LEDを知り尽くした男の次なる手
先日ノーベル賞受賞者の米カリフォルニア大学教授中村修二氏が東京・板橋区に自身が創業者の一人であるベンチャー企業SORAA(ソラー)の日本支社を開設した。板橋区は「光学」をテーマとして産業都市を目指しており、今回、板橋区の後援を得て、日本支社を開設することとなった。
SORAAはLEDを製造・販売する会社で、中村教授を中心に2008年に創業された。SORAAが販売するLEDランプは、紫色LEDを使用していることが特徴になっている。この紫色LEDは、GaN(窒化ガリウム)基板上に成長されたもので、GaN on GaN LEDと呼ばれ、SORAAが約400件の関連特許を持つ。
今回SORAAが製造・販売するLEDランプは、この紫色LEDを使用した白色LEDランプで、より太陽光に近いものだ。現在主流のLEDランプは、光の全スペクトラムのうち、赤、紫、シアン色のスペクトルが極端に弱く、この光で照らされた衣料品や料理などは自然な色合いが表現できないことが課題だった。その課題を克服したのがSORAAのLEDランプというわけだ。
また、このLEDランプは、有害な紫外線も含まず、かつブルーライトが軽減されている。ブルーライトとは、波長が380〜500nm(ナノメートル)の青色光のことで、波長が短く、強いエネルギーを持っている。パソコンやスマートフォンに使用されているLEDディスプレイが発する、このブルーライトが、角膜や水晶体で吸収されず網膜まで到達することで、我々の身体に大きな負担をかけているのが現状だ。いまや長期間パソコンで作業するデスクワーカーはブルーライト軽減メガネが外せない。
しかしSORAAのLEDライトをバックライトに使用すれば目に優しいLEDディスプレイが完成する。ディスプレイ用のLEDライトの開発はこれからだ、とSORAAジョージ・ストリンガー副社長は述べたが、その開発が待ち遠しい。
今回、SORAAは、LED照明の販売で大きな国内シェアをもつアイリスオーヤマと提携し、日本国内での販売を展開する。まずは、アパレルショップやホテルなど専門店に展開するということだが、家庭用照明にも展開することになれば、現在のLEDライトがSORAA型LEDライトに入れ替わっていく可能性も大きい。
ちなみにSORAAの意味を中村教授に伺うと「空」に由来するとのこと。その次には「海」「陸」があるとも言う。米軍との取り引きのためアメリカ国籍を取得したという中村教授も心は日本にあるようだ。紫LEDをもとに新型レーザーを含めた新たな光源を武器に果敢なる挑戦を続ける中村教授の今後に期待したい。