緊急事態宣言の全国波及で、特別定額給付金・一律給付金の支給はあるのか
第4波に伴う3回目の緊急事態宣言も結局延長
既に報道されている通り、第4波に伴う3回目の緊急事態宣言も延長されました。これで、過去3回の緊急事態宣言はいずれも当初目論見通りに終えることができずに、延長されてしまったことになります。特に3回目となる今回の緊急事態宣言は、GW期間中の人流を抑えることを目的としつつも、17日間という期間の短さが当初から指摘されるなど効果を疑問視する声もあった中での発出で、結果的に延長となったことに見通しの甘さが強く指摘されています。
定額給付金・一律給付金の条件は宣言の「全国」発出
これまで書いてきた記事の繰り返しにもなりますが、「特別定額給付金」の
麻生太郎財務大臣は昨年10月の記者会見で、緊急事態宣言下における特別定額給付金について、次のように述べています。
すなわち、特別定額給付金の前提には、「緊急事態宣言を全国に拡大したという状況」が必要ということになりますが、この結果、第3波では第1波よりも感染者が多い状況だったにもかかわらず、緊急事態宣言を地域限定にしたということがありました。
ただ、今回の第4波は、政府(菅首相)や分科会(尾身会長)も再三自ら言っている通り、変異株による感染拡大という点がこれまでと大きく異なります。感染力が強い変異株について、国立感染症研究所の鈴木基・感染症疫学センター長は日本感染症学会で「置き換わりが急速に進む変異株の大半を占める英国型の感染力は、従来株の1.5倍」と分析し、「従来と同じ対策では全く立ち行かない新しいウイルスが出てきていると考えなくてはいけない」とも述べています。
今回、緊急事態宣言は5月31日まで延長され、対象も東京都、京都府、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県の1都2府3県となりましたが、専門家会議では「北海道に緊急事態宣言を出すべき」との意見が出たことが明らかになっているなど、さらに追加される可能性も出てきています。結果的に、厳しい表現かも知れませんが、「まん延防止等重点措置」とは何だったのかと指摘せざるを得ません。このまま現在のような「まん延防止等重点措置」「緊急事態宣言」の2段階の制度を状況に応じて逐次追加・解除するような政策で、感染封じ込めができるのでしょうか。
緊急事態宣言を全国で出すべきとの識者意見も
あくまで筆者は感染症の専門家ではありません。ただ、緊急事態宣言を全国に出すべきとの意見は、専門家からも出ています。
5月7日には、感染者数が爆発的増加している岡山県の松山正春岡山県医師会会長が「経済が少し停滞してでも緊急事態宣言は全国で出すべきだ」と述べたほか、4月22日には、沖縄県立中部病院の医師で、沖縄におけるコロナ感染防止対策を担う高山義浩医師(厚生労働省技術参与)も、「いったん全国一斉に緊急事態宣言を発出した方がいいです。東京、大阪、兵庫・・・ 小出しにロックダウンかけても、地方に拡散するばかり。そして、すべてが後手後手になっていきます。」と述べています。
特に高山医師が担当している沖縄県はGW明け後に新規感染者数が再度増加傾向となっていることや、GW明けの9日には愛知など14道県で日別新規感染者数が過去最大となったことを踏まえれば、GWの人流によって感染が地方に拡大したことは明らかでしょう。医療供給体制が都心よりも貧弱な地方で感染爆発が起きれば、致命的な結果をもたらすこともまた然りです。いずれにせよ欧米のような厳格なロックダウンも含めた短期集中型の行動制限を行うことこそが、封じ込めに最も効果的な施策です。
数次にわたる緊急事態宣言によって、人流抑制効果も限定的となってきているのも事実です。これは「オオカミ少年効果」に近いところがあり、複数回の抑制によって「自粛飽き」「自粛慣れ」といった効果をもたらすことは、心理的には当然と言えます。繰り返しになりますが、全国に緊急事態宣言を発出し、短期集中的に厳格で効果的なロックダウンと、必要な定額給付をセットで行うことで一気に感染封じ込めを狙うことこそが、今政府に求められているのではないのでしょうか。
JNNの最新の世論調査では、「菅内閣支持は、先月の調査結果より4.4ポイント下落し40.0%で政権発足後最低となり、管内閣不支持は4.3ポイント増え57.0%」となりました。東京五輪開催という目の前の政策に夢中になり、「自粛一辺倒」や近視眼的・場当たり的な対応に固執するようであれば、この夏に向けて更なる支持率の低下はやむを得ないでしょうワクチン接種の進行状況と、感染拡大状況との2つの指標が、東京五輪開催可否や菅内閣の支持・不支持、さらには衆院解散総選挙の日程にも大きく影響を与えることになります。