新型CX-5発表で、2周目に入ったマツダの狙いとは?
12月15日、マツダはSUVの新型CX-5を発表した。最近のマツダの新世代モデル群の皮切りとして、先代CX-5が登場したのが今から4年前の2012年2月のこと。この時、CX-5は初めて「スカイアクティブ技術」をガソリン/ディーゼル・エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーのすべてに採用した新世代モデルとして登場したわけだ。
そしてこれ以降、アテンザ、アクセラ、デミオ、ロードスターといった具合に、新世代モデル群を増やしていった。そうして各モデルが新世代へと進化していくに連れて業績も上向き、巧みなプロモーションも相まって、現在では日本の自動車メーカーの中でも元気の良い、好印象を与える立ち位置を手に入れている。ちなみに先代CX-5はマツダのグローバル販売の1/4を占める、基幹車種のひとつにまで成長を果たした。
そうした流れからすると、今回発表された新型CX−5によって、マツダが2010年あたりから言い始めた「スカイアクティブ技術」と呼ばれるものが展開された新世代モデルの第一世代が終了し、2周目に突入したということになる。事実プレスリリースにも、「新世代商品群として初めてのフルモデルチェンジとなる」と記されている。
しかし、今回のフルモデルチェンジはいわゆるフルモデルチェンジとは少し異なるものであることが特徴だ。新世代商品群の第一世代が終了して、第二世代として完全に新規に生まれ変わった…というわけではない。
実際に新型CX-5が用いるプラットフォームは、アメリカで販売されているもう1クラス上のSUVであるCX-9のものをモディファイしたものを用いている。そしてこのCX-9プラットフォームは、先代CX-5のものをベースとした拡張版である。つまり先代CX-5のプラットフォームをモディファイしてブラッシュアップしたものを、新型CX-5では用いているわけだ。
こう記すと、今回は大規模なマイナーチェンジ? と誤解する人も多いだろうが、それも異なる。例えばコンパクトカーの世界定番であるVWゴルフは先先代モデルから先代モデルへモデルチェンジする際に、先先代モデルのプラットフォームを用いつつも、大幅なモディファイを施して、低コストながらも確実な進化を遂げた例がある。今回のCX-5もそうした考え方に近いと筆者は感じた。
事実、今回はプラットフォームこそCX-9のモディファイ版とするものの、静粛性や快適性が大幅に向上している。つまりこれは、大物であるプラットフォームを新規開発こそしないためコストを抑えられる一方で、静粛性や快適性といったユーザーメリットに大きくつながる部分に対してコストをかけることで商品性を飛躍的に高めようとしているわけだ。また合わせて、走りの磨き込みにも注力しており、今回は運転者だけでなく同乗者全員が気持ちよく感じられる走りを徹底して煮詰めている点も見逃せない部分だろう。
そうした理屈はエンジンに関しても同様だ。2.2Lのディーゼル・エンジンは先代CX-5に搭載されているものと同じだが、先に1.5Lのディーゼル・エンジンで施した改良を同じように適用している。ナチュラル・サウンド周波数コントロールと呼ばれる機構を入れるなどして、より静かで気持ちよい音を届けるような工夫が施されている。
そして圧巻はデザイン。エクステリア/インテリアで追求されたこだわりは、ひと目見て国産車の中では群を抜くクオリティを確実に手にしていると感じられる。「魂動デザイン」はさらに進化を遂げており、独自の世界観がさらに強化された。また今回は、ボディカラーにも徹底してこだわった開発を行なっており、その品質感の高さは特筆すべきものがある。
さらに安全装備に関しても、現行のマツダ車としてついに完全停止までを可能としたアダプティブクルーズコントロールを組み合わせた運転支援技術も搭載することができた。
こうして見てくるとつまり、フルモデルチェンジの名のもとに全てを一新してゼロからスタートするのではなく、使えるものは使った上でユーザー・メリットとなる部分をおおきに磨き上げて高い商品性を作り込もうとしているのがわかるし、世代をアップデートさせようとしている。実際今回は主要なメカニズムは先代を受け継ぐものの、その磨き込みや進化ぶりは著しく、確かにフルモデルチェンジと呼べるだけの内容のことが行われている。
また既にマツダは2018年には、新世代のエンジン群を発表するとアナウンス済みでもあることを考えると、今後このメーカーの戦略としてはいわゆるこれまでのフルモデルチェンジのように、一気に全てを変えるのではなく、徐々に様々なものをアップデートしていく考え方があるのだろうと予測できる。
そしてこのような流れの中で、どこかのタイミングでプラットフォーム等が新規に起こされて…といった具合で可変的に新たになっていくのだろうと想像できるわけだ。
そんな風に考えると、先日お伝えしたようなデミオやCX-3の商品改良にも納得がいく。つまりはこの手法を、モデルごとでそのライフに合わせて小規模に行うか大規模に行うか、という考え方である。
果たして今後のモデルでは、どのような手法がとられるかは分からないが、今回の新型CX-5に関しては確かにこれまでのフルモデルチェンジの常識にとらわれない手法をとっていることは確かである。