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「甘い」を断ちたい。早慶戦制した早稲田大学、日本一への覚悟。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
左から伊藤主将、大田尾監督(筆者撮影)

 ラグビーの「早慶戦」は今年11月23日、第100回目を迎えた。関東大学対抗戦Aの早稲田大学対慶應義塾大学の一戦。東京・国立競技場であり、早稲田大学が43―19で勝利した。

 終始、連続攻撃で前に出たり、数的優位を作ったりし、混とん状態からのスコアも生んでペースを掴んだ。

 試合後、大田尾竜彦監督と伊藤大祐(示に右)主将が会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

大田尾

「慶應さん(との試合)は非常にコンタクトのエリアでプレッシャーをかけ合う。強み、カラーがはっきりしたチームなので、それに対して自分たちがどんな戦いができるかについて話し、試合に臨みました。うまくコントロールしながらやってくれた。今日、出た課題を次の明治戦に活かしていきたいと思います」

伊藤

「ブレイクダウン、コンタクトで勝負しに行こうとしていて、そこについてはよかった。ただ、ちょっとしたミス、隙を慶應さんに行かれた(突かれた)部分も、何回かあった。帝京大戦でもやられた部分が多かった。走っていないわけではないんですが、もう少し、色んないっこ、いっこを、僕自身も率先してやっていきたいです」

——キックをされた後に戻る反応がよく、キックを追う鋭さがあった。

大田尾

「帝京戦(後述)後は、試合のよかったところ、悪かったところ、それとは別に『こういうことをやったらもっと伸びていくよね』の3本柱で過ごしてきた。キックチェイスは、その一番、最後のところ。これまでやれていなかったけど、伸びしろとしてあるよねという部分。きょうまでの約10日間で、取り組んできました。もちろん蹴るところ、攻めるところの判断など、色々な課題はありますが、練習してきたことはうまく出たかなという風に思います」

——1年目で主力入りしたナンバーエイトの松沼寛治選手、ウイングの矢崎由高選手について。

大田尾

「2人ともスピードという強みがあり、物おじせずにやっています。チームにいいアクセントを加えている。2人には、チームのやるべきことをやりながらものびのびやって欲しい。彼らのスピードを活かせるようなデザインも組んでいます。気負わず。それを、4年生が背負って」

——早慶戦という舞台装置について。

大田尾

「先輩たちが築いたひとつの財産。伊藤主将がリーダーの時に100回目。いままでのOBの方が見ていて『早稲田らしいよね』と納得するシーンをいくつ作り出せるのか…と送り出しました。非常に責任がある試合です。それを乗り越えたら、個人も、チームも大きく成長できる」

伊藤

「100回目ということで、すごい重圧というか、普段とは違う試合。そう感じないようにしようと思っていたんですけど、感じてしまうもので。100回目という意味を噛みしめることに価値があるというか、そんな風に感じられた。それを早稲田の今後に活かす。プレッシャー下でできたこと、色んなことをレビューして次に備えたいです。

(慶應義塾大学は)日本で一番古いチーム。変なプレッシャーを常に感じている。きょうも点数は開きましたけど、こっちはそんな気持ちはなくて。抽象的ですが、そういった相手だなというところです。試合後は、本当に勝つことをすべてにおいて大事にしてやってきたゲームなので、多少、硬い部分はあったと思いますけど、ほっとしている部分が大きいです」

——大差を付けられた。

伊藤

「フォワードのセットプレーが安定したことが大きい」

大田尾

「セットプレーが安定したことで、上から見ると選手にいい意味で余裕があった気がした。判断に対しての余裕が、あの点差を生んだかなと思っています」

——後半3分。フェアキャッチから駆け上がり、佐藤健次選手、矢崎由高選手とつないでトライを奪いました。

伊藤

「ハイパントからのフェアキャッチだったので、相手が(競り合うために)来ているのはわかっていて、(捕球位置から相手が)10メーター、下がっていないのもイメージしながらゲームに臨んだ。仕掛けていこうと。

後半一発目で獲れたのはよかったですけど、ちょっと(相手にとっては)アンラッキーなところはあった。チームとしては、いいトライと考えすぎないようにしていました」

——矢崎選手のサポートについて改めて。

伊藤

「凄い感性だと思います。4年生も彼には伸び伸びやって欲しいところがある。何回かミスはありましたけど、1年生、2年生には思い切りやって欲しい思いはあります」

——相手スタンドオフの山田響選手が、防御の裏へ鋭いキックを放っていました。最後尾のフルバックに入った伊藤選手はどう感じましたか。

伊藤

「早稲田も2フル(後ろの守りは2人)でスペースが空いていると思った。こっちとしても(蹴り込まれると)わかっていた。イーブンなプレーだったので何とも言えないですが、そのあたりの反応も、もうちょっとあげていきたいです」

——伊藤主将に関して。

大田尾

「彼が大事にしているもののメッセージ性は強くなっている。ゲームに与える彼の影響力も日に日に増している。去年の決勝から、大きく成長してくれていると思います。あとは最後の残りのところで、彼がどういう振る舞いをするかです。自分に隙が無く、常にグラウンドの上に立って、仲間を鼓舞できたら、非常にいいんじゃないかと思います」

 目指すは大学日本一だ。大学選手権では歴代最多の16回の優勝を誇るも、昨季は決勝で2連覇した帝京大学に20―73で完敗。フィジカリティをはじめとした彼我の差を埋めるべく、鍛錬を積んできた。

 今年の対抗戦では、エラーの多かった帝京大学に21―36と惜敗している。選手権での再戦とリベンジを狙う。現在地と今後の展望について、2人はこう述べた。

大田尾

「対抗戦は残り1試合(12月3日/国立で明治大学戦)。次の試合へいつも通り準備をするだけなんですけど、いまから自分たちの持っているものを洗練させていくと言いますか、研ぎ澄ます作業になるかなと。新たに多くのものを加えて何かをするというより、今まで1年間やってきたものに自信を持って、ディテールを詰めて…。そこですね。本物の武器にしていきたいです」

伊藤

「1週間、自分自身の取り組みに関して、少し甘いところがあったので。100パーセントでやったつもりの部分があったので、自分が一番、率先して、次戦にかける思いを作っていきたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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