「新型肺炎感染者、国内で400人超」報道はミスリード 350人超が船内感染
新型コロナウイルスをめぐって「新型肺炎感染者、国内で400人超す」との報道があった。だが、これは日本側でウイルス検査を行って感染が確認された人数で、その大半がクルーズ船内の感染者や中国・武漢からの帰国者などが占め、国内で感染が起きた人数はもっと少ない。【注:本稿は2月16日時点のデータに基づくものです】
チェック対象
結論【ミスリード】
国内での感染者が400人であるかのような印象を与えるが、実際は外国籍クルーズ船内感染355人や、中国・武漢などからの渡航者、帰国者らが含まれた数字であり、国内での感染が判明しているのは30数名である(2月16日現在)。
<検証>
新型コロナウイルスの新しい感染者が次々と判明する中、時事通信は2月16日「新型肺炎感染者、国内で400人超す」との見出しで記事を配信した。この記事はYahoo!ニュースなどにも配信されたが、ツイッター上では「コロナ感染者はほとんどクルーズ船の客なんだろうと思ってたけど、クルーズ船以外でも既に300人超えか」「あと二日くらいで一気に千人越えそうで不気味」といった反応が見られた。
しかし、この各メディアが把握している感染者414人(2月16日)には、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内で感染した乗客乗員355人が含まれている。1月下旬に香港に寄港した際に下船した男性乗客が感染し、船内感染が広まったことによるものだ。
しかも、同船は英国船籍で、船内は日本の国内ではない(クルーズ船に乗船するには出国手続きが必要で、船内は日本国外となる)。414人は「日本側の検査で判明した人数」であって、「日本国内で感染が起きた人数」ではない。
では、「日本国内で感染が起きた人数」は現時点で何人確認されているのか。
414人から355人を差し引いた残り59人の全てが「日本国内で感染が起きた人数」というわけでもない。この中には中国・武漢等から来日した中国人のほか、チャーター便で帰国した日本人ら(13人)が含まれている。この人たちは中国で感染したとみられている。
世界保健機関(WHO)もクルーズ船乗客らは日本の感染者とカウントしていない。
2月16日現在、日本の感染者は53人、うち中国渡航歴のある人(中国での感染が疑われる人)は26人と発表している(この人数は中国以外では、シンガポールに次いで2番目。クルーズ船内で感染が確認された355人は「その他」の項目の「国際運送」(International conveyance)に記載されている)。
INFACTが厚生労働省や東京都など自治体の発表資料を元に集計したところ、2月16日時点で確認できたのは、感染者は57人(無症状11人を含む)。
うち、中国渡航歴のある人(中国・武漢等から来日した中国人もしくはチャーター便で帰国した人)は、WHO発表どおり、26人いることが確認できた。
この26人は入国日などから見て感染は中国で起きたと見るのが自然だ。したがって、現時点で、中国渡航歴がなく、国内で感染したと疑われるのは少なくとも31人であり、時事通信が報じた「国内感染400人超す」の10分の1以下の数字となる。
内訳を明記せず「400人超」と報道 英語版でも配信
もちろん、日々新たな感染報告が出ており、今後も国内での感染報告が増えることは予想される。
だが、「国内感染400人超す」という見出しは、現時点で国内で400人を超える感染が発生したとの誤解を与える可能性がある。
NHKも「414人」と報じたが、見出しの中に「(クルーズ船355人含む)」と明記し、記事本文でも内訳を説明しており、誤解を与えない配慮をしていると言える。
時事通信は、英語版でも“Coronavirus Cases in Japan Exceed 400″(日本でのコロナウイルス感染例が400超える)との見出しで記事を配信。記事本文中でも内訳には一切触れていなかった。
<結論>
新型コロナウイルスで「400人超」というクルーズ船内感染者を含め「検査で感染が確認された人数」であって、「日本国内での感染者数」とは大きく異なる。記事本文でも内訳を明記していない。そのため、クルーズ船内感染者の人数をきちんと把握していない(海外を含む)読者に誤解を与える可能性があり、「ミスリード」と判定した。
FIJでは、国内外のファクトチェック情報を一覧できる'''新型コロナウイルス ファクトチェック特別サイト'''を開設しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。