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【フランス/COVID19】記録的な感染拡大 年末年始にかけて新しい対策決定

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
新規感染者数グラフ(フランス政府のアプリ「AntiCovid」から)

直近24時間での新規感染数17万9千人!

12月28日夜のニュースで目にしたこの数字は、コロナ禍が始まって以来最多のもの。さすがに衝撃的でした。

25日時点では、およそ10万4千人でしたから、クリスマスの週末が明けて激増したことになります。

12月29日現在の感染者数を示すフランス政府のアプリ「AntiCovid」画面
12月29日現在の感染者数を示すフランス政府のアプリ「AntiCovid」画面

急激な感染拡大で対策強化

これより前、27日夜には、ジャン・カステックス首相とオリヴィエ・ヴェラン連帯・健康大臣の記者会見がテレビ中継され、新しい措置が発表されました。

主なものは次のとおりです。

●ワクチン追加接種時期の前倒し

12月28日より、前回の接種からの必要期間を3ヶ月に短縮。

6ヶ月→4ヶ月と短縮が進んできたが、今後は3ヶ月になる。

ちなみにフランスでは12月22日から、ワクチン接種対象年齢が5歳以上に引き下げられている。

●テレワークの義務化

テレワークが可能な職場では1月3日から週3日、できれば週4日をテレワークにすること。

ちなみに違反した場合は、一人当たり2,000ユーロ(およそ26万円)が雇主に対して課されるとのこと。この措置に伴い、職場での新年祝賀会なども延期することが求められている。

※30日、罰金は一人当たり最大1000ユーロと労働大臣の発言があった。(12月30日18時19分 追記)

●イベントの人数制限

室内は最大2,000人、屋外は5,000人まで。立ち見のコンサートは禁止。

(1月3日から、さしあたり3週間)

●カフェやバーでの立ち飲み、立食の禁止。

劇場、映画館、列車の中での飲食も禁止。

(1月3日から、さしあたり3週間)

●マスク着用

現状の公共の屋内に加え、地方によっては屋外でも義務化の可能性あり。

ちなみにパリの屋外では、現状マスクをしていない人が多い。

※31日から、パリの屋外でもマスク着用義務化(12月30日18時19分 追記)

ロックダウンも外出規制もなし

クリスマスから元旦にかけてのこの時期。

思えば、昨年は国内でも、離れた土地に暮らす家族とクリスマスを過ごすことを諦めた人が少なくありませんでした。

けれども、今年は地方間の移動規制も自粛要請もなく、政府が個人の楽しみに水を差すような動きはありませでした。

加えて、パリ市内では、欧州圏内をはじめ、国外からの旅行者の姿がかなり目につき、この時期ならではの賑わいがあります。

クリスマスムード満点のパリのデパート。巷はプレゼントを買うフランス人、外国からの旅行者で賑わいを見せていた。(筆者撮影)
クリスマスムード満点のパリのデパート。巷はプレゼントを買うフランス人、外国からの旅行者で賑わいを見せていた。(筆者撮影)

年末には、カウントダウンなどのための人出が想像されます。その予防線として、夜間外出禁止令が発表されるかどうか、会見に注目が集まりましたが、それはありませんでした。

また、年末年始後の学校再開は1月3日と、これも予定通りの再開となっています。

日本からの渡航は可能

ところで、フランスの入国規制はどうなっているのでしょう?

フランス政府は、世界の国と地域を感染状況を元に、緑、オレンジ、赤、深紅のゾーンに区別していて、カテゴリーによって入国条件が異なります。

日本はどうかというと、懸念がより少ない緑ゾーン。

フランス出入国措置の目安になる世界地図。緑、オレンジ、赤、深紅の順に、警戒レベルが上がる。
フランス出入国措置の目安になる世界地図。緑、オレンジ、赤、深紅の順に、警戒レベルが上がる。

日本からフランスに入国する際の条件は次のとおりです。

(12月29日現在)

●渡航にあたって、特別の理由は不要

●48時間以内のPCRもしくは抗原検査の陰性証明

●入国時、PCRもしくは抗原検査が無作為に実施される可能性あり

●入国後の隔離措置なし

●規定書式に必要事項を入力

ただし、随時変更の可能性がありますし、フランス国内での「衛生パス」について、また、日本帰国時の措置なども含め、ぜひ次のサイトを参照してください。

在フランス日本国大使館サイト「フランスの出入国措置について」

https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/oshukarafrancenyukoku202101.html

オミクロンの拡がり

ところで、ここにきてどうしてこんなに感染拡大が急なのか?

27日の会見で、ヴェラン大臣は、次のように説明していました。

フランスでは、現在おもにデルタ株とオミクロン株の2種が猛威を奮っていて、デルタは12月上旬にピークに達しました。地方によっては、その後減少傾向に転じたところがある一方で、引き続き増加している地方もあり、全体としては高止まり状態。

オミクロンは、感染力が少なくともデルタの3倍あり、感染者数が2日間で2倍になるという状況です。

そのような展開から、年明けには1日の新規感染者が25万人以上になる予測も出ています。

すでに別のコロナウイルスに感染した人もオミクロンに感染する可能性がある一方、ワクチンの有効性は明らか。3回目の接種直後から90%以上の確率で重症化を免れる効力を発揮するとのことです。

ちなみに、フランスでは12歳以上のワクチン接種者は89.5パーセント。追加接種を完了した人は38.9パーセントとなっています。(いずれも12月27日現在)

今後予想される変化としては、ワクチン接種がさらに強化される見込み。

これまではワクチン未接種者であっても、PCR検査、抗原検査の陰性証明で代用できた「衛生パス」が、1月15日以降「ワクチンパス」に変更され、レストランやカフェ、映画館への入場、長距離列車の移動にはこのパスの提示が義務化される可能性が大です。

つまり、ワクチンを接種していないと、カフェにも入れず、TGVにも乗れないことになってしまいそう…。

ウィズコロナの日々は、まだまだ続きそうな気配です。

筆者が3回目の接種を受けたワクチンセンター。パリ5区の区役所の大広間がセンターに様変わりしていた。(筆者撮影)
筆者が3回目の接種を受けたワクチンセンター。パリ5区の区役所の大広間がセンターに様変わりしていた。(筆者撮影)

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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