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「日本の女子ゴルフに挑戦するならイ・ボミさんのように」新世代パク・ヒョンギョン【現地取材】

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
パク・ヒョンギョン(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)

今季からギャラリーの受け入れが解禁となり、有観客で開催されているKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアー。

その様子を確認しようと先日行われた仁川(インチョン)のベアーズベスト青羅(チョンラ)GCで行われた『ロッテオープン』(6月2日~4日)を取材してきた。

首都ソウルの近郊とあって会場は多くのギャラリーで賑わっていたが、そのなかでギャラリーたちが人だかりを作ってサインを求めていたのがパク・ヒョンギョンだ。

日本で“ミレニアム世代”と呼ばれる古江彩佳、吉田優利らと同じ2000年生まれのパク・ヒョンギョン。韓国では彼女を含めチョ・アヨン、イ・スンヨン、イム・フィジョンら2000年生まれの選手たちを「ミレニアム世代」と呼ぶのだが、その中でもパク・ヒョンギョンの人気は群を抜く。

実力と人気を兼ねそなえた選手の証とも言える「KLPGA広報モデル」にも3年連続で選ばれている。ギャラリーたちが人だかりを作るわけだ。

(参考記事:韓国の人気女子ゴルファーが“純白ウェア”公開で話題!パク・ヒョンギョンに「カワイイ」の声続々【PHOTO】)

「今はもう有観客で大会が行われているので、以前よりも楽しくプレーできている感覚があります。私が優勝した3つの大会はすべてギャラリーがいなかったので…」

有観客開催になって多数のギャラリーの姿があった(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)
有観客開催になって多数のギャラリーの姿があった(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)

そう言って笑ったのは最終日のラウンドを終えたあとだった。日本から訪ねて来たことを喜んでくれながらインタビューにも快く応じてくれた。

「大会が再び有観客で行われるようになったなかで、多くの方々が私を知ってくださり、たくさん応援してくれていることに幸せを感じています」

元プロゴルファーだった父親の影響で、小学2年生からゴルフを始めたパク・ヒョンギョンはアマチュア時代の2014~2017年には韓国国家代表に選ばれ、同期間にはアマチュア世界大会「世界女子アマチュアゴルフチーム選手権」優勝も経験するなど、プロ以前から将来を嘱望された“スーパーエリート”の一人だが、彼女の名が日本にも届いたのは2020年5月だった。

韓国のメジャー大会のひとつである第42回KLPGAチャンピオンシップで初優勝。当時は新型コロナ流行初期で各国のゴルフツアーが中断されたなか、世界に先駆けて開幕したKLPGAツアーのメジャー大会で優勝したことで、日本でも「若き新女王」などとその活躍が伝えられた。

ただ、そのKLPGAチャンピオンシップはもちろん、昨季もKLPGAは無観客。この2年で3勝したパク・ヒョンギョンだが、この優勝の喜びをギャラリーと分かち合うことができなかった。それだけに、今季からギャラリーの入場制限が解除されたことで、ゴルフ場に活気が戻りつつあることに喜びを感じているという。

「ギャラリーがいることで会場に華やかさが戻ったというか。これまでに比べてプレーしやすいのは間違いないですね」

(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)
(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)

そう語りながら嬉しそうな笑顔を見せたパク・ヒョンギョンに、どうしても直接聞きたいことがあった。

「海外に進む計画があるとすれば、25歳ぐらいのときにJLPGA(日本女子ツアー)に挑戦してみたい」

通算2勝目を挙げた2020年7月のISドンソ釜山オープン優勝記者会見で彼女はそう言って、「将来的には日本ツアーに参戦したい」という意向を示したのだ。

あれから2年。その意志に変わりはないのか。ストレートに聞いてみると、彼女は語り出した。

「私自身、海外進出に関してはアメリカより日本への関心がずっとありました。(2020年のKLPGAチャンピオンシップで)私が初優勝をしたとき、日本の方々からの注目があったことも聞いています。だからこそ、日本への進出を考えた時期もありました」

ただ、新型コロナのこともあって当面は韓国国内でのプレーに専念するという。それでも、「海外進出はまた今後じっくり考えるつもりですが、個人的にはLPGA(米国女子ツアー)よりJLPGAの方が興味はあります」と、今も日本ツアーへの関心があることを打ち明けた。

ちなみに、親交のある日本人選手がいるかを聞くとこんな答えが返ってきた。

「カツ・ミナミ(勝みなみ)、モネ・イナミ(稲見萌寧)、フルエ・アヤカ(古江彩佳)、マツバラ・ユミ(松原由美)、ナサ・ハタオカ(畑岡奈紗)…。みんな国家代表の頃に対戦した選手たちです」

スラスラと名前を挙げたのにはさすがに驚いたが実際に連絡を取り合うことはあまりないらしい。

「ただ、ユウリ・ヨシダ(吉田優利)とはインスタグラムで友達なので、そこで近況を知ることはありますよ」と

茶目っ気たっぷりに語る仕草に、人気の秘密を垣間見たような気もした。ロールモデルは女子ゴルフ世界ランキング1位のコ・ジンヨンとしつつも、「もし私が日本に行くことになれば、そのときは当然イ・ボミさんのような選手を目指したいですね」と見出しになりそうな言葉も忘れなかった。

かつて2年連続JLPGA賞金女王に輝いた大先輩のように、数年後には日本ツアーで活躍するパク・ヒョンギョンの姿を見ることはできるのだろうか。まだ22歳とポテンシャル十分な彼女の今後が楽しみだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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