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台風5号から離れても、南東風が続くため西日本の南東斜面の大雨は継続

饒村曜気象予報士
台風5号の雲とその南の熱帯低気圧の雲(7月30日15時)

台風5号の雲

 台風5号は、7月29日夜に鹿児島県屋久島と奄美大島の間を通過して東シナ海に入り、その後、東シナ海を北上し続けています。

 そして、黄海で熱帯低気圧に変わる見込みです(図1)。

図1 台風の進路予報(7月30日21時)
図1 台風の進路予報(7月30日21時)

 台風に関する予報は、最新のものをお使いください

 台風が発達する目安の海面水温は27度と言われていますが、黄海の海面水温は27度以下ですので、この海域に近づくと、ここで台風5号の最大風速が17.2メートル以下になって台風ではなくなるという予報です。

 台風5号は極端に強い風は吹かなかったのですが、雨は違います。

 台風5号の中心付近には、非常に強い雨をもたらす雲はありませんが、西日本の南海上から南西諸島付近の広い範囲で雲がまとまっています。

 そして、その中には、熱帯低気圧に対応する雲の塊もあります(タイトル画像参照)。

 台風5号に伴う雨は、台風進路に近い九州南部より、少し離れた四国南西部で多く降りました(図2)。

図2 24時間降水量(7月30日21時までの24時間)
図2 24時間降水量(7月30日21時までの24時間)

 そして、台風が遠ざかっているといっても、熱帯低気圧が接近する沖縄本島や台風5号から離れた九州の南東斜面では、今後も200ミリ以上の雨が計算されています(図3)。

図3 36時間予想降水量(8月1日9時までの36時間予想)
図3 36時間予想降水量(8月1日9時までの36時間予想)

 これらは、地形性降水のためで、台風5号の南にある熱帯低気圧も関係しています。

地形性降水

 山の風上側では、山に当たった空気が強制的に上昇することで雨が強まります。

 これが、地形性降水です。

 逆に、山の風下側では、風上側で雨が降った後の空気がやってきますので、雨が少なくなります。

 山の風上側・風下側は、その時の風向によって変わります。

 東風の場合は山の東斜面が、南東風の場合は山の南東斜面が、南風の場合は南斜面が風上側となり、この場所で雨が強くなります(図4)。

図4 地形性降水の説明図
図4 地形性降水の説明図

 台風による地形性降水は、台風の移動に伴って風向が変わることが多いことから、風上側にあたる場所が変わり、強い雨が降っても長続きしません。

 しかし、台風5号の場合は、台風5号の南側に熱帯低気圧があります。

 熱帯低気圧がなければ、台風5号の進行に伴って西日本の風向は、東から南東、南と変化するのですが、今回は熱帯低気圧があるために、南東の風が継続する見込みです(図5)。

図5 予想天気図(7月31日9時の予想)
図5 予想天気図(7月31日9時の予想)

 このため、西日本の南東斜面という同じ場所で強い雨が降り続き、雨量が多くなっているのです。

 台風5号は、台風が東シナ海を北上し、日本への直接的な影響はないといっても油断できません。

 台風5号は中心部より周辺が危険な台風です。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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