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弁護士の選び方(専門分野やメディア実績に惑わされるな!?)-弁護士が解説

福永活也福永法律事務所 代表弁護士
(ペイレスイメージズ/アフロ)

弁護士の福永です。日々いろんな人から弁護士の選び方についての相談を受けることがあるので、僕なりの解説を述べてみます。

なお、本稿は、企業法務として専門領域の案件を弁護士に依頼するような場合を想定しておらず、一般的な個人の事件について、弁護士に依頼しようという場合の弁護士の選び方についての解説になります。

弁護士の専門分野について参考にすべきか?

多くの相談者から最も多く質問があるのは、弁護士の専門分野は何か?という質問です。

離婚事件の相談をしたい場合には、離婚専門とか離婚事件に強い弁護士に相談したいのだと思います。

しかし、この質問はあまり意味がないばかりか、弁護士を選ぶ手がかりを得るという目的からすると不要な情報であることも多いと思っています。

なぜなら、ほぼすべての弁護士には、明確な専門分野なんてないからです。

業務内容について、わざわざ特定の分野に限る必要もないので、基本的にどんな仕事でも扱うことは可能ですし、実際に依頼さえあれば扱う弁護士がほとんどです。

それに、そもそも何をもって専門性を有していると言えるかの客観的な基準がありません。

依頼を欲しがっている弁護士であれば、多少、扱ったことがない分野であっても、専門の一つですと言ってしまうことも可能です。

またテレビ等のメディアでは、〇〇の専門家である△△先生みたいな紹介のされ方をする場合もありますが、あれは予め特定分野をテーマに扱うことが決まっているからこそ、その時は〇〇の専門家と名乗っているだけで、実際にどの程度の業務を行っているかなんて全くわかりません。

このような現実があるからこそ、実は、日本弁護士連合会の理事会は、弁護士業務において広告をする際には、専門分野についての言及は避けるべきというガイドラインまで出しています(後述参照。ガイドラインの記載自体なるほどという内容ですので、ご覧ください)。

理由は、弁護士業界には医師のように専門分野の具体的な認定制度があるわけではなく、何をもって専門分野といえるかの基準が明確でなく、弁護士が主観的に勝手に専門分野を名乗ることが可能であることと、他方、相談者からすると、その弁護士は〇〇が専門分野で強いんだと根拠なく信用してしまう可能性があるからです。

ですから、ホームページやメディア等で、自分の専門分野は〇〇だと述べている弁護士は、少なくとも、このようなガイドラインの存在を知らないか、知っていても無視している弁護士ということになり、どちらかというと、信用できるどころか注意しなければならないのかも知れません。

それでも、弁護士がどういう業務をしているかを知りたければ、専門分野という聞き方ではなく、実際に特定の業務についてのこれまでの実績(案件数など)を聞き、他の弁護士と比較してみるといった方法があるかもしれません。

しかし例えば、交通事故や過払金請求事件のような偏った案件を多数扱ったことがあるだけで、紛争事件や訴訟全般、損害賠償請求全般について多数の実績があるかのように宣伝してしまうことも可能なのように、結局、弁護士による宣伝を聞いただけでは、なかなか優劣は判断しにくいところです。

雑誌やテレビ等のメディアに出ている弁護士は優秀なのか?

次によく聞かれるのが、雑誌やテレビ等のメディアに出ている弁護士は優秀なのかという質問です。

結論からすると、メディアに出ているかどうかと弁護士としての優秀さは基本的に関係がないと思います。

まず、雑誌については、「記事広告」が多いことはご存知でしょうか。

記事広告とは、メディア側ではなく、記事として扱われる側が広告料を払って記事にしてもらっているようなものをいいます。

つい先日、私のもとにも、何の事前連絡もなく、一方的に書類が送り付けられてきました。

中を開けてみると、最大手の週刊雑誌の会社の代理店からで、ある大型連休の特大号で弁護士紹介の企画をするが、記事広告を出さないかという営業DMでした。

具体的には、見開き2ページでは200万円、1ページでは100万円で、取材形式の記事広告が出せるというものでした。誰もが知っている週刊雑誌なので、この程度の広告料を払うだけの宣伝効果はあるということでしょう。

読者の中には、誰もが知っている著名雑誌を手に取り、雑誌側からロングインタビューを受けて、自らの業務実績や専門性について語る弁護士の記事を見たら、雑誌側がこの弁護士の能力や実績等に着目してインタビューをお願いしたかのように捉えるのではないかと思います。もしかすると弁護士側がギャラを貰っているかもとさえ思うかもしれません。

しかし、実態は全く逆で、雑誌側が何らかの基準で優秀な弁護士を選んでアプローチしたわけでもなく、またインタビューの内容が優れていたからでもなく、単に載る弁護士が多額の広告費を払っているだけなのです。

しかも、取材形式の記事だと、何となく客観的で中立的な内容のような気がしてしまいますが、実際には記事内容は全て広告主である弁護士側の指示どおりです。

このような記事広告の仕組みが悪いとは思いませんし、僕自身もどんなものかやってみようと過去に広告料を払ったこともありますが、問題は、本来は客観性のない記事なのに、客観性があるかのように見えてしまう点です。

さきほどの専門分野についての問題と同じで、弁護士が主観的に語っているだけなのに、相談者からは客観的な根拠があるかのように見えてしまうのは問題です。

同様に、新聞や雑誌等で、〇〇に強い弁護士ランキングが掲載されることがありますが、あれも何をもって優劣をつけているかの基準が全く明らかでなく、またクライアントや同業者からの投票を基にランキングを出しているようなものは、大きな事務所で組織的な投票をすれば自分達にとって有利なランキングはいかようにでも作れてしまいますので、必ずしも参考にはなりません。

次に、テレビに出ている弁護士については、マスコミ関係者との何かしらの繋がりがあるというだけで、弁護士業務の優秀さとは基本的に関係ありません。

そもそも法律事務所の中にはメディア活動を基本的に禁止あるいは控えているところも多く、メディア活動をしている弁護士は、単に所属事務所の方針としてメディア活動を許容していて、また、その弁護士がある程度テレビ映えして喋ることができ、かつ、ある程度メディアに出たがりだったというだけだと思います。

僕も、ワタナベエンターテインメントグループにお世話になっていることから、情報番組やクイズ番組などに出させていただくこともありますが、弁護士として優秀かどうかは全く関係なく、ただ上記の条件を満たす弁護士の数があまり多くないので、希望すれば多少は機会に恵まれることがあるというだけのことだと思っています。

他にも、CMでよく見かける弁護士も、CMは記事広告と同じように広告料を支払っているだけですから、業務の優劣とは一切関係ありません。

では、どうやって弁護士を選ぶべきか?

依頼する弁護士の選び方ですが、個人の事件において、一番大切なのは依頼者と弁護士との人間的な相性だと思っています。

特に、普通の一般個人が抱える事件の大半は、(たとえその弁護士にとって初めての種類の案件であっても)弁護士であればそれなりにこなせる案件ばかりなので、その弁護士がどの分野に強いのかを気にするよりは、きちんと依頼者の話を聞いてくれて、丁寧に素早く対応してくれるかといった案件処理の姿勢などを見るといいのではないかと思います。

そして、実際には弁護士ごとに特定の分野に強い弱いは多少あるのですが、そういった弁護士の業務実績や得意不得意よりも、人間的な相性が良いか悪いかの方が、よほど事件の進度や成功度に影響してくると思います。

ですので、相談者にとって、弁護士が、きちんと自分の希望を真っすぐ聞いてくれているか(相談者の希望を無視して弁護士がやりたいようにやろうとしていないか)、心情に配慮してくれているか(正論ばかりで納得感に乏しいことはないか)、説明は明確で不安を取り除いてくれるか(私に任せておきなさい的なことばかり言ってこないか)、スピードに問題がないか(相談者のことを気にかけているのかわからないことはないか)、報酬体系は明確か(常に料金が高くならないかの不安を感じていないか)などから、違和感なくコミュニケーションできて事件を進めてくれるかを確認すれば良いと思います。

弁護士の探し方

実際の弁護士の探し方ですが、インターネットやタウンページで近くに事務所を構えている法律事務所に電話やメールをして面談を申し込むのでもいいし、弁護士会のホームページから相談窓口があるのでそこに問い合わせるのでも良いと思います。

お勧めは法テラス(日本司法支援センター)で、都内だと新宿、池袋、四谷等の複数の事務所があります。資力が少ない等の一定の条件を満たすと無料法律相談も可能です。

ただ、実際に事件を依頼することになる場合には、定期的に担当の弁護士の法律事務所に通うことになるので、その事務所が移動に便利な場所にあるか、相談者にとって都合の良い時間帯の面談を受け付けてくれるかという点も結構重要です。

あと、弁護士に相談するほどではないから、司法書士や行政書士、税理士に相談してみようという人がいますが、弁護士と他の士業とでは業務内容が全く異なり、難しい法律相談は弁護士に、簡単な法律相談は他の士業に、という区別ができるわけではありません。

そもそも、他の士業では、法律相談が法的に許されていないこともありますし、費用についても、弁護士以外の士業にお願いすれば安く済むわけではありません(例えば、行政書士で内容証明を作成する人もいるみたいですが、弁護士と変わらない料金をとることもあります)。

ですから、法律相談であれば、内容をあまり気にせずに弁護士に相談することが大切だと思います。

以上、弁護士の選び方等について、よく質問を受ける点について、概要を述べさせていただきましたが、結論としては、多くの個人の相談者にとっては、通いやすい場所に事務所を構えていて人間的に相性が良く相談しやすい弁護士を選ぶのが良いのではないかと思います。

弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針 (平成22年11月17日理事会議決)(一部)

専門分野は、弁護士情報として国民が強くその情報提供を望んでいる事項である。しかし、現状では、何を基準として専門分野と認めるのかその判定は困難である。弁護士として一般に専門分野といえるためには、特定の分野を中心的に取り扱い、経験が豊富でかつ処理能力が優れていることが必要と解される。ところが、専門性判断の客観性が何ら担保されないまま、その判断を個々の弁護士にゆだねるとすれば、経験及び能力を有しないまま専門家を自称するというような弊害もおこりうる。したがって、客観性が担保されないまま「専門家」、「専門分野」の表示を許すことは、誤導のおそれがあり、国民の利益を害し、ひいては弁護士等に対する国民の信頼を損なうおそれがあることから、現状ではその表示を控えるのが望ましい。専門家で あることを意味するスペシャリスト、プロ、エキスパート等といった用語の使用も同様である。なお、現実に「医療過誤」、「知的財産関係」等の特定の分野において「専門家」というに値する弁護士及び外国法事務弁護士が存在することは事実である。しかし、弁護士間においても「専門家」の共通認識が存在しないため、日本弁護士連合会の「専門」の認定基準又は認定制度を待って表示することが望まれる。

出典:弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針

※本事は分かりやすさを優先しているため、法律的な厳密さを欠いている部分があります。また、法律家により多少の意見の相違はあり得ます。

福永法律事務所 代表弁護士

著書【日本一稼ぐ弁護士の仕事術】Amazon書籍総合ランキング1位獲得。1980年生まれ。工業大学卒業後、バックパッカー等をしながら2年間をフリーターとして過ごした後、父の死をきっかけに勉強に目覚め、弁護士となる。現在自宅を持たず、ホテル暮らしで生活をしている。プライベートでは海外登山に挑戦しており、2018年5月には弁護士2人目となるエベレスト登頂も果たしている。MENSA会員

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