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【吉沢亮主演】渋沢栄一に学ぶ!”青天を衝く”ほど高い「志」の見つけ方

末永雄大アクシス株式会社代表取締役兼キャリアコンサルタント
(写真:つのだよしお/アフロ)

こんにちは。アクシス株式会社 代表・転職エージェントの末永です。

中途の人材採用支援をしつつ、月20万人以上の読者を持つ転職エージェントが語る「すべらない転職」という転職メディアを運営している中で、Yahooニュース上では2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。

9日、2021年大河ドラマの発表が行われましたね。朝ドラ「なつぞら」の”天陽くんロス”も叫ばれる中、吉沢亮さん主演で喜びの方も多いのではないでしょうか。さらに吉沢さんが演じるのは新1万円の顔としても注目される「渋沢栄一」です。

2021年大河ドラマの制作・主演発表会見が9日、東京都内のNHKで行なわれ、”新1万円札の顔”としても注目される渋沢栄一を描く「青天を衝け」に決定したことが発表された。

出典:吉沢亮、2021年大河「青天を衝け」に主演決定 「発表までビクビクしていました」

渋沢栄一(1840~1931年)は今年4月、2024年度の上期に福沢諭吉から刷新される新一万円札の肖像になることが発表されたばかり。幕臣から明治政府に仕官後に民間人となり、日本初の銀行など約500の企業設立や経営に関わった人物だ。

民間外交にも力を注ぎ、ノーベル平和賞候補に2度選ばれたことも。人への誠意を大切に挑戦し続けた人生が青春そのものだったとして、「青天を衝け」のタイトルに決まった。菓子浩チーフプロデューサー(CP)は「渋沢は以前から大河主役の候補の1人だったが、新一万円札の発表が後押ししてくれた」と説明。

出典:吉沢亮、21年大河で主演決定!“日本資本主義の父”渋沢栄一が主役

私自身、小規模企業の一経営者として、「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一が大河ドラマの主役となったことは大変興味深いです。

今回は、渋沢氏の生涯をヒントに、渋沢氏から学ぶビジネスパーソンに必要な”青天を衝く”かのように高い「志」の見つけ方という論点で話をしていきたいと思います。

渋沢氏の生涯

渋沢氏といえば、「500以上の企業・600以上の社会公共事業の設立や経営に携わった人物」として非常に有名です。しかし、渋沢氏の活躍はなんとそれだけではありません。大蔵省に勤め近代化を推し進め、現代の日本経済の土台固めを行ってました。

そんな渋沢氏は、どんな生涯を送ってきたのでしょうか。ここでざっくり、渋沢氏の人生を振り返ってみましょう。

幕末期、埼玉県深谷市にある百姓の家に生まれ、実業である藍玉の製造・販売や養蚕を手伝い、商人としての感覚も身につけてきました。

裕福な農家だったこともあり江戸の私塾に通っていた時、官尊民卑がはびこる幕府の身分制度に怒りを抱き、反幕の志士を目指すも、当時一橋家であった、後の徳川慶喜に仕える機会に出会いました。

そのまま、心ならずも幕臣となるとパリ万博の随員としてフランスに渡り、「資本主義」と、そこから生まれた「官」と「民」が平等な社会に衝撃を受けます。

そんな折、大政奉還の知らせが届き無念にも帰国。

その後は日本初の株式会社を設立したほか、郵便制度や廃藩置県などの日本の根幹となる制度の作成や富岡製糸場の設立を行い政府での活躍しました。

33歳で引退後は民間人として日本初の銀行や現在の王子製紙など、約500の企業や約600の社会公共事業設立や経営に携わり日本の経済成長に大きく貢献。

世の中に必要なものを次々と生み出し、近代日本の礎を築き上げたのです。

1840(天保11)年、武蔵国榛沢はんざわ郡血洗島ちあらいじま村(現:埼玉県深谷市)の百姓の家に生まれた。幼いころから家業である藍玉の製造・販売や養蚕を手伝い、商才を磨く。

農民から攘夷の志士を目指し、一橋家の家臣から幕臣、明治新政府への仕官を経て、実業家に転身。幕臣として渡ったパリ時代に、株式会社(後に合本組織と命名)やバンクの仕組みを学び、帰国後に合本組織「商法会所」を立ち上げ、日本初の銀行「第一国立銀行」の設立に尽力した。

生涯で約500の企業の育成に関わり、女子教育の普及など約600もの社会公共事業に貢献。生涯を通じて論語を学んだ栄一は、「論語と算盤そろばん」を説き、“道徳と経済を調和させるべき”という経済人の道を指南した。

また、徳川慶喜には生涯忠義を尽くし、晩年には伝記を編纂さんするなど慶喜の名誉回復に務めた。

享年91。

出典:作・大森美香、主演・吉沢 亮 日本資本主義の父・渋沢栄一を描く!

渋沢氏の「青天を衝く」ほど高い志

渋沢氏は、ありとあらゆる日本の経済の土台を築き上げたんですね。私は、渋沢氏ほどに様々な偉業を残すためには、「青天を衝く」ほどの高い志を持つことが最重要であると思います。

史実には様々な解釈が想定されますし大河ドラマで今後鮮明に描かれていくと思いますが、私としては渋沢氏の志は「官民平等な日本をつくる」ことではないかと考察しています。

江戸の私塾に通っていた時代に抱いた、不平等への強い怒りから湧き出た志があったからこそ、「官」としての日本の制度づくりだけでなく「民」としての日本の実業界の振興のために活躍できたのではないでしょうか。

というのも、渋沢氏が日本に持ち込み次々に広めた株式会社自体が、官民平等の世界を実現するものだからです。株式会社は、株式を経営者以外にも配当し、利益を得たら他の株主にも恩恵を与えるという仕組みになっています。渋沢氏のキャリアは、あらゆることに手を出して一貫していないように見えますが、根本には「官民平等な日本をつくる」という志が一貫していたということが見てとれます。

そもそも「志」とは何か?

多くの方にとって普段あまり使う機会は少ないと思うのですが、志とはなんでしょうか?

コトバンクによると、「ある方向を目指す気持ち、心に思い決めた目的や目標」のことと記載があります。

ある方向を目ざす気持ち。心に思い決めた目的や目標。「志を遂げる」「事、志と異なる」「志を同じくする」「青雲の志を抱く」

出典:コトバンク「志」

また、私の一意見にはなるのですが、志は、それを実現することで「自分のため」にも「自分以外の人のため」にもなることが望ましいと考えています。

というのも、今回ビジネスパーソンが持つべき「志」というテーマであるという観点から見ても、ビジネスは誰か人のためになってこそお金がもらえるという仕組みであるはずだからです。

例えば、手前味噌にはなりますが、私自身の志は、弊社のビジョンであるITとヒトのチカラで働くすべての人を幸せにするというものなのですが、これは世の中の働く人、ひいては彼らを取り巻く家族や友人にも幸せを波及させるという点からみても、私以外の多くの人のためになると言えると考えています。

具体的にイメージしやすいのは、就職活動や転職活動で聞いた事がある人もいるかもしれませんが、私が在籍していたリクルート社も人事育成のフレームワークとして活用している「will・can・must」があります。

will:やりたいこと、意思、希望

can:できること、能力・スキル、才能、実績

must:やらねばならないこと、求められていること、期待・責任

出典:20代のビジネスパーソンは、転職でやりたい事を探すより、できる事を増やした方がいい

この「will」が多くのビジネスパーソンにとっては志の種にあたると思います。

できることの少ない20代には、目の前のやるべきこと「must」を果たしながら、できること「can」を広げていくことの方が優先順位はもちろん高いと思います。

しかし、渋沢氏ほどの偉業を成し遂げるためには、「must」「can」に加え、高い志としての「will」が必要になります。

怒り・疑問を感じた原体験を言語化する

では、多くのビジネスパーソンが、渋沢氏のように高い「志」や「will」を見つけるためにはどうしたらいいのでしょうか。

私としては、具体的に2つのことが必要であると感じています。

一つ目が、「怒り・疑問を感じた原体験を言語化する」ということです。

自分自身の志を見つけるにはどうしたらいいのか考えたとき、とても抽象的でわかりにくいですよね。

これは一つの方法ですが、「怒り・疑問を感じた原体験を言語化する」ことが有効だと考えています。

というのも、自分自身の強烈な原体験というのは、自身の価値観を形成する軸であるからです。

自身の価値観を形作ったきっかけとなる出来事や世の中への疑問を思い出したら、あなたが社会に新しい価値を生み出す一歩に繋がるのではないでしょうか。

渋沢氏の場合は、「身分制度への不平等さ」への怒りが「官民平等のより良い日本を作る」という志に繋がっていますね。

このように、過去に抱いた怒りや疑問を言語化することで、志の発見に繋がり、偉業を成し遂げる力になるのではないかと考えています。

過去に強烈な怒りや疑問を感じた経験ないか、具体的には「自分史」や「モチベーショングラフ」を書きながら振り返ってみましょう。

志高く生きる人の考えに触れる

二つ目が、「志高く生きる人の考えに触れる」ということです。

志高く生きる人の具体例でいうと、ビジョンを持って独立した経営者や、イメージしやすいところでいくと、西野亮廣さんのようなyoutuberが想像しやすいと思います。

今は本やSNSなどだけでなく、彼らと実際に交流できるイベントやオンラインサロンもありますね。これらを活用し、志高い人の意見に触れていくと、連鎖反応的に自分自身の志も磨かれていくのではないかと考えています。

渋沢氏は、徳川慶喜や大隈重信などの視座の高い人と共に仕事をしただけでなく、幼少期から孔子の教えである「論語」を大切にし、「人格を磨く」ことに重きを置いていました。

「論語」には「朝に道を聞けば、夕に死すとも可なり」「人能く道を弘む」という言葉がありますが、ここでは「道はただ漫然と歩むのではなく、志を持って歩まなければならない」という孔子の教えが刻まれています。

渋沢氏は、志高く生きた孔子の考えに触れることで、過去の怒りから生まれた志が洗練させていったのではないでしょうか。

是非この機会に、ご自身の「志」と向き合ってみてください。

アクシス株式会社代表取締役兼キャリアコンサルタント

青山学院大学法学部卒。新卒でリクルートキャリア(旧リクルートエージェント)入社。 リクルーティングアドバイザーとして様々な業界・企業の採用支援に携わる。東京市場開発部・京都支社にて事業部MVP/西日本エリアマーケットMVP等6回受賞。その後サイバーエージェントにてアカウントプランナーとして最大手クライアントを担当し、 インターネットを活用した集客支援を行う。2011年にヘッドハンター・キャリアコンサルタントとして独立。2012年アクシス株式会社を設立。代表取締役に就任。キャリアコンサルタントとして転職支援を行いながら、インターネットビジネスの事業開発や社外での講演活動等、多岐にわたり活躍する。

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