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フィリピンの東で台風25号発生、火曜日以降は北陸や北日本は冬の嵐で大雪のおそれ

饒村曜気象予報士
フィリピンの東海上の熱帯低気圧の雲(12月11日15時)

寒気南下

 令和4年(2022年)は、残暑が厳しく秋らしい季節の到来が遅れていましたが、12月になると、西高東低の冬型の気圧が続くようになり、日本列島には寒気南下が続いています(図1)。

図1 西高東低の気圧配置(12月11日15時)
図1 西高東低の気圧配置(12月11日15時)

 このため、12日の天気予報は、東日本の日本海側から北日本日本海側では雲が多く、特に北日本の日本海側では午前中を中心に雲が多く、雪となる所がありそうです。

 また、北日本太平洋側~西日本では、日中は晴れるでしょう。南西諸島は雲が多く、先島諸島では雨の見込みで、日本は大きく3つにわけることができる天気分布が続いています。

 ただ、日本付近に南下している寒気は、12月2~3日頃に比べると弱まっており、最低気温が氷点下となる冬日の観測地点数は減っています。

 12月3日には、気温を観測している915地点のうち、518地点(全国の約57パーセント)が冬日でしたが、11日は229地点(約25パーセント)に減っています(図2)。

図2 夏日と冬日の観測地点数の推移(10月16日~12月11日)
図2 夏日と冬日の観測地点数の推移(10月16日~12月11日)

 二十四節季でいうと、霜降をすぎると、最高気温が30度以上という夏日を観測する地点数が20パーセントを超えなくなり、逆に冬日が20パーセントを観測する日が出始めました。

 立冬をすぎると、ほとんどの日で冬日が20パーセントくらいとなり、小雪をすぎて12月になると、冬日を観測する地点が4割を超えることが多くなり、最高気温が氷点下という真冬日も観測されるようになりました。

火曜日以降に南下する寒気

 冬季間、シベリアでは太陽が当たらないために地表面付近が冷やされ、寒気団が形成されます。

 この寒気団は南に向かって流れだし、日本にやってくるのですが、全体としてはドーム状になっています。

 寒気団内部では下向きの運動をしながら南下し、寒気団の背は低くなりますが、寒気団の先頭が北緯40度位に南下するまでは、約5500メートル位の高さの天気図を見ていると動向が良く分かります。

 大雪をもたらす目安とされるのは、上空約5500メートルで氷点下36度以下という寒気で、テレビなどで、気象予報士が上空約5500メートルで気温が云々と説明するのはこのためです。

 この上空約5500メートルで氷点下36度以下という寒気は、来週の火曜日以降、日本海北部から北日本に広がってくる予想となっています(図3)。

図3 上空約5500メートルの気温分布予報(12月13日夜の予想)
図3 上空約5500メートルの気温分布予報(12月13日夜の予想)

 12月2~3日頃に比べると、冬日の観測地点数が半減していますが、この強い寒気の南下によって、13日(火)以降は冬日や真冬日の観測地点数が増え、北陸地方や北日本は冬の嵐で大雪のおそれがあります。

 真冬とは違って地上付近の気温はまだ冷え切っていないことから、真冬の氷点下36度の寒気南下より、今回の氷点下36度の寒気の方が、上下の温度差が大きくなりますので、より激しい現象が起きるため、真冬以上の注意・警戒が必要です。

 寒気南下の第三段階以降になると、寒気団の背は低くなっており、上空約5500メートルでは説明できなくなりますので、気象予報士は上空約1500メートルの寒気の説明に切り替えます(図4)。

図4 寒気の南下についての説明図
図4 寒気の南下についての説明図

 日本の上空約1500メートルの気温も、南下してくる寒気の強さの目安として使われるのは、寒気が立体的であるからです。

 そして、第四段階になると寒気団は衰え、地表付近の薄い層になってゆきます。

 日本に南下した寒気団が衰えたのですが、北の方では新しい寒気団が現れ、南下のチャンスをうかがっているように、強い寒気は繰り返しやってきます。

 週明け以降、平地でも雪となる目安とされる、上空約1500メートルで氷点下6度以下という寒気は、九州北部から中国地方、近畿北部、北陸と北日本を広く覆ってくる見込みです(図5)。

図5 上空約1500メートルの気温分布(12月14日朝の予想)
図5 上空約1500メートルの気温分布(12月14日朝の予想)

 つまり、広い範囲で、降水現象があれば雪として降ることを示しています。

 冬の始めの頃は、比較的気温が高い時の雪ですので、湿って重く、着雪しやすいという特徴があります。冬場に比べ、積雪量の数値以上に影響が大きいので、十分に注意する必要があります。

 また、冬の始めは、ノーマルタイヤで出かけ、立ち往生してしまう人が少なからずいますが、その人だけの問題にとどまりません。立ち往生した車が道をふさぐため、スノータイヤ装着など、雪対策をしている車まで巻き込まれて立ち往生し、走行する車にとっては影響のない降雪まで積もり重なって大事になります。

 すこしぐらいの距離だから、私だけならという言い訳をせず、雪の予報が出たら、ノーマルタイヤの車では出かけないでください。

 最新情報の入手に努め、13日(火)以降の寒気の南下による北陸や北日本の冬の嵐や大雪に注意・警戒をしてください。

台風25号の発生

 日本は冬になっていますが、熱帯域は12月といってもまだ海面水温が高く、台風が発生するとされる海面水温27度以上の暖かさがあります。

 熱帯域は12月といっても夏が残っており、条件が整えば、台風が発生する可能性があります。

 令和4年(2022年)12月11日21時、フィリピンの東海上にあった熱帯低気圧が発達し、台風25号になりました(タイトル画像、図6)。

図6  台風25号の進路予報と海面水温(12月11日21時)
図6  台風25号の進路予報と海面水温(12月11日21時)

 令和4年(2022年)は、8月までは発生数が少なく、接近数と上陸数はほぼ平年並みに推移していました。

 しかし、9月と10月に台風が多く発生していますので、台風25号が発生すれば、発生数、接近数、上陸数ともに平年並みということになります(表)。

表 令和4年(2022年)12月8日までの台風発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風で月をまたぐ場合があり、月の値の合計は年の値より大きくなることがある)
表 令和4年(2022年)12月8日までの台風発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風で月をまたぐ場合があり、月の値の合計は年の値より大きくなることがある)

 資料は少し古くなりますが、筆者が調査した台風の統計では、12月の台風は北緯10度くらいを西進し、フィリピンに上陸することがほとんどです。

 ごくまれに北上するものがありますが、日本の南海上の北緯20度位までしか北上しません(図7)。

図7 台風の12月の平均経路
図7 台風の12月の平均経路

 小笠原諸島は、平成15年(2003年)12月1日に台風21号が、昨年、令和3年(2021年)12月3日に台風21号が接近したように、10年に1回くらいは12月に接近することがありますが、台風25号が発生したとしても、すぐに熱帯低気圧に変わる見込みですので、10年に1回の接近ということはなさそうです。

 ただ、小笠原諸島付近には前線が停滞しています。

 台風25号が接近しなくても、台風周辺の湿った風が前線を刺激し、大雨となる可能性がありますので、小笠原諸島では台風情報などに注意してください。

タイトル画像、図3、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:筆者作成。

図7の出典:饒村曜・宮澤清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計 月別発生数・存在分布・平均経路、研究時報、気象庁。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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