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熱中症か、高松市の女児二人死亡、車内で意識失い救急搬送:子供の車内事故の心理学

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:不幸な事故を防ぐために必要なことは(写真:アフロ)

■熱中症か 高松市で6歳と3歳女児が死亡 車の後部座席で意識失い救急搬送

残暑が続く中、また悲しい事故が起きました。

高松市で路上に止めた車の後部座席で6歳と3歳の姉妹が意識を失っていると、母親から119番通報がありました。2人は病院に救急搬送され、午後2時半ごろ、死亡が確認されました。

 死因は調査中ですが、熱中症とみられます。母親は車を止めてその場を離れていたということで、警察が事情を聞いています。

出典:【速報】熱中症か 6歳と3歳女児が死亡 車の後部座席で意識失い救急搬送 高松市 9/3(木) KBS瀬戸内海放送

2人の子供は、どんなに苦しかったことでしょうか。通報した母親は、今どんなに辛い思いをしていることでしょうか。

*母親逮捕の続報を受け、新しいページもアップしました(9/8)。

車内放置死を防げ:高松市遺棄致死事件の悲しみと怒りから

■人々の反応と効果的な対策

このようなニュースのたびに、「馬鹿な親」とか「愛がない」「注意力がない」「信じられない」などの非難が起きます。

たしかにそうかもしれませんが、そうでないかもしれません。

「これだけ報道されてもまだわからんのか!!!」

「車の中は相当暑くなる。ドライバーなら常識」

「信じられない~母親としてあり得ません」

ヤフーコメントにも、こんな言葉が並びます。

今回の出来事の詳細は分からないのですが、被害の悲惨さを思えば、親を非難したくなる気持ちもわかります。

けれども、その個人を責めるだけでは、ヒューマンエラー(人間によるミス、失敗)は防げません。子育て中の親に、いくら注意を促しても、説教をしても、それで防げるものでもありません。

ヒューマンエラーを防ぐためには、なぜこんな悲劇が起きたのかを考え、次の悲劇を防ぐ工夫をしなければなりません。

■車内で子供が熱中症になるケース

エンジンをかけエアコンをつけても、何かの拍子でエンジンが止まることもあります。

エアコンがついていても、子供のいる後部座席まで涼しくならず、直射日光が当たり熱中症になることもあります。

親がドアを閉めるときのキーの閉じ込めもあります。また子供がロックしてしまうこともります。

そして、親が子供を車内に置き忘れることもあります。考えられないと思うかもしれませんが、愛も能力もある親が、忘れることもあるのです。

海外では「赤ちゃん忘れ症候群」と呼ばれることもあります。

子ども車内置き忘れは私にも!?:赤ちゃん忘れ症候群:記憶とヒューマンエラーの心理学

■悲しい事故を防ぐために

たとえば飛行機は、事故が起きるたびに、問題が改善され安全性が増していきました。

金属が突然破壊される「金属疲労」も、飛行機事故の調査からわかった現象です。

パイロットは、高度な訓練を受け、普通の人以上に責任感が強い人でしょう。しかも大きな旅客機なら、複数の人がコクピットにいます。

それにもかかわらず、様々なヒューマンエラーで、飛行機事故は起きてきました。着陸時に車輪を出し忘れた事故もあります。

離陸時にフラップ(翼の後ろについていて揚力を高める装置)を出し忘れ、離陸できずに大きな事故が起きたこともあります。

考ええられないミスですが、起きてしまいまうのです。飛行機事故の場合は、莫大な予算と労力をかけ、徹底的に機械的な故障の有無を調べ、そのあとで、ヒューマンエラーを疑います。

ヒューマンエラーだと結論付けられれば、当人の処罰だけでなく、今後のミスを防ぐために、訓練課程が変わったり、チェック方式が変えられてきました。

ところが、家庭内の個人によるヒューマンエラーは、個人を責めるだけで終わりがちです。これでは、同様の事故が防げません。

多くのヒューマンエラーの背景には、焦りや疲れがあります。時には、まじめな人ほど、焦りや疲れが生まれることもあります。

寝ている子供を起こすのはかわいそうと思う優しさが、悲しい事故につながることもあります。

めったにないことだけれども、起きれば命にかかわるミスを防ぐことは、簡単ではありません。機械のハード的な面と、人間の心理と行動のソフト的な面の、両方の対策が必要です。

冷静で詳細な調査と考察から、効果的な対策を練っていきたいと思います。

*補足:母親が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕されました。

報道を受けて、ページをアップしました。

車内放置死を防げ:高松市遺棄致死事件の悲しみと怒りから

「高松市子供車内置き去り死事件と逮捕の母に関するご意見ご質問に答えて:より良い議論のために」

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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