複数のイニングを投げるミドル・リリーバーとして起用され、復調をアピールすることができれば――代わりにローテーション入りする投手の投球内容にもよるが――ローテーションに戻るのではないかと思われる。

 ただ、ローテーションに復帰できたとしても、カブスで投げるのは、今シーズン限りの可能性が高そうだ。今オフ、ヘンドリクスは、FAになる。昨年11月、カブスは、4年5550万ドル(2020~23年)の延長契約についていた、1年1650万ドル(2024年)の球団オプションを行使した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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