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2015年春 ひと味違う「注目CM」はこれだ!

碓井広義メディア文化評論家

テレビ番組もそうですが、CMは時代を映す鏡です。その時どきの世相、流行、社会現象、そして人間模様までをどこかに反映させています。 この春、流されているCMの中から、注目作を選んでみました。

●ソフトバンクモバイル 白戸家「お父さん回想する」編

映画『スター・ウォーズ』シリーズの第1作目『エピソード4/新たなる希望』を、有楽町の日劇(懐かしい円筒形の建物)で見たのは、全米公開翌年の1978年のことだ。

それから約20年後に作られたのが『エピソード1/ファントム・メナス』である。後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの少年時代を描いた、後日談ならぬ衝撃の“前日談”だった。

このCMで驚いたのは、お父さん(声・北大路欣也さん)とお母さん(樋口可南子さん)が高校の同級生で、当時の“見た目”は染谷将太さんと広瀬すずさんだったことだ。特に今年の目玉、超新星アイドルである広瀬さんの起用はお見事。

また、染谷さんが上戸彩さんにそっくりな保健室の先生(上戸さんの二役)にトキメクのも、後年のお父さんを彷彿とさせて苦笑いだ。

今後、染谷さんと広瀬さん、二人の高校時代を舞台に、回想の枠を超えた前日談の物語が続々と展開されてもおかしくない。いや、ぜひ見てみたいものだ。

●ワイモバイル「ふてネコ お風呂で鼻歌」編

猫は気まぐれだ。素直に人の言うことをきかない。時には人間より偉そうに見える。ちょっとコシャクな存在だ。

このCMもそうだ。湯船につかりながらの鼻歌。小坂明子さんの名曲「あなた」の替え歌だが、「家を建てたニャら光とスマホ~」と宣伝も忘れない。

またカフェ編ではカウンターに肘をつき、「ワイモバイルのスマホでにゃんにゃん言ってみませんか」などとハードボイルド風につぶやいたりする。

約30年前、「なめんなよ」で大ヒットした“なめ猫”がいた。しかし、その暴走族風の学ランなどは、「人間に着せられちゃいました」という印象が強い。

その点、ふてネコは自然体だ。誰にも縛られず、また、こびない態度が気持ちいい。自らの哲学と価値観に生きる一匹オオカミ、いや一匹ネコのようではないか。

ちなみに、ふてネコの声はスタッフだという。徹夜明けにでも録ったのか、声質もトーンも猫のふてくされぶりにぴったりで、演技賞ものだ。

●カルピスウォーター「海の近くで 初夏」編

若手女優にとって、“登龍門”と呼ぶべきCMがある。

橋本愛さんや二階堂ふみさんを起用してきた「東京ガス」。堀北真希さん、北乃きいさんが光った「シーブリーズ」。そして長澤まさみさん、能年玲奈さんなどを輩出した、この「カルピスウォーター」だ。

今回、第12代目キャラクターとして登場したのは黒島結菜(ゆいな)さん。『アオイホノオ』『ごめんね青春!』といったドラマで注目された短髪美少女だ。

特に『ごめんね・・』で演じた生徒会長役が印象に残る。自分が転校することを仲間に隠しながら、文化祭の準備に没頭する姿が何ともいじらしかった。

このCMの舞台は桟橋だ。カルピスウォーターを飲んだ後、隣に座った男の子に「何見てんの?」と、いたずらっぽい笑顔を向ける。

いや、そんなこと言われたって困る。こんな少女がいたら誰だって見ちゃうだろう。そして、この日の風景を一生忘れない。・・・それが青春。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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