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夏の三大アイドルフェスのプロデューサーが語る「2017夏のアイドルシーンを振り返る」イベントレポート

宗像明将音楽評論家
「アイドルLOUNGE」のイラストレーション(『アイドルLOUNGE』提供)

夏の三大アイドルフェスのプロデューサー陣が集結した異例のイベント

2017年9月5日、DMM本社で「アイドルLOUNGEオフイベントVol.8『2017夏のアイドルシーンを振り返る』」が開催された。

「アイドルLOUNGE」とは、アイドル運営や業界関係者のための会員制サロン。現在450人ほどが参加している。

DMM オンラインサロン - コーディネーター:濱田 俊也『アイドルLOUNGE』~アイドル運営、業界関係者が集まる~

その「アイドルLOUNGE」によって開催されたのが「アイドルLOUNGEオフイベントVol.8『2017夏のアイドルシーンを振り返る』」。今回招かれたのは、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の総合プロデューサーである松永直幸とプロデューサーの鈴木愛結、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」の総合プロデューサーである菊竹龍、「@JAM EXPO 2017」の総合プロデューサーである橋元恵一だ。まさに夏の三大アイドルフェスのプロデューサー陣である。

写真左から「@JAM EXPO 2017」の総合プロデューサーの橋元恵一、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」の総合プロデューサーの菊竹龍、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」のプロデューサーの鈴木愛結、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の総合プロデューサーの松永直幸、アイドルコンテンツプロデューサーの濱田俊也。筆者撮影
写真左から「@JAM EXPO 2017」の総合プロデューサーの橋元恵一、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」の総合プロデューサーの菊竹龍、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」のプロデューサーの鈴木愛結、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の総合プロデューサーの松永直幸、アイドルコンテンツプロデューサーの濱田俊也。筆者撮影

特に「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」のプロデューサーがこうしたイベントに登場することは異例であり(今回が最初で最後であるとも語っていた)、夏の三大アイドルフェスのプロデューサー陣が登壇したこのイベントには多くの関係者が参加した。

この記事では、約2時間に渡ったイベントでの発言のメモをもとに、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」「@JAM EXPO 2017」のそれぞれのスタンス、外部とのコラボレーション、キャスティング、開催時期の住み分け、今後の展望などについてまとめていきたい。

イベントの司会進行は、「TOKYO IDOL FESTIVAL」の前総合プロデューサーでもあったアイドルコンテンツプロデューサーの濱田俊也。発言内容は私による要約である点に留意してもらえれば幸いだ。

イベントのスタンス

夏の三大アイドルフェスが、それぞれにスタンスが異なり、しかも共存している点は日本のアイドルシーンのひとつの特徴だろう。そうした状況はなぜ生まれたのだろうか。

筆者撮影
筆者撮影

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の鈴木愛結は、もともと意識していたイベントこそないが、現在は「GREENROOM FESTIVAL」のステージの組み方や配置を意識しているという。両者のステージの配置を比較してみよう。

GREENROOM FESTIVAL - Map

アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜 - マップ

また、同じく「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の松永直幸は、ロックフェス好きとして、ステージの高さにこだわっているという。ステージは基本的に高さ180センチで、そのスケール感は内部でキープしているそうだ。それに対して、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」の菊竹龍は、野外のステージをもっと高くしようとしたものの、公園では耐荷重の問題で頓挫したことも明らかにした。

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の動員数は、2日間(2017年7月8日~9日)で公称30,000人。動員数が伸びている要因として、ステージを5つにして出演者も増やしたことや、グラドルアイドルが出演する「グラドル横丁」の存在を挙げた。1日だけの出演者も増えたが、それでも来場者が増えたことについて、鈴木愛結は「夏の始まりにアイドルを見つけてから『TOKYO IDOL FESTIVAL』に行きたいのかな?」と分析した。

実際、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」ではTask have Funが一気に注目され(いわゆる『見つかった』という状態だ)、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」ではTask have Funのステージに多くの人々が詰めかけていた。「『アイドル横丁夏まつり!!』で見つかったアイドルを『TOKYO IDOL FESTIVAL』で確認しにいく」という流れは確実に存在している。

「アイドル横丁夏まつり!!」でのアイドルのコラボレーション企画について、鈴木愛結は「自分と松永が判断する体制なので、あとはアイドルの所属事務所の許可をもらえればいい」と述べた。こうしたフットワークの軽さは、フジテレビが運営する「TOKYO IDOL FESTIVAL」やZeppライブが主体の「@JAM EXPO」のような企業運営のアイドルフェスとの大きな違いだ。

「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」

菊竹龍は、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」が3日間(2017年8月4~6日)で81,000人を動員したものの、実は台風5号の動きが直前までわからず、運営に関して肝を冷やした場面があったことを吐露。今年から総合プロデューサーになった身として、昨年「TOKYO IDOL FESTIVAL」チームが拡大するために立てた「仮説」に対して、その「検証」と「調整」をしようとしたと述べた。

菊竹龍のオリジナル企画としては、全国での予選会「TIF2017全国選抜LIVE」の開催、指原莉乃(HKT48/STU48)のチェアマン就任、乃木坂46のサプライズ出演、整理券制度の廃止を挙げた。

また、2017年もステージ展開に関しては、フジテレビのイベントの状況などが影響していることを明らかにした。「TOKYO IDOL FESTIVAL」のステージは、フジテレビの社内事情と大きく関連しているのだ。

菊竹龍は、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」の根本の姿勢は「アイドルシーンを活性化させてマスに届ける」ことだと考えているという。そのためにトップアイドルである指原莉乃と連携してマスに届け、シーンを拡大する一助にしようとしたそうだ。

テレビの活用について菊竹龍は、「過去と同じことをしてもフェスとしての発信力のさらなる強化にはならないから、テレビというマスに手を伸ばす選択肢を選びました。ただ、すげえ疲れました」と笑った。「やはり紅白に出演するようなグループが出ると波及する量が違う」と述べる一方、「お客さんには46(乃木坂46や欅坂46)や48(AKB48など)ばかりに見えてしまったのが反省点」とも語った。「NHK紅白歌合戦」出場者から、地方で努力しているアイドルまで分け隔てなく出したつもりだが、客層に届くときには情報量が変わっていたので、ニュースソースのコントロールが必要だと考えているそうだ。

たしかに「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」について話題になったのは、メジャーなアイドルを多く出演させる「メジャー回帰」の流れだ。しかし、菊竹龍は「そういう見え方になってしまった形は、本意ではなかった」と述べる。指原莉乃や乃木坂46が出演するとなれば、そこに注目が集まってしまうのも必然かもしれない。

「@JAM EXPO 2017」

「@JAM EXPO 2017」は、三大アイドルフェスのなかでは唯一すべてのステージが屋内にあり、エアコンも完備されたフェスだが、橋元恵一は意外なことにそこにアドバンテージは感じていないという。「夏フェス感がないし、天気に左右されないけど開放感もない」と笑った。

また、予算対策としてさまざまなコストカットを実施したが、食事など出演者へのホスピタリティは落とさないようにしたという。実際「@JAM EXPO 2017」の楽屋では、複数の種類の食事から好きなものを選べるシステムになっていたり、フルーツやスウィーツが用意されていたりするなど、ホスピタリティの高さを感じた。

「@JAM EXPO 2017」の動員数は、2日間(2017年8月26~27日有料券売数)で公称2万人。動員数について「今年は落ちたので、そこは正直に言おうと思った」と明言していたのには少なからず驚いた。この点については濱田俊也も「勇気がいる」と感心していた。

橋元恵一によると、「@JAM」はそもそも日本のポップカルチャーを紹介するコンセプトなので、「なんでアイドルばかりなんだ」と言われることもあるという。しかし、実際には振り幅もあり、昨年はナタリーと共催してロックバンドや男性アイドルグループを呼ぶなど、毎年チャレンジを繰り返したうえで、今年は「アイドルのコラボレーションと復活をテーマにした」と述べた。そう、Party Rockets、GALETTe、そして5人体制Dorothy Little Happyの1日限りの復活である。

ここで5人体制Dorothy Little Happyの復活について解説する必要があるだろう。2010年に結成したDorothy Little Happyは、メンバーの交代を経て白戸佳奈、高橋麻里、秋元瑠海、富永美杜、早坂香美の5人で活動していた。しかし、callmeを結成した秋元瑠海、富永美杜、早坂香美は2015年にDorothy Little Happyを卒業。その卒業ライヴは少なからぬ遺恨を残す形となったが、ここで詳細は述べない。Dorothy Little Happyは白戸佳奈と高橋麻里のみになったが、白戸佳奈は2017年7月23日のライヴをもって芸能界を引退。現在のDorothy Little Happyは高橋麻里ひとりである。

こうした経緯があったDorothy Little Happyが、「@JAM EXPO 2017」2日目である2017年8月27日に、5人体制のDorothy Little Happyとして復活することになり、アイドルファンに激震が走った。しかし、2017年7月23日にDorothy Little Happyを卒業したばかりの白戸佳奈が、たった1か月ほどでステージに戻ることに「本当に本人の意向は大丈夫なのか?」と不安になったのも事実だ。白戸佳奈の卒業ライヴに立ち会ったひとりとして、私はその不安を抱え続けることになった。それは、5人による素晴らしいステージを「@JAM EXPO 2017」で見た後の現在も消えたとは言えない。

橋元恵一は、5人体制Dorothy Little Happyの復活による「@JAM EXPO 2017」への影響は大きかったという。前述したグループのほかにも復活させたかったグループはあったが、「自分が関わってないものは単に『興行』としてやることになるので難しく、結局自分が深く関わっていたグループになった」と述べたのは重要なポイントだった。5人体制Dorothy Little Happyの復活について、橋元恵一は「興行」とはまた別の次元だと認識しており、この点はイベント最後の私との質疑応答へもつれこむことになる。

外部とのコラボレーション

濱田俊也は、今年の夏の三大アイドルフェスの特徴として、外部とのコラボレーションを挙げた。「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」なら製作委員会方式、「TOKYO IDOL FESTIVA2017」なら「TIF2017全国選抜LIVE」の開催、「@JAM EXPO 2017」なら外部プラットフォームとの連携だ。

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」

松永直幸によると、実は「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」は4社により運営したという。リスク分散のほか、関わる人が増えることにより意見が出たり、クチコミが発信されたりするメリットがあるという。

これに対して濱田俊也は、かつて「TOKYO IDOL FESTIVAL」の製作委員会方式を検討したものの、不調に終わったことを明らかにした。

松永直幸は、製作委員会方式の場合、金銭面において良い点と残念な点はセットであると割り切っていたと述べる。また、単に金銭面で余裕がある人ではなく、理解がある人と組んでおり、「アイドル横丁夏まつり!!」を大きくしたいと展望を語った。

また、橋元恵一は「@JAM EXPO 2017」も製作委員会方式で、昨年は5社が関わっていたことを明かした。「絶対に儲かると決まってなければ一社でやるのは恐い」という橋元恵一の言葉に対して、濱田俊也は「『TOKYO IDOL FESTIVAL』はもっと勉強した方がいいかも」と発言して会場を笑わせた。

「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」

菊竹龍は、ニッポン放送やSHOWROOMと組んで開催した「TIF2017全国選抜LIVE」について、日本全国で頑張っているアイドルを効率良くフックアップするために今回のパートナーと組んだと解説した。

浦えりか(元風男塾)を中心とした、その名も「浦TIF」について、鈴木愛結は浦えりかがアイドルについて詳しく、風男塾好きのアイドルも多いことを指摘。グループが解散して何もしていないアイドルや、引退したアイドルが活躍できるイベントを作りたいと述べた。それを菊竹龍は「セカンドキャリア」と表現。鈴木愛結は「アイドルがやめてもファンの人はやめないので、長くシーンが盛りあがるのがいいな」と述べた。菊竹龍は、2016年から始まった「浦TIF」を発展的にやれて良かったと述べ、濱田俊也も「TOKYO IDOL FESTIVAL」自身が変わるきっかけになったと語った。

浦えりかオフィシャルブログ「浦えりかの裏のうら」 - 浦TIF開催決定!

また、「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」の「グラドル横丁」が、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」で「TOKYO GRAVURE IDOL FESTIVAL 2017」として開催されたことについて、菊竹龍は今年はインフラ改善に腐心し、「コンテンツ内容に関しては松永さんを大きく頼りながら、僕は新鮮な水をグラビアアイドルの入るプールに届けるようにした」と笑った。炎天下のもと3日間開催されるので、常に新鮮な水を供給するのが重要な課題なのだ。

TOKYO GRAVURE IDOL FESTIVAL 2017

「@JAM EXPO 2017」

「@JAM EXPO 2017」が外部と連携する理由について、橋元恵一はプロモーション力の強化を挙げる。そのため「OTODAMA」や「アイドルお宝くじ」といった外部発信してくれるところと組んだという。「アイドルお宝くじ」とは「六本木アイドルフェスティバル」も開催。それぞれで相互プロモーションし、イベントの内容的に差異を出すことで、互いに一定の成功ができたとの認識を示した。

また、期間限定ユニット「サクラノユメ。」は、「@JAM EXPO 2017」の宣伝をしてくれるユニットとして作ったとのこと。「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」に加え、松永直幸もサクラノユメ。の「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」への出演をふたつ返事でOKしたそうで、それが「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」でお披露目された「終演後物販」を「@JAM EXPO 2017」に出演させることにもつながったそうだ。

出演者について

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」は新たなアイドルを見つけにいく場所として定着し、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」は大メジャーからインディーズまで層が厚く、「@JAM EXPO 2017」は5人体制Dorothy Little Happyの復活など予想外の企画を投入する。その背景には、それぞれのイベントのスタンスが色濃く投影されている。

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」

松永直幸は「『TOKYO IDOL FESTIVAL2017』は暴力的」と笑いつつ、「貫禄のあるキャスティングで畏れ多い」とも褒めた。 「@JAM EXPO 2017」の5人体制Dorothy Little Happy復活にも驚いたという。また、東京女子流がアイドルフェスに出る空気感をつかめなかったとのことで、鈴木愛結も「誘ってもいなかった」と述べた。

鈴木愛結は「『好きなアイドルが出るから行こう!』というのではないフェスを目指してきたから、出てくださる方が見つかる形になるといいな。キャスティングは断られたら終わりだからいいんです」と笑った。

橋元恵一も「アイドル横丁夏まつり!!」について「イベント自体に多くのファンがいるのが素晴らしい。新しいグループを発見する場所というイメージがついている」と述べた。

「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」

濱田俊也は、「TOKYO IDOL FESTIVAL」は毎年、歴代それぞれのプロデューサーが示すヴィジョンがあり、今年も菊竹龍なりの方向性があったと指摘。それに対して、菊竹龍は90%ぐらいは思い描いた通りに進んだと述べた。そして、「プラットフォームとして、出演してもらう事務所にもメリットがある、発信力のあるフェスでないといけないと常に思ってる」とも語った。

「@JAM EXPO 2017」

橋元恵一は、「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」にNMB48以外の48/46グループが出演したことについて「全方位のキャスティングに参った。仕方なく別の進み方にしました。本当に世界一のアイドルフェスなんだなと思いましたね、横にいてごめんなさい」と会場を笑わせた。

開催時期の住み分け

夏の三大アイドルフェスは開催時期がずれているが、実はそれぞれ会場の確保に頭を悩ませており、会場のために開催時期が決まってしまう側面も強い。

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」

松永直幸は「もう最後にやりたい、最初なんで。話題になったグループを持っていかれがち」と笑った。鈴木愛結によると、他の時期に移そうとしても「空いてないんですよ」とのことだ。

「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」

現在の会場について菊竹龍は、自由にできる土地ではなく、しかも持ち主も違うために申請が大変だとしつつも、あまり動かずにやりたいと述べた。しかし、2020年の東京オリンピックが近づくと、現在の会場一帯に選手村やスタジアムができるために取り合いになることも指摘。「いつかは時期の変更を決断しないといけないかもしれない」との認識も示した。

「@JAM EXPO 2017」

橋元恵一は、毎年8月末~9月開催の良さを知った上で、「この時期じゃないとダメということはないけれど、会場が取れない」と述べた。「WIRE」以来の付き合いの横浜アリーナとも相談しながら同時期に開催しており、安易な移動は難しいとのことだった。

来年について

夏の三大アイドルフェスのスタンスがもっとも異なるのはこの点かもしれない。それぞれのイベントの方向性がまるで違うのだ。

筆者撮影
筆者撮影

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」

「発掘したい」と即座に答えたのは鈴木愛結だ。その上で、アイドルのコラボレーションや「つりぼり横丁」(アイドルと一緒に金魚釣りができるコーナー)を行っていきたいと述べた。また、松永直幸と鈴木愛結でほとんどのことを決めている体制を強みとして、突き詰めていきたいと語った。

さらに、アイドルへの傷害事件が起きたために、一般企業から協賛を取りにくい状況を指摘。ポジティヴな面を広めることによって、一般企業にも関わってもらい、ステージに屋根を付けたいと述べた。

「お祭りにしたいな、もっと」と語ったのは松永直幸。「お祭りに来た」という感覚を強くして、親子でも来やすいようにしたいと述べた。

「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」

菊竹龍は、ベイビーレイズJAPANが「夜明けBrand New Days」を「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」で歌ってくれたことに触れて(昨年の同曲では大量のサイリウムが投げられる事件が起きた)、「我々の至らなかった部分が帰結して大きく盛りあがった」と述べ、そうしたストーリー性を大事にしていることを明かした。今年の「メインステージ争奪LIVE」で活躍した26時のマスカレイドやTask have Funが来年さらに力をつけて、「TOKYO IDOL FESTIVAL」のヘッドライナーになって戻ってきてくれるなどして、「どんどんいいストーリーをつないでいきたい」と述べた。

「@JAM EXPO 2017」

橋元恵一は、「@JAM」シリーズは年間20本やっており、そこで活躍している人が出演する集大成が「@JAM EXPO」だと述べた。「@JAM」シリーズは海外でも開催しているので、将来的には大きいイベントをアジアでしたいとも語る。また、2010年の「ヲタJAM」に私立恵比寿中学やでんぱ組.incが出演し、現在も出演してくれていることに触れて(でんぱ組.incは一部メンバーがソロで出演)、「時代をともに過ごして、ともに頑張って活動しているグループを必死に応援したい。新しいグループをフックアップするのはもちろんだが、長くやっているところを応援するのも必要」と語った。

最後の一言

濱田俊也から「最後に一言!」と振られたプロデューサー陣の言葉は、図らずもそれぞれ「終わり」と「始まり」を意識したものだった。

「アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜」

「誰がやっているかわからないイベントとしてやってきた」という鈴木愛結は、一組でも売れて起爆してほしいと述べた。

松永直幸は「ここまで続くと思わなかった。『@JAM EXPO』や『TOKYO IDOL FESTIVAL』より先にリタイアする自信がある」と笑いつつも、「続けられるよう屋台骨として関わりたい」と語った。

「TOKYO IDOL FESTIVAL2017」

菊竹龍は、「続けたいと思うけれど、僕や橋元さんは会社にダメと言われたら終わる」と企業が運営する難しさをうかがわせた。また、「これまでの『TOKYO IDOL FESTIVAL』と比べて、よりメジャー拡大路線に見えるかもしれないけれど、ポリシーは変わらない。多くのグループが多くのファンに見つかってほしい。『TOKYO IDOL FESTIVAL』は終わらないために変わり続けているし、来年も変わるけれど、ポリシーは変えずに開催できるよう精進したい」と抱負を語った。

「@JAM EXPO 2017」

橋元恵一は「2013年、当時のプロデューサーさんから『TOKYO IDOL FESTIVAL』は来年やらないかもと聞いて始めたのが『@JAM EXPO』。今はきっかけをくれたことに感謝しています。また『アイドル横丁夏まつり!!』を見ることも原動力になっています。今後も『@JAM』というものがシーンを盛りあげるプラットフォームのひとつになるといいなと思っています」と語った。

終わりに

このイベントの最後、代表質問をする機会を得た。このとき、「@JAM EXPO 2017」での5人体制Dorothy Little Happy復活について、「なぜそこまで大変なことをしようと思ったのか」と橋元恵一に聞いたところ、「自分が見たいものだったからですね」とシンプルな回答が返ってきた。そうしたスタンスが「@JAM EXPO 2017」を「@JAM EXPO 2017」たらしめているのだろうし、だからこそ多くの人々が5人体制Dorothy Little Happyを見るためにチケットを購入することになったのだろう。

ただ、アイドル運営と業界関係者が集まるイベントである性格上、重大なことを聞き忘れてしまった。観客のホスピタリティの問題である。特に「TOKYO IDOL FESTIVAL」は、ロックフェスも含めて「日本で一番過酷なフェス」とも言われる。夏の三大アイドルフェスには、観客のホスピタリティも念頭に置きながらぜひ来年も開催してほしいと願う次第だ。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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