慌てて新築マンション売る気配がない湾岸エリア 特殊な状況生んだ開発計画
商業施設ができるたびに、注目度が上がった「湾岸」
都心湾岸エリアは東京都内で東京湾に面した一帯を指し、行政区でいえば中央区、江東区、品川区、港区の一部となる。品川駅周辺で東京湾に面した場所も湾岸エリアということになるのだが、一般的に「湾岸」というと、中央区の佃、月島、晴海、勝どきから江東区の豊洲、東雲、有明、港区の台場に至る海に囲まれた場所を思い浮かべる人が多い。
この湾岸の中心エリアでマンション分譲が始まったのは1990年代から。中央区佃で大川端リバーシティ21として建設された超高層マンション群が最初だ。
21世紀に入ると、東雲エリアの開発が始まり、2003年に「イオン東雲ショッピングセンター」が開業。その食品売り場は24時間営業となったため、湾岸の注目度は一気に上がった。さらに、2006年に「アーバンドック ららぽーと豊洲」がオープンし、キャナリストなる呼び名も生まれた。
キャナリストとは、運河に面した湾岸エリアに住む人たちのこと。「よい場所に住んでいる」という意味を含めて、そう呼ばれたわけだ。
その歴史を振り返ると、湾岸エリアでは大型商業施設が生まれる度に、注目度と人気が上がってきたことになる。
そして、今、湾岸エリアでは、大型の商業施設の開発計画が次々に発表されている。
有明では、来年春に大型商業施設がオープン
まず、晴海地区では、東京五輪選手村を活用した街づくり・晴海フラッグのなかに、商業施設がつくられることが発表されている。といっても、それは晴海フラッグの街びらき(2022年予定)以降なので、少し先の話。それよりも早く、来年2020年の春にオープンする大型商業施設の概要が11月27日に記者発表された。
商業施設の名称は、「住友不動産 ショッピングシティ 有明ガーデン(以下、ショッピングシティ 有明ガーデン)」。大規模マンションとともに、商業施設とホール、ホテルをつくる「東京湾岸有明複合開発プロジェクト」でつくられる商業施設だ。
「東京湾岸有明複合開発プロジェクト」は住友不動産一社で推進され、総開発面積は約10.7ヘクタールとなる開発計画。といっても、規模が分かりにくいので、他の開発エリアと比較すると、東京ミッドタウンが約6.8ヘクタールで六本木ヒルズが約9.3ヘクタール。それよりも広い面積の開発計画となる。そのなかにつくられる「ショッピングシティ 有明ガーデン」には200を超える店舗が入り、日々の生活で利用しやすいタイプの店が集められる計画だ。
そのほか、開発エリア内には約750室の大型ホテル「住友不動産 ホテル ヴィラフォンテーヌ グランド 東京有明(以下、ヴィラフォンテーヌ グランド 東京有明)」と「住友不動産 東京ガーデンシアター(以下、東京ガーデンシアター)」という約8000人収容の劇場型ホールがつくられ、収容人数は、武道館に匹敵する規模となる。
さらに、注目したいのは、開発エリア内に、劇団四季専用劇場となる「有明四季劇場」がつくられること。2021年春オープン予定の劇場で、ライオンキングロングランが目指される。
商業施設オープン前に、街区内マンションが完成
商業施設の「ショッピングシティ 有明ガーデン」も「ヴィラフォンテーヌ グランド 東京有明」も「東京ガーデンシアター」も「有明四季劇場」もまだ建設中で、11月の記者発表では内部を見ることができなかった。ただひとつ、「東京湾岸有明複合開発プロジェクト」のなかで完成した建物を見ることができるのは、3棟の超高層マンションで構成される全1539戸の「シティタワーズ東京ベイ」だけだ。
同マンションは、すでに建物が完成しているが、販売を継続している。1500戸を超える大規模なので、完売までにはまだ時間がかかりそうだ。そして、慌てて売ろうとする気配はない。
「ショッピングシティ 有明ガーデン」、「ヴィラフォンテーヌ グランド 東京有明」「東京ガーデンシアター」がオープンする来春以降、年間1500万人の来場者(商業施設、ホール、劇場、ホテルなどへの来場者総数)が予想されており、この新しい街の人気は一気に上がる。そうなったときには、商業施設、ホテル、ホール、劇場などと一体開発の「シティタワーズ東京ベイ」は大きく注目度を上げるはず。そのときを待とうということだろう。
今、湾岸・有明は人気スポットになる前夜となり、嵐の前の静けさというべき特殊な状況が生まれている。