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タンカー攻撃の自爆ドローン破片回収、イラン製と断定

JSF軍事/生き物ライター
左下:回収した破片(米中央軍発表)。右下と上:イラン製ドローン(フーシ派発表)

 8月6日にアメリカ中央軍は、7月29日にオマーン沖で攻撃を受けたタンカー「マーサー・ストリート」に関する調査報告書を発表しました。被害タンカーから自爆ドローンの破片を回収し、その部品の形状からイラン製自爆ドローンと同一の部品であると結論付けています。

 攻撃は先ず7月29日夜に2回行われたもののこれは失敗に終わり、日付けが変わって7月30日に1機のドローンが突入しブリッジ天井で爆発、船員2名が死亡しています。

U.S. Central Command Statement on the Investigation into the Attack on the Motor Tanker Mercer Street - USCENTCOM

アメリカ中央軍の発表した資料より、回収された自爆ドローンの垂直尾翼
アメリカ中央軍の発表した資料より、回収された自爆ドローンの垂直尾翼

 この垂直尾翼の形状には筆者も見覚えがあります。今年の3月にイエメンの武装組織フーシ派が発表したイラン製新型ドローン「ワイド(Wa'id)」の垂直尾翼(というより動翼が付いていないので垂直安定板)に形状が酷似しているのです。

フーシ派が2021年3月11日に発表したイラン製デルタ翼ドローン「ワイド」
フーシ派が2021年3月11日に発表したイラン製デルタ翼ドローン「ワイド」

【参照】フーシ派のイラン製デルタ翼ドローン「ワイド」の技術的評価(2021年3月12日)

参考比較 左:回収された破片(米中央軍発表)右:イラン製ドローン(フーシ派発表)
参考比較 左:回収された破片(米中央軍発表)右:イラン製ドローン(フーシ派発表)

 ただしこの時に発表された自爆ドローン「ワイド」には光学カメラが付いておらず、指定した座標に飛んで行くGPS誘導では固定目標しか狙えないので、洋上移動目標を狙うことはできません。タンカーのブリッジを精密に狙うような攻撃を行うには光学カメラが必要になるので、光学映像誘導式に改良された派生型が存在している可能性があります。

 あるいは付近の無関係な船への誤爆になる可能性があるのを承知でパッシブレーダー誘導式の自爆ドローンを飛ばして、水上レーダーの装着されたブリッジ付近に突入してきた可能性も考えられます。

アメリカ中央軍の発表した資料より、過去に発見されたイラン製ドローンとの比較
アメリカ中央軍の発表した資料より、過去に発見されたイラン製ドローンとの比較

 左の写真の白い部品が「マーサー・ストリート」から回収された自爆ドローンの垂直尾翼(垂直安定板)の部品、右の写真の黒い機体は2020年にイエメンのマリブで撃墜回収されたフーシ派のイラン製デルタ翼ドローンの残骸です。

 この黒い機体は「ワイド」よりも小型の機体ですが、主翼が同じデルタ翼で垂直尾翼の形状や取り付け位置も酷似しており、技術的に同系統の兄弟機だと思われます。2019年にサウジアラビア石油施設を攻撃したドローンもデルタ翼でした。

 「マーサー・ストリート」への攻撃は、この系統のイラン製デルタ翼ドローンで行われました。ただしまだ確認されていない対艦攻撃が可能なセンサーを搭載した新型が投入されたと推定されます。

アメリカ中央軍発表資料よりタンカー「マーサー・ストリート」被害状況
アメリカ中央軍発表資料よりタンカー「マーサー・ストリート」被害状況

【関連】オマーン沖でタンカーにドローン攻撃、死者2名

 なお8月6日、G7(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)は共同で声明を発表、「マーサー・ストリート」攻撃の犯人はイランであると名指しして非難しました。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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