もはや市販版! 驚きの完成度を見せたトヨタの電気自動車、bZ4Xが上海で登場【動画あり】
トヨタ自動車が上海ショーで発表した電気自動車のコンセプトモデル、bZ4Xは驚くべき内容、そして様々な可能性を感じさせる1台だ。
【筆者によるトヨタbZ4Xに解説動画はこちら】
まず写真や動画を見て分かるのは、デザインが既に市販レベルに落とし込まれているということ。例えばヘッドライトなどは最新のトレンドであるLEDの3眼タイプで市販される他のモデルと大差ない仕上がり。さらにヘッドライト筐体のサイドのオレンジのマーカーも特定地域の法規をクリアするためのものである。同じ観点からテールレンズを見てもやはりほぼ市販レベルといえる仕上がりである。
またこうしたコンセプトモデルの場合、ショー会場で目立つようにデザイン的に「盛られている」場合がほとんど。それを見分ける部分としては、先に記したライト類などに加えて、タイヤ&アルミホイール、そしてミラーなどを見るとすぐに分かる。そうした視点で今回のbZ4Xを見ると、なんとタイヤはブリヂストンが既に製造しているアレンザという銘柄を用いており、アルミホイールも常識的な造形の、いわゆるショー用のものとは異なっている。というか、誰が見ても市販版そのもののタイヤ&アルミホイールである。
さらにミラーもこうしたコンセプトの場合は、小さく薄く鋭い形にしたり、流行りのデジタルアウターミラーにしたり…といった具合だが、bZ4Xはご覧のように法規をクリアできる造形と大きさのミラーそのものである。
では一方で、インテリアはどうだろうか? まず印象的なのは円形ではなく、異形のステアリングホイールを採用している。通常ならばこれはいかにもコンセプトカー然としたものである。が、今回このbZ4Xではステアバイワイヤを採用することを明言している。ステアバイワイヤとは、ハンドル操作を電気的に伝えてタイヤの向きを変える技術で、従来のシャフトを介す方式とは違うものだ(おそらく安全策としてシャフトは残るだろうが)。このステアバイワイヤを採用すると、ハンドルの操作量に対して自由自在にタイヤの操舵角を変更することができるため、ハンドルは決して丸くなくて良くなる。つまりこの異形のステアリングホイール採用も、夢物語ではない…と予測できるわけだ。
また同じような観点からダッシュボードやシートなどを含めた造形をチェックしても、これらも全て実際に作動する市販版の機器類であることが分かる。ナビシステムのモニターやスイッチ類などもごくごく当たり前のものになっており、そこに虚飾はないのだ。
トヨタはこのEVを日本と中国で生産し、2022年央にグローバルで販売すると今回アンバウンスしているが、実際にこのモデルを見ればそのスケジュールは確実に達成できることもすぐに分かる。
こんな具合でまずこのbZ4Xは、ひと目見て高い完成度を持つ1台ということを静かに物語っていることに驚かされる。
さらに面白いのは、このモデルの開発責任者が豊島浩二氏であること。氏は現行プリウスの開発責任者を務め、その後プリウスのPHVモデルも世に送り出した。そしてその後はこの電気自動車プロジェクトに入った人物。現行プリウスやPHVモデルの際にもユニークさを発揮したが、今回もこのbZ4Xにソーラー充電システムを搭載するなど、プリウスPHVで使った手法を再び用いるなど注目だ。おそらくこのbZ4Xには豊島氏の豊富なアイデアが盛り込まれているに違いない。
さらに注目はこのbZ4Xがスバルとの共同開発となっていること。スバルも既に2019年ごろにEVのコンセプトモデルを披露しており、これをトヨタと共同開発することを発表していたが、今回スバルのAWD技術が活かされるという点がトピック。ご存知のようにスバルはメカニカルなAWDでのノウハウは多く持つが、果たしてEVでモーターを制御してAWDとする技術にどう絡むのかが気になるところ。しかしながらトヨタの発表であえてスバルのAWD技術を強調した辺りに、まだ語られないトピックが隠されているのだろうと予測できる。またスバルもメカニカルなAWDを電子制御する技術は豊富に備えており、この辺りの知見も大いに活かされるのだろう。
さらにこの今回の発表ではスバルの他に、スズキ、ダイハツ、そして中国の電気自動車大手であるBYDの名前が連ねられた。発表では2025年までの間に送り出すEV15車種のうち、7車種がbZシリーズと発表したが、それ以外はさらなる展開も考えられ、これらのブランドとの面白い展開も期待できそうだ。
今回の上海ショーで送り出されたトヨタのbZ4Xは、単なるコンセプトカーの域を大きく越え、既に市販のスタンバイがなされていることを静かに物語っている。そしてそれだけでなく、技術や他ブランドとのシナジーにおいても、大きな可能性を感じさせる発表だったといえるだろう。