実在した恒星間宇宙船計画「ダイダロス」ぶっ飛んだ核パルスエンジンと、過去に人々が夢見た人類移住計画
ダイダロス計画は、英国惑星間協会が1973年から1978年にかけて行った、核パルスエンジンを搭載した恒星間宇宙船の研究計画です。本記事では、本気で検討が進められていたダイダロス号のぶっ飛んだ性能をご紹介します。
■約5.9光年先の惑星への引っ越し計画!?
当時、へびつかい座のバーナード星に、木星の1.6倍の質量を持つ惑星が発見されたというニュースがあり、バーナード星は一躍有名となりました。そして、ダイダロス計画の目的地も、太陽系から約5.9光年の地点にあるバーナード星が想定されました。ちなみに、この観測結果は望遠鏡の誤差によるものではないかと指摘され、後にこの惑星発見の報告は誤りであったことが判明しています。
■光速の12%に到達!!驚異の核パルスエンジン
そして、このダイダロス号は全長は195.3メートルとされており、その巨大さゆえから地球上ではなく、軌道上で建設されることが考えられていました。ダイダロス号の重量は5万4千トン、そのうち燃料は5万トンです。実質的なペイロードは450トンと設計されていました。2段式エンジンの宇宙船として考えられており、第1段は約2年間動作し、宇宙船を光速の7.1%まで加速した後、放棄されます。第2段は約1.8年間で宇宙船を光速の12%まで加速して停止し、その後は46年間の宇宙航行を行います。光速の12%、デブリや隕石にぶつかったら一溜りもない気がしますね。
そして、肝心の核パルスエンジンについて説明します。ダイダロス号では、電子ビームによる重水素、ヘリウム3のレーザー核融合を使い、間髪なく爆発を連続させる推進方法が考えられていました。1秒間に250個の燃料ペレットを核融合爆発させ、そこから生じたプラズマは磁場によるノズルにより制御されます。また、核融合を起こす反応室の半径は50メートルです。核融合で発生したプラズマを押し返し、宇宙空間に排出・噴射させるための磁場は、4組の超電導コイルによって発生させるとのことです。
■ダイダロス計画の行く末
ダイダロス号の第1段エンジンは、毎秒250回、2.5ギガジュールの電子ビームを数グラムの燃料に打ち込んで核融合を起こさせます。このときの出力は100億kW、136億馬力にも達します。もはや想像がつかないですね。アポロ宇宙船を打ち上げた、人類最強のロケットエンジンであるサターンVでさえ、出力は約1億6千万馬力であることを考えると、ダイダロス号がいかに恐ろしいエンジンを搭載しているかがわかります。エンジンの最適噴射速度は光速の8.94%ですが、最適値まで噴射速度を上げることは難しく、光速の約3%に到達すると計算されている。本当にそんなことできるの?という感じですね。平均推力は7.5メガニュートンとのことで、もし仮にも交通事故でも起こしたら、木っ端みじんですね。
非常に壮大すぎるダイダロス計画ですが、もはやSFの世界のような気もします。1978年以降からはダイダロス計画に関する続報は発表されていません。是非いつか恒星間宇宙船を完成させて欲しいですね。
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