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見た目の変更ナシ? 執念の商品改良を行なうマツダの狙いは?

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

マツダはコンパクトカーのデミオとコンパクトSUVのCX-3の2台を商品改良した。この2台は今年の頭にも商品改良が施されており、いわゆる商品改良としては極めてスパンが短い。

ならば短期間で絶対に改良しなければならない部分があったのかというとそうではない。2台ともに、「少しでもクルマを良くして商品性を高めたい」という、素直な思いの方が強い。

では、どんな商品改良を行なったかといえば2台ともに見た目、つまり内外装の変更は皆無で、メカニズムに改良を施している。

2台に共通する改良点としてはまず、先日アクセラに盛り込まれた「Gベクタリングコントロール」という、車両挙動制御が与えられた点だ。この制御によって、通常よりも操舵角が少なくなったり、修正舵が減ったりするなどして、滑らかなクルマの動きや乗り心地の向上も図られるという。しかもこの制御は、機器をプラスすることなく制御ロジックを盛り込むだけで実現可能だ。ただ、搭載するからには両車ともに足回りをさらにブラッシュアップしたいわけで、もちろん手が入れられている。

次に両車に共通する改良が、1.5Lのディーゼルエンジンのブラッシュアップ。これは先にアクセラでも行われたが、ディーゼルエンジン特有のノック音を低減するための「ナチュラルサウンド周波数コントローラー」が与えられており、不快な音をより低減して気持ち良い音だけを届ける、という改良が施された。

さらにデミオおよびCX-3では、ヘッドライトに片側11個のLEDを用いてきめ細やかに配光を調整するアダプティブLEDヘッドライト=ALHを採用。これはラインナップの中でもまだ、デミオとCX-3にしか採用されていない最新技術である。

一方CX-3では、改良前のモデルで指摘されていたリアのサスペンションからの突き上げを、新たなブッシュを用いて改善。さらにパワーステアリングも、より手応え感のあるフィーリングとするために手が入れられている。

結果、2台は商品改良を受けながらも目に見える変化はほとんどない最新モデルとなったわけだ。

日本の自動車はこれまで、4-6年間くらいのライフサイクルでフルモデルチェンジを受け、ほとんどがその半分くらいの時期にマイナーチェンジを受けて進化することが常識だった。しかしマツダはそこに、欧米の自動車に近い「イヤーモデル」の概念を持ち込んで、毎年必ず手を入れていく方法を選んだ。そして今後登場する新型のCX-5などにも同様の手法が、さらに色濃く盛り込まれている。

クルマを少しでも良くしていこうという、真摯な思いに端を発した商品改良の狙いは、販売にする商品としての「鮮度」を常に維持したいからである。改良により純粋にクルマとしての良さは増す。またライバルの登場によって魅力が色褪せることも抑制できるだろう。さらに最近では先進技術の導入においてもフルモデルチェンジを待っていては命取りになりかねない。そして何より、マツダのクルマは常にアップデートされている、というイメージはブランドとしての真摯さを物語る要素にもなりうるだろう。

だが、果たして毎年細かく変わることに対し、ユーザーの反応はどのようになるか? また、こうした手法は販売にどのように影響するかにも注目したい。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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