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グアルディオラが投じた「281億円」の行方は?シティの好調ぶりとCB補強の成果。

森田泰史スポーツライター
勝利を喜ぶグアルディオラ監督(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

マンチェスター・シティが、好調だ。

プレミアリーグで、首位を走っている。チャンピオンズリーグでは、決勝トーナメント1回戦でボルシア・メンヒェングラッドバッハと対戦する。「死の組」と称されたグループBを2位通過したボルシアMGだが、シティ優位というのが大方の予想だ。

リヴァプールに勝利したシティ
リヴァプールに勝利したシティ写真:代表撮影/ロイター/アフロ

グアルディオラ監督は2020-21シーズンも新たな試みを続けている。直近の例はジョアン・カンセロの新たなポジションだろう。

また、近年シティではロドリ・エルナンデスやフェルナンジーニョの偽センターバックを使ってきた。「センターバックが一人しかいない状況は、私にとって、監督として大きな挑戦だ。人々は私のチームのスピリットとコミットメントを知らない。だが私は彼らを信頼している。問題を解決して前進できると信じている」とは負傷者続出の状況で彼らのセンターバック起用を決めた時のグアルディオラ監督の言葉だ。

「フェルナンジーニョが(負傷から)復帰する。カンテラの選手もいる。こういうシチュエーションなので、仕方がない。シーズン中には起こり得る。それに不満を言うことはない。センターバックが起用できないなら、その中で11人のスタメンを決めるしかない。自分自身にチャレンジして、チームのための解決策を見つける。私はそういうのが好きだ。選手たちも同じ気持ちだろう」

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

一方で、グアルディオラ監督は最終ラインの整備に注力してきた。

シティは今夏、移籍金固定額6800万ユーロ(約81億円)+ボーナス360万ユーロ(約4億円)でルベン・ディアスをベンフィカから獲得した。

ディフェンスの選手としてクラブレコードの移籍金だった。高い買い物だったわけだが、グアルディオラ監督は「信じられないくらい素晴らしいプレーヤーだ」とR・ディアスを称賛している。

「選手を獲得する時、もちろんチームを助けてくれるだろうと考える。だが問題はどれくらい助けになるかだ。ルベンのプレー理解度は秀逸で、彼のフィジカルとメンタルのキャパシティーは我々を非常に驚かせている」

「ルベンは毎朝、ジムでトレーニングしている。完璧に自分のプランをこなしている。24時間を自分の職業に捧げているんだ。3日おきに試合があってもプレーできる。リカバリーが非常に早い。彼のような存在はチームの重要性に直接的にリンクする。23歳と若く、これから5シーズンから7シーズンはシティで活躍してくれるだろう。そういう補強は決して簡単ではない」

ルベン・ディアス(右)の存在は大きい
ルベン・ディアス(右)の存在は大きい写真:代表撮影/ロイター/アフロ

グアルディオラ監督が就任した2016年以降、シティは2億3430万ユーロ(約281億円)をセンターバックの補強に費やしている。R・ディアス(移籍金6800万ユーロ)、ナタン・アケ(4530万ユーロ)、ジョン・ストーンズ(5600万ユーロ)、アイメリック・ラポルテ(契約解除金6500万ユーロ)がシティに加入した。

エリアカン・マンガラ(2014年夏加入/移籍金5400万ユーロ)、ニコラス・オタメンディ(2015年夏加入/4500万ユーロ)といった高額で獲得した選手がいたにもかかわらず、グアルディオラ監督はセンターバックの補強に腐心した。

また、サイドバックの発掘には、およそ1億9000万ユーロ(約229億円)を投じている。

2016-17シーズンを最後にパブロ・サバレタ、バッカリ・サニャ、ガエル・クリシー、アレクサンドル・コラロフらがシティを去った。シティは彼らの穴を埋めるようにカンセロに移籍金3500万ユーロ(約40億円)、ダニーロに移籍金3000万ユーロ(約36億円)、カイル・ウォーカーに移籍金5300万ユーロ(約63億円)、バンジャマン・メンディに移籍金5750万ユーロ(約69億円)、アンヘリーニョ獲得に移籍金1200万ユーロ(約14億円)、オレクサンドル・ジンチェンコ獲得に移籍金200万ユーロ(約2億円)を費やした。

筆者作成
筆者作成

GKエデルソン・モラ―レス(2017年夏加入/移籍金4000万ユーロ)を含めると、守備陣の補強に4億6000万ユーロ(約557億円)程度を投じている計算だ。

「我々に対する批判は理解している。だが優秀な選手は高いものだ。3億ユーロを1人や2人の選手に投じるチームもある。我々はその額で6選手を獲得している。昨シーズン、我々は30歳以上の選手が7人退団した。出費は必要だった。我々が一人の選手の獲得に1億ユーロ以上を投じる日が来るかもしれない。だが、現時点ではそうなっていない」

2018年1月の移籍市場におけるラポルテ獲得時、グアルディオラ監督はそんなコメントを残している。

現役時代のグアルディオラ(中央)
現役時代のグアルディオラ(中央)写真:ロイター/アフロ

グアルディオラは、ヨハン・クライフから強い影響を受けている指揮官だ。

「エル・ドリームチーム」と称されたバルセロナを率いていたのがクライフだ。そこでグアルディオラに与えられたポジションはアンカーだった。

【3-4-3】のシステムで攻撃的なフットボールを展開して、スペインと欧州を席巻した。リーガエスパニョーラ4連覇とチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)制覇は今もなおバルセロニスタの記憶に刻まれている。

「クライフは『3-4-3は出発点に過ぎない。アルファベットのAのようなものだ』とよく言っていた。対戦相手の状況や試合の展開で戦術をBやCやDに変える必要があった」とはGKを務めたアンドニ・スビサレッタの弁だ。

その薫陶を受けているグアルディオラが、システム論に囚われるとは考え難い。だが確かなのは、彼のフットボールが後方から構築されていくということだ。そして、着実に築き上げられたチームはタイトル獲得に向けて邁進している。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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