京王八王子駅でカマを持った男の身柄確保:防犯と”過剰反応”と心の余裕
■速報:京王八王子駅で“カマ”持った男 身柄確保
今、テレビの全国ニュースで、「速報です」と言ってニュースを伝えていました。
「京王八王子駅で“カマ”持った男 身柄確保 ケガ人なし」(日テレNEWS:7/10(日) 18:12配信Y!)
報道によると、警備員から「刃物を持った男がいる」と110番通報があり、駆けつけた警察官が、手にカマを持った男の身柄を確保。ケガ人はなく、電車の運行にも影響なしです。
さて、これが全国ニュースの途中で、「速報」として伝えるべきことなのかどうか、私は疑問です。
■不審者情報
不審者情報は、全国各地で多数あります。それが、防犯につながることもあるでしょう。
けれどもたとえば、「刃物を持った男がニヤニヤしながら子供につきまとっている」という不審者情報が寄せられ、警察官が行ってみると、犬を散歩させていた近所のおじさんが、刃物ではなく、犬のウンチを処理するためのシャベルを持って、ニコニコしながら下校中の子供を見ていただけでした。
あるいは、あまり報道されないことですが、不審者情報で現場に行ってみると、そこにいたのは障害のある人だったといったことも、よくあることです(障害者本人や家族は傷つくことになりますが)。
誰もウソをついていたわけではないのですが、誤解が過剰反応を生むこともあります。
■八王子「カマ男」?
ネット上には、早速「八王子カマ男??怖いよ」「治安悪すぎ」「物騒な事件が続くね」といった投稿が見られます。
詳細は不明なのでわかりません。恐ろしい犯罪を未然に防いだのかもしれません。それなら、お手柄です。あるいは、男は犯罪とは無縁の人だったのかもしれません。
もちろん、刃物をそのまま持ち歩くだけでダメでしょう。駅構内、列車内でさまざまな事件がありましたから、今は鉄道車内への刃物の持ち込み禁止が明確化されています。新幹線の中でハサミを使っているだけでも、車掌さんに注意を受けます。
ただ、今回身柄確保された人が、他人を傷つける意思があったでしょうか。そして、全国ニュースで流すほどの出来事だったのでしょうか。
カマを持って駅を歩いていたのですから、警備員さんの通報も、警察官による身柄確保も、適切だと思います。しかし、その報道ぶりが適切だったのかどうかは、わかりません。
■安倍元首相銃撃事件の影響とこれからの社会
この報道は、安倍元総理銃撃事件の影響でしょう。昨日も、各地の選挙活動場所で、いつもとは違う多人数の警察官が見られました。駅前で演説を行なっている時に、駅構内でも私服警察官らしき人を見かけたほどです。
今、日本全体が浮き足立っているように感じます。多くの人が、安倍元首相銃撃事件の報道で心がざわついています。
犯罪に負けてはいけません。犯罪に負けないとは、防犯とか犯人逮捕だけでなく、思いやりある平和な社会を作って行くことだと思います。
今回の八王子でのことも、現場で大きな騒ぎが起きていないようですから、多分警察官は穏やかに男に話しかけたのではないかと、私は想像します。
(補足:7/10.21:15 カマを持って改札を通ろうとした男に、さすまたを使った駅員が対応する動画がネットにアップされました。駅員さんは怖かったと思いますが、高齢に見える男はよたよたしているようにも見えます。実名報道されていない件なので、動画のアドレスを示すことは控えます。)
報道によって、適度な犯罪不安や適切な防犯意識を高めることは大切です。しかし、報道によって必要以上に体感治安を悪化させてもいけないでしょう。
大きな報道があったときこそ、冷静さが必要です。防犯と共に、心の余裕をもった思いやりのある社会を作っていきたいと思います。