ハリネズミの「触らないでアピール」をわかって!動物カフェには適さない理由とは?
ハリネズミは、人気のテレビ番組で紹介されたり、SNS上で動画や写真が数多くアップされたりしています。つぶらな瞳なのに、ツンツンした針があり、その落差がフォトジェニックな動物ですね。そんな理由から日本では「ハリネズミカフェ」が増えています。筆者の動物病院には、たまにやってくる程度ですが、真菌の子を診察したことがあります。そんな経験を踏まえて、ハリネズミカフェを取材してきました。今回は、そこで感じた残酷な現実とは何かを一緒に考えてみましょう。
なぜ、ハリネズミカフェが残酷なの?
ハリネズミカフェに行った人は、ただ撫でただけなのに、なぜ残酷なの?と思うでしょう。サイトを調べると、ユニークで特徴があるカフェにしたいから、おしゃれなハリネズミカフェをオープンしたいと思っている人がいるかもしれません。しかし、以下が問題でカフェには適さないのです。
・知らない人に複数回、触られる。
警戒心が強く臆病な動物です。そのために、あの針を出して、触らないで!をアピールするのです。動物の中では、犬のラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーのように、人とコミュニケーションを取るのが好きな動物もいます。しかし、ハリネズミは、そういう動物ではないのに、触ってなんぼの世界にいていいのでしょうか。
・営業時間が、昼間になっている。
夜行性の動物です。昼間は睡眠の時間です。その睡眠中に起こされて触られるのです。充分な睡眠時間が確保できないので、ストレスがたまりますね。
・カフェの中が明るすぎる。
ハリネズミは、ネズミと書きますが、モグラの仲間です。そのため明るいところが苦手なので、室内は暗い方がいいですね。
それでは、ハリネズミの習性をじっくり見ていくと、さらにハリネズミカフェの残酷さ理解していただけると思います。
ハリネズミの習性
・ハリネズミとは?
ハリネズミ目科ハリネズミ亜科に属する哺乳動物。実は生物学的にはネズミよりモグラの近縁です。名前と違うので驚きですね。
・餌とは?
昆虫やミミズ、カタツムリ、カエル、芋虫、果物、きのこ、木の実などを食べる雑食性です。いまでは、ドックフードなどのようなハリネズミ専用のフードがあります。おやつとしてミルワーム(飼育動物の生餌とするために飼育・増殖されているゴミムシダマシの幼虫)をあげたりもします。
・自然界ではどこにいる?
野生のハリネズミはヨーロッパ、アフリカ、中近東、ロシア、インドに生息しています。モグラと同様、土に穴を掘って生活をして、明るい場所よりも薄暗い場所が好きです。冬には冬眠します。
・行動は?
単独行動で、群れでは生活をしていません。1匹で飼うことが望ましいです。
・五感は?
モグラと同様にほとんど見えないため、嗅覚と聴覚が優れています。筆者がハリネズミカフェに行ったときも、懸命にニオイを嗅いで筆者を認識しようとしていました。
・寿命は?
寿命は2~5年です。3年ぐらいものが多いですね。ハリネズミの習性を理解して飼育すると8~10年生きる場合もあるそうです。
・値段は?
種類や色などによって異なりますが、相場は1万数千円から5万円ぐらいまでです。
・大きさは?
300gから500gです。大きいものは、1kgぐらいまでいます。
こんな習性を持っています。カフェで飼うより、意外とひとり暮らしの人には向いているかもしれません。
ひとり暮らしにハリネズミは向いている?
犬や猫を飼いたいけれど世話する時間がない、でもなにかペットをほしいと思っている人には向いているかもしれません。それは以下の点です。
・夜行性
昼間は仕事で留守にしてもその間は、ハリネズミは睡眠時間なので、大丈夫です。帰宅したら、活動しているので、ハリネズミにさみしい思いをさせることはあまりないです(夜に働いていて、昼間に自宅にいる人には、不向きかもしれません)。
・鳴かない
犬猫のようには鳴きません。それで、鳴き声で困ることはないです。
・ニオイがしない
ウンチやオシッコをしっかり処理していると、ニオイがほとんどないです。体臭もあまりないです(フェレットはイタチの仲間なので、排泄物をきちんと処理しても体臭があります)。
ただ、犬猫のようにフレンドリーではないので、それを期待して飼育するとよくないですね。初めは臆病なので、なかなか懐きません。時間をかけてゆっくり接していると、名前を呼んで手を伸ばせば乗ってきてくれたりします。
ハリネズミにも動物愛護の精神を
どのような動物でも人の管理下にいる動物の5つ自由を守ってあげることが大切です。
5つの自由とは?
・飢え・渇きからの自由
・痛み・不祥事・病気からの自由
・不愉快からの自由
・本来の行動をとれる自由
・恐怖・抑制からの自由
ハリネズミの本来の行動様式を知って、展示することが大切です。
営業時間を変更して暗い環境で飼育すべきですね。旭山動物園のように、行動展示型にして、運がよければ、ハリネズミを触れるけれど、そうじゃないときもあるということです。
筆者の提案
「ハリネズミカフェ」ではなく「ハリネズミバー」で夜にハリネズミと触れ合うことができるといいですね。それでもハリネズミが好きで、ハリネズミの習性をよく理解している人にやってもらいたいです。
食欲や排泄物、行動の変化や皮膚や針、爪などの変化、体重の変化などを常日ごろから観察してあげてくださいね。
コロナ禍で、海外の観光客は、ほとんどいませんが、外国のガイドブックにもハリネズミカフェが載っているらしいです。日本の動物愛護の精神が世界に知られますね。その種が持っている行動をよく理解して、動物カフェをすることが重要です。
関連記事として「癒しが一方的な動物カフェの闇… 「フクロウカフェ」に行って残酷な生活を覗いてきた!」も書いていきます。