いくら安全性が高くても、シートベルトをしなければ意味がない。スバルが伝える「性能より大切なこと」
2021年5月25日、株式会社スバルは同社の「レヴォーグ」が、 JNCAP「自動車安全性能2020ファイブスター大賞」を受賞したというニュースをリリースした。
JNCAPとは、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構が実施する自動車の安全性能を比較評価する自動車アセスメントで、スバル・レヴォーグは2020年度の衝突安全性能と予防安全性能の総合評価で最高得点を獲得して大賞を獲得。つまり、いま日本でもっとも安全なクルマといえる栄誉を手に入れた。
株式会社スバルは今回、この受賞に合わせてオンラインミーティングを行い、メディア関係者にレヴォーグの安全性の高さを紹介したが、その中で非常に興味深かったのがJNCAPの衝突安全性能をはかるテスト項目のひとつである、時速64キロでのオフセット衝突テストを実際の映像で公開したこと。
もちろん時速64キロでのオフセット衝突テストを映像で公開することは、何も珍しくないことではある。が、今回株式会社スバルは独自で、このテストの際に後席にシートベルトを装着したダミーと装着しないダミーを乗せて、このダミーが衝突時にどのような動きとなるかを映像で公開した。これは他社を含めても、極めて珍しい事例である。
後席乗員のシートベルト未装着状態でのオフセット衝突テスト映像は、筆者のYouTubeチャンネル「LOVECARST!TV!」での解説動画内でも取り上げたので参照にしていただきたい。
動画を見ていただくとわかる通り、シートベルトをしていないダミーは座っていた後席から簡単に投げ出され、ダッシュボードに頭を打ちつけた後助手席に頭から飛び込み逆さまの状態になるという、衝撃的な映像となっている。当然これが実際の人間であったら、頭部に極めて高い障害値を記録し、重傷を負うのは間違いない。
では株式会社スバルなぜ、今回このような独自のテスト映像を公開したのか? これもオンラインのミーティングで語られたことだが、日本では後席シートベルトの装着率が低いという背景がある。これも筆者の動画内で図解しているが、高速道路では20数%が後席シートベルトを装着せず、一般道においては実に約60%が後席シートベルトを装着していないというデータがある。
こうした背景をして株式会社スバルでは、2014年に送り出した初代れヴォーグで後席のシートベルトリマインダーを世界初採用した経緯がある。その後、同社のインプレッサでも採用し、当然今回の2代目レヴォーグでも採用している。
しかしながら先のデータが示す通り、後席シートベルトの装着率は未だ低いままである。そこで今回、株式会社スバルはあえて、2020年度の日本でもっとも安全なクルマに輝いたレヴォーグを用いて、スバル独自の衝突テストを映像で公表することで、改めて後席シートベルト装着の重要性をアピールしたのだ。
事実、今回のオンラインミーティングでも、株式会社スバルの安全性能を取りまとめる古川部長の口からは「いくらクルマが高い安全性能を実現していても、乗員がシートベルトをしめなければ意味がない」という旨の言葉が語られた。いくらJNCAP「自動車安全性能2020ファイブスター大賞」を受賞した、安全性に関してお墨付きを得ているレヴォーグでも、シートベルトをしていない乗員を守ることは不可能なのである。
筆者自身も今回のオンラインミーティングに参加してそれを実感した。そして先の動画の中でこのような言葉にした。
「シートベルトをしないのは、安全を放棄したということ」
近年、ドライバーの安全に対する意識は高まり、前席のシートベルト装着率に関しては高い数値が達成されている。しかしながら、後席となると驚くほど低いのが実際である。特に後席は、自身の親や子供といった家族、あるいは自身とは文化の異なる他人が乗ることになる場所である。そしてそこに座る人々に、シートベルトの装着をうながすのはドライバーの責任でもある。
動画を見ると即座に理解できるが、シートベルトをしない後席乗員は自らを危険にさらす確率が極めて高いと同時に、他者をも巻き込む攻撃性をも持ってしまうのである。
今回の動画をご覧になっていただいて、いま一度シートベルト装着の重要性。特に後席での装着の重要性を一考していただければ幸いである。