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元最強王者ロマチェンコ苦戦の原因は 2階級制覇を目指すテオフィモ・ロペスが分析

杉浦大介スポーツライター
Mikey Williams/Top Rank

10月29日 ニューヨーク

マディソン・スクウェア・ガーデン フールーシアター

NABFライト級タイトル戦

3階級制覇王者

ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ/34歳/17勝(11KO)2敗)

12回判定3-0(115-113、116-112、117-111)

ジャーメイン・オルティス(アメリカ/26歳/16勝(8KO)1敗1分)

 母国ウクライナをロシアの侵攻から守るために今春、軍隊入りして人々を驚かせたロマチェンコがボクシングの世界に戻ってきた。約11ヶ月ぶりのリングに立った元最強王者は、8歳も若いオルティスに判定勝ち。序盤ラウンドは被弾も多く、加齢による衰えも少なからず感じられた。

 世界ライト級4団体統一王者デビン・ヘイニー(アメリカ)への挑戦を来春にも目論むロマチェンコはまだ力を残しているのか。2020年10月、ロマチェンコに判定勝ちして同級統一王者になった実績を持つ元王者テオフィモ・ロペス(アメリカ)に、今戦の分析と元ライバルの今後の予想をしてもらった。

ロマチェンコのアジャストメントとは

 戦前はもっとロマチェンコの一方的な展開を予想していたから、オルティスの健闘には驚かされた。オルティスは勝ちに来ていたね。序盤からよく手を出し、いい戦いをしたと思う。オルティスの積極性と手数の多さがゆえに、自分が想定していたのとはかなり違う内容になった。

 とはいえ、重要なのはどんなスタートを切るかではなく、どうフィニッシュするか。序盤は錆びつきが感じられたとしても、ロマチェンコは中盤からリズムを掴み、ペースを上げていった。終盤に見栄えのいいパンチを当て、より力強く試合を締め括ったのがロマチェンコの方だったことは間違いない。

 私の採点では7−5でロマチェンコの勝ち。ロマチェンコに8ラウンドをあた ても良かったかもしれないけれど、接戦と言っていい内容だった。

 序盤はオルティスの方が良かったけれど、ロマチェンコは相手の動きと距離に徐々に適応していった。オルティスは2発、3発のパンチをコンビネーションで出してくる戦略で、それに気づいたロマチェンコも同じようにコンビネーションパンチを重視するようなった。そうされたことで、オルティスのファイトプランは行き詰まったという流れ。ロマチェンコがより上手にアジャストメントを進め、勝利を手繰り寄せたんだ。

 この試合はロマチェンコの勝ちでいいけど、年齢による衰えは間違いなく示されたと思う。おそらくトップレベルで戦えるのはあと2年か、それ以下だろうね。今後、世界ライト級4団体王者デビン・ヘイニー(アメリカ)との対戦が具体化するはずだけど、今日と同じような出来だったら、ロマチェンコはヘイニーには勝てないだろう。

 ただ、兵役によるブランク明けだったロマチェンコには今日の試合が必要だったのかもしれない。ここで自信を取り戻し、次にビッグファイトが決まったら、よりいい状態でリングに上がることは考えられる。

 たぶん今回のオルティス戦よりもさらにいい試合になるだろうから、私もヘイニー対ロマチェンコ戦を楽しみにしているよ。

Mikey Williams/Top Rank
Mikey Williams/Top Rank

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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